協業事例インタビュー

執行役員常務 CIO(兼)CDXO補佐 福田 譲

なぜ富士通のDXプロジェクトであるフジトラと、富士通アクセラレーター for Work Life Shiftが連携を始めるのか。どんなスタートアップと、どんなイノベーションを志しているのか。フジトラをリードする富士通執行役員の福田が語ります。

革新的なスタートアップの技術・製品と富士通グループの製品・ソリューション・サービスを組み合わせ、世の中へ新たな価値提供をすること目的とした「富士通アクセラレーター」。2015年からプログラムを開始し、これまでに約100件の協業を積み上げてきました。

そんな富士通アクセラレーターですが、特別版とも言える「富士通アクセラレーター for Work Life Shift」の応募を開始しています(応募は2021年3月31日までとなっております)。富士通アクセラレーター for Work Life Shiftの特徴は、富士通自身を変革する全社DXプロジェクト「フジトラ」とも連携し「Work Life Shift」を富士通社内で実践することにあります。

なぜ富士通のDXプロジェクトであるフジトラと、富士通アクセラレーター for Work Life Shiftが連携を始めるのか。どんなスタートアップと、どんなイノベーションを志しているのか。フジトラをリードする富士通の福田が語ります。

富士通株式会社 執行役員常務 CIO(兼)CDXO補佐の福田 譲

壮大なデジタル体験、ある意味凄いこと

福田さんが2020年4月にSAPジャパンから富士通に来て、約1年が経ちました。外から見た富士通と、中から見た富士通のギャップを教えて下さい。

福田

あまりギャップはありません、外から見ていたとおりです。「ここは強そう」「この辺りは課題なのだろうな」というのが概ねそのままでした。スタートアップの皆さんから見えている富士通があると思いますが、遠からず、ではないかと思います。思っていた通りなので驚きはないのですが、本来のポテンシャルを十分に発揮していなくてもったいないな、まだまだいける会社、と思っています。

富士通のポテンシャルとはどういう面ですか?

福田

世界のビジネスパーソンを見渡すと、論理的なディベートが得意、プレゼンテーションが得意など、分かりやすく優秀な人材がたくさんいます。逆に日本にはそういう人が少ない印象です。
一方で、富士通に限らずですが、日本企業の一人ひとりの社員は「きちっと」しているんです。基本的に「真面目で勤勉」。日本人は当たり前に思っているかもしれませんが、「真面目で勤勉」というのはそれだけで大きな価値で、世界を見渡したら決して当たり前ではありません。こういう強みは、もっと生かせるし、変えるべきではない。
総じて「人材の本質」という意味では、日本人は決して世界に引けを取っていないと思っています。

一方で、富士通を始め多くの日本企業は、個はしっかりしているけれど、組織になるとスピードや本来の力が出しきれておらず、グローバル競争で勝てていないのが現状だと認識しています。

地球はどんどんフラットになりつつあります。ビジネスの環境変化はスピードを上げ、正解がない時代です。競合相手は違う業界から来るようになっており、常識やルールを変えるテクノロジーがどんどん出てきています。あっという間に、従来の常識が通じない世界に変わりました。

富士通を含めて、多くの日本企業がグローバル競争の中で思惑通りに成長できていない印象ですが、これは今までの経営や人材・やり方が間違っていたのではなく、今の時代の環境の変化に、十分なスピードと幅でマッチ出来ていないからではないでしょうか。ここは転換すべきポイントです。

福田さんが主導して、富士通自身を変革する全社DXプロジェクト「フジトラ」が始まり約半年が経ちました。成果はいかがでしょうか。

福田

フジトラはまだ2合目という感覚で、まだ成果を語るには早すぎます。ただ、登っている山は間違えていないという感覚を強めつつあります。

いま、仮にゼロから富士通という会社を作り、組織や人事制度、カルチャーを自由にデザイン出来るとしたら、おそらく今とはだいぶ違うカタチになると思います。であれば、もちろん変えてはいけないところはありますが、大胆に変えた方がいいんです。

この1年の大きな変化と言えば、やはりリモートワーク/働き方でしょう。富士通には数年前からリモートワークの制度自体は既にあったのです。ただ十分に活用されていたとは言い難い。従来はどうしても用事があって参加できない人がリモートでも参加できる、というのが実態でした。今ではすっかり逆になり、課題はもちろんありますが、今まで通りグローバルで13万人が粛々と業務を遂行しています。

もちろん役員会議も全部リモートです。従来の対面での会議だと簡単に分かった「頷く」などの反応が分かりにくい、という課題はありますが、一方でリモートだからこそ、チャット機能で「私はこう思う」、「こういう参考情報がある」などを、多人数が同時並行で簡単に共有できるようになりました。TV番組で言うと、実際の主音声に加えて副音声があるので、多面的に議論できる、理解が進む、というメリットを感じます。フィジカルの代替手段としてのデジタルだけでなく、デジタルだからこそ、、を、これだけ多くの人が1年以上に渡って壮大な経験をしているわけで、これはある意味、凄いことですよね。

スタートアップと富士通は、そもそも得意・不得意が補完関係にある

そんな中「富士通アクセラレーター for Work Life Shift」が始まります。「フジトラ」とも連携するとのことで、応募する立場としてはフジトラの守備範囲が気になります。

「フジトラ」は「Fujitsu Transformation」の略です。そのため富士通が変えることはすべて「フジトラ」です。出来るだけ早く解散することが目的のプロジェクトだと思ってます。どういうことか。

例えばGAFAにはDXプロジェクトがありません。必要ないからです。環境に合わせて変わり続けることは当たり前のことで、自然に変わり続けているからです。DXプロジェクトを立ち上げている時点で、当たり前のことが出来ていないということです。

自ら変化し続ける組織になるために、変えるべきことはすべて「フジトラ」の対象です。そのために、組織のしがらみや壁を乗り越えるためのフォーメーションを作っています。もちろん、それでも課題は出てくるでしょうが、富士通グループ/グローバルのすべての主要部門・組織で一緒に進める体制をとっているので、経営戦略だろうが、人事制度だろうが、はたまたM&Aやマーケティング変革など、あらゆるテーマを受け止めて推進できる構えを取っています。

「フジトラ」が富士通アクセラレーターを通してスタートアップと連携する背景・目的は何なのでしょうか。

今回のアクセラレータープログラムのテーマは「Work Life Shift」。これからの時代は「仕事」でも「ライフ」でも、価値観や行動様式が大きく変わっていきます。自分たちだけの視点や理解では、十分ではないと思っています。

良いアイディアやサービス・施策を、社内外を問わず積極的に求めることで、富士通自身の変革を加速できるし、スタートアップにとってもビジネスチャンスになるはず。そう考えるとフジトラが富士通アクセラレーターと連携するというのは自然な流れでした。

また、富士通はグローバルに事業を展開するITサービス業界の日本企業です。ITではここしばらく、日本は世界のイノベーションの発信地になれていません。ITやデジタルを武器として、自分たち自身のワークや社員のライフを、他に先駆けて進化させることは、この分野の大企業の使命でもあると思います。そのためにも、Win-Winである限り、あらゆるエコシステムの手を借りたいと考えました。

スタートアップに期待するのは新たなアイディアということでしょうか。

斬新なアイディアはもちろん、スタートアップには尖った技術や人材、リスクを取れるカルチャーやスピードがあります。いずれにも期待しています。

また、スタートアップと大企業は、そもそも得意分野が完全な補完関係にあります。富士通のような大企業は、大規模なオペレーションや投資余力に加え、社会的な信用や、分厚い顧客基盤を持っています。一方で、スタートアップが得意とする尖った技術や人材、リスクを取る力やスピードには課題があるかもしれません。逆に、スタートアップには社会的な信用や分厚い顧客基盤を補完できる。補完しているのであれば、個別にやるよりも、相乗効果を見出せる領域については、一緒にやった方がお互いのためになります。

「尖ったアイディア」という意味では、今までの富士通アクセラレーターの中で、気になったスタートアップはいますか?

私は前回から富士通アクセラレーターに参加しているのですが、例えば、株式会社RevCommのMiiTel(以下「ミーテル」)は興味深かった。ミーテルは電話営業やコールセンター業務における通話内容をAIが評価し、都度フィードバックすることで個々人のコールセンター員の商談獲得率・成約率向上を支援するIP電話システムです。

ニューノーマルでは、富士通とお客様との関わり方も大きく変わるでしょう。ミーテルが「あなたは話し過ぎ」「会話をもう少しゆっくりと」といったアドバイスをくれることで、顧客とのデジタル接点をより良いものにできます。お客様から「いつも気持ち良く話ができるんだよね」「要点のいい会話をされますね」と言って頂けるようになれば、双方にとって良いですよね。

「尖っていて」「富士通の枠を広げてくれる」サービスを募集

どんなスタートアップに「富士通アクセラレーター for Work Life Shift」に応募いただきたいですか?

スタートアップは各分野のスペシャリストですから、思わず「すごいね!」と言ってしまうような、尖ったサービスを期待しています。

今回のアクセラレーターでは「スマートワーキング」「ボーダレスオフィス」「カルチャーチェンジ」を対象分野に挙げていますが、あまり細かいこだわりはなくて「ワークをシフトする」「ライフをシフトする」ならなんでも歓迎します。

また富士通から見たときの「広がり」も重要な要素です。富士通が考えもしなかったアイディアがあると嬉しい。「ここにも課題があるんじゃないか」という厳しい指摘やアイディアだってウェルカムです。

尖っていて、我々の想像の幅を広げてくれる。この両方が楽しみですね。

今回の「富士通アクセラレーター for Work Life Shift」と、通常の「富士通アクセラレーター」との違いはなんでしょうか。

通常の「富士通アクセラレーター」は「一緒に売りにいきましょうよ」という面が強かったですが、「富士通アクセラレーター for Work Life Shift」は、まず富士通自身が試してみる、富士通自身をまず変える、というところに特徴があります。結果がよければ、もちろん富士通のお客様にもお薦めしたいですよね。

最後に応募を迷うスタートアップへメッセージをお願いします。

今回「富士通アクセラレーター for Work Life Shift」と連携するフジトラは、社内の主要な部門全てからDX Officerが加わっており、DX Officerたちが横で繋がっています。富士通は大企業だけに、今まで部門を超えて何かをやるというのは決して得意ではなかったのですが、今回は違います。富士通を変えられるなら、どんな大企業でも変えられるはずです。その第一歩を一緒にトライしましょう。

富士通アクセラレーター for Work Life Shiftへの応募はこちらから!

「富士通アクセラレーター for Work Life Shift」は現在、参加するスタートアップを募集しています。「ワークをシフトする」「ライフをシフトする」ことができるサービスを開発している会社は、是非ご検討下さい。

富士通アクセラレーター for Work Life Shiftへのエントリーを締め切りました

(執筆:pilot boat 納富 隼平 撮影:taisho)

富士通株式会社 執行役員常務 CIO(兼)CDXO補佐 福田 譲

1997年、SAPジャパンに入社後、ERP導入による業務改革、経営改革、高度情報化の活動に従事。2014年7月、代表取締役社長に就任。顧客と協働した新たなイノベーション創出に注力し、日本型のデジタル変革に取り組んできた。20年4月より現職。

本件に関するお問い合わせ

富士通アクセラレーター事務局

ページの先頭へ