クラウドネイティブシフトで、ビジネスのアジリティーとスピードを手に入れ2025年の崖を乗り越えろ!(後編)
クラウドネイティブNow

クラウドネイティブシフトへのアプローチ

クラウドネイティブシフトへのアプローチの第一歩は、自社の企業戦略に合わせて、DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)分野へのリソースを振り分けることから始まります。そこで重要になるのが、DXを推進する専門部署の有無。DX化が成功している企業では、部署横断の専門部署を設けていることが多いと言われています。その理由は、DX推進計画は大規模なプロジェクトになるからです。クラウドネイティブシフトも、その大規模なDXの推進計画の一つのプロジェクトでしかないからです。しかも、DXのプロジェクトにおいては、新しい革新的なアイデアが見つかればすぐトライし、評価して結果が出なければすぐ、その事業は止めるというスピード感が求められるのです。従来のようなやり方ではなく、新しいやり方や考え方が求められるため、既存の組織とは切り離すのが得策と言えるでしょう。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX白書2021」によると、DXの先進国である、米国では71.2%の企業が専門部署を設置しており、残りの26.7%は「専門部署はないが、プロジェクトチームがある」と回答しており、専門部署もしくはプロジェクトチームを設けていない企業は1.4%となっています。日本では専門部署があると回答した企業は41.6%、専門部署はないがプロジェクトチームがあると回答した企業が35.2%となっており、残りの21%強の企業は専門部署を設けていないと回答しています。専門部署を設置していない企業は、まず専門部署や既存の組織から切り離したプロジェクトチームを立ち上げることから始めることをお勧めします。

DXの推進やデジタルビジネスの強化などをミッションとする専門部署の有無
DXの推進やデジタルビジネスの強化などをミッションとする専門部署の有無

  • 出典
    「DX白書2021」(独立行政法人情報処理推進機構)

専門部署が設置できれば、DXに対する知見・スキルを持つリーダーを置き、実施計画の立案・マイルストーンを管理します。そのマイルストーンを完遂するには、最適なリソース(人員、お金)の管理も欠かせません。リーダーは常にプロジェクトの状況を把握し、最適なタイミングで最適なリソースを投下していくのです。
では具体的にクラウドネイティブシフトのプロジェクトをどう進めていけばよいのでしょう。まずは既存システムを可視化することです。そしてクラウドネイティブ化に向いているモノ、向いていないものを選別します。選別のポイントは稼働状況やリリースの頻度、メンテナンスのタイミングなど複数あります。例えばあまり稼働していない、メンテナンスは年に一度というシステムであれば、コストやリソースの面からもオンプレミスのまま塩漬けすることが得策かもしれません。一方、頻繁に稼働しており、月に1回から2回程度のメンテナンスが必要なシステムであれば、クラウドリフトやクラウドシフト、さらにはクラウドネイティブシフトにチャレンジすることをお勧めします。もちろん、これから新規に開発するシステムは、何のしがらみも無いので最初からクラウドネイティブでシステムを検討することです。
プロジェクトをトライアルで継続するか、ストップするかの判断は、実際の業務に対する適合性で判断します。とはいえ、クラウドネイティブシフトによるDX化の難しいところは、効果は早急に出るわけではないこと。そこで重要になるのは、検証と改善を繰り返し、小さな成果を積み重ねていくこと。そして目的を間違えないことです。クラウドネイティブシフトが目的ではなく、あくまでもクラウドネイティブシフトはDXを推進し、ビジネスを最も効率的に回す仕組みをつくるため。そしてDXの目的はデジタル技術を活用した独創的なデジタルビジネスを創造するとともに、それを手段として企業が競争優位性を確立すること。つまりこの目標が達成できるなら、すべてのシステムをクラウドネイティブシフトする必要はありません。目的を実現する為に最適な手段を選定することが重要なのです。

クラウドネイティブシフトが簡単ではないワケ

クラウドネイティブシフトすることで、ビジネスを最も効率的に回す仕組みが手に入り、クラウド化によるすべてのメリットが享受できるようになります。その中でも最大のメリットは、素早くサービスをリリースでき、もし失敗なら元に戻せ、破棄できること。つまりクラウドネイティブは最初から壊せること、変更することを前提にしているアーキテクチャーなのです。
ですが、クラウドネイティブシフトは、そう簡単にはいきません。その理由はいくつかあります。第一は設計思想が変わること。クラウドネイティブではこれまでのようなモノシリックなアプリケーションではなく、マイクロサービスやコンテナという技術を用いてアプリケーションを設計します。第二に開発手法も、これまでのようなウォーターフォール型からアジャイル型へと変わることです。それに伴い、チーム構成も開発 / デプロイ、運用、サポートとフェーズによって、アジャイルで変わっていくことになります。
アジャイル開発では開発担当者と運用担当者のスムーズな連携も欠かせません。そこで必要になるのがDevOps(デブオプス)です。DevOpsにより開発担当者と運用担当者が緊密に協力・連携することで、開発を迅速に進めることができるようになります。そして開発パイプラインにCI/CDを導入し、ビルドやテスト、デプロイなどの作業を自動化し継続的に実行する仕組みを作ることも欠かせません。こうすることで、開発スピードおよびリリースサイクルが速まり、継続的なインテグレーションが可能になります。
第三に文化を変えることです。設計思想や開発手法を変えるためには、IT部門の文化そのものを変えていく必要があります。また求められるIT人材像も変わります。アジャイル開発ではDevOpsが当たり前となり、クラウドの活用により、アプリケーションとインフラの境界があいまいになるからです。DevOps文化の実装に役立つInfrastructure as Code(IaC)を導入には、インフラエンジニアもアプリケーションの理解が必要になります。このように従来のIT人材とは求められるスキルなども変わってくるのです。
文化を変えるのはIT部門だけではありません。企業全体の文化も変えていかねばなりません。クラウドネイティブシフトは、DXを推進し、ビジネスのアジリティーを高めるための一つの手法だからです。DXが進みビジネスのアジリティーが高まることで、働き方も自ずと変わります。つまり企業全体の文化も刷新していくことが必要なのです。

クラウドネイティブは目的ではなく手段

クラウドネイティブシフトを成功に導くポイントは、このようにたくさんあります。忘れてはならないのは、クラウドネイティブはあくまでも手段でしかないということ。目的は「新しいビジネスを創出するためにシステムのアジリティーを高めたい」など、自分たちが実現したいことにあります。それをきちんと把握したうえで、クラウドネイティブ化に向けたサービス選定をすることです。なぜなら、クラウドサービス事業者は玉石混合だからです。エンタープライズ向けのサービスなのか、コンシューマー向けではないのか、その辺はきちんと吟味することが重要でしょう。
導入をマネジメントする人たちは、クラウド化 = コスト削減という考えを捨てること。クラウドネイティブシフトはあくまでも、ビジネスのアジリティーを高め、DXを推進し、新たなビジネスを創出するための1つのソリューションだからです。
そして最も重要なことは、常にポジティブな視点を持って、チームを率いていくこと。これはクラウドネイティブシフトやDXに限らず、あらゆるプロジェクト、ビジネスを成功に導くポイントと言えるでしょう。

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