協業事例インタビュー

株式会社クリエ・ジャパン

富士通アクセラレーターで生まれた共創の取り組みを、座談会形式でご紹介します。今回は、パーソナライズド動画ソリューション「RRISM」を開発する「株式会社クリエ・ジャパン」の中沢社長をお迎えしました。

協業の鍵はSaaS化とセキュリティ。金融機関×パーソナライズ動画に富士通が必要だったわけ

2021年に実施した「富士通アクセラレーター for Work Life Shift」。その名の通り、富士通、そしてお客さまの仕事と生活の変革を目指すアクセラレータープログラムです。

この「富士通アクセラレーター for Work Life Shift」で採択されたのが、パーソナライズド動画ソリューション「PRISM」を開発する株式会社クリエ・ジャパン(以下「クリエ・ジャパン」)。なぜクリエ・ジャパンは富士通との協業の絵を描いたのか、なぜ富士通はPRISMを必要としたのか。クリエ・ジャパン代表の中沢さんをお招きし、富士通の担当者と語っていただきました。

【前編】クリエ・ジャパン×富士通アクセラレーター 協業事例インタビュー(Fujitsu パーソナライズド 動画サービス)

【後編】クリエ・ジャパン×富士通アクセラレーター 協業事例インタビュー(Fujitsu パーソナライズド 動画サービス)

パーソナライズド動画で顧客に最適な情報を届ける

春日井(富士通アクセラレーター)

クリエ・ジャパンと富士通の協業のきっかけは、2021年に始めた「富士通アクセラレーター for Work Life Shift新しいウィンドウで表示」に、クリエ・ジャパン様にご応募いただいたことです。

長尾(富士通)

Finplex」という主に金融業界のお客さま向けのソリューション体系があって、その一つに「Fujitsu パーソナライズド 動画サービス」があるのですが、これが実はクリエ・ジャパンの技術を使ったソリューションとなっていて、今回の協業の成果となっています。

クリエ・ジャパンはどうして「富士通アクセラレーター for Work Life Shift」に応募したのでしょうか。

中沢(クリエ・ジャパン)

クリエ・ジャパンはパーソナライズド動画ソリューション「PRISM」を開発しています。こちらは金融、特に保険会社へ営業することが多いのですが、我々がスタートアップ企業ということもあって「サービスの前にそもそもこの会社は大丈夫なの?」「サービスのセキュリティは大丈夫?」と思われてしまうことが度々あったんです。そのため、富士通とサービスを上手く連携させ、営業面や信頼面においても富士通のご協力をいただくことができたらこの課題を解消できるんじゃないかと思い、富士通アクセラレーターに応募しました。

株式会社クリエ・ジャパン 中沢氏

それでは改めてPRISMについて教えて下さい。

中沢(クリエ・ジャパン)

PRISMは、いわゆるパーソナライズド動画を作成するサービスです。パーソナライズド動画とは、顧客データ等をもとに、個人の興味・関心・行動にあわせて個別化・最適化された顧客にオーダーメイド感覚を与える「顧客一人ひとり専用の動画」。顧客ごとに分かりやすく関心の高い情報を届けることが可能な取り組みとして、近年注目されています。

昨今、データベースやCRM、マーケティングオートメーションなどを利用して、顧客の情報を集めている企業は珍しくありません。しかし収集した情報をどう活用しているのかというと、メルマガにしか使っていない企業が多いのが現状です。若い方がメールなどのテキストを読まなくなっている中、これでは企業の情報伝達はどんどん難しくなっていく。そこで動画を使った情報提供の必要性が高まっているのです。とはいえ、自分に合っていない動画は見たくない。こんな問題にもPRISMなら、パーソナライズ動画という形で対処できます。

PRISMと相性がいいのは、例えば保険会社です。今まで保険営業でお客さまにコンタクトするのに多かった方法は訪問やDM。しかし現代において、これらは非効率さが目立ってきたり、お客さまごとに最適な提案が難しいという課題があります。その点PRISMを使っていただければ、個人ごとに最適な提案を、効率的に動画形式でお届けすることが可能です。例えば「あなたの現在の契約はこうなっています。オプションを付けたらこうかわります。安くなりますし、補償範囲が広がりますよ」「保険を解約しなくても、今までの保険金として支払っていただいた金額をお貸しできますよ」といった具合ですね。保険会社としては営業効率アップだけでなく、アップセルや解約防止のツールとしてご利用いただいています。

営業とも連携し、パーソナライズ動画のニーズを確信

PRISMの説明を受けて、富士通アクセラレーターはどう反応したのでしょうか。

春日井(富士通アクセラレーター)

今回のプログラム「富士通アクセラレーター for Work Life Shift」では「富士通が一番風呂に入る」、つまりまず最初に富士通がスタートアップ企業のサービスを試し、最適化したうえでお客様にも提供することをコンセプトとしています。ちょうど社内でFUJITRA Festivalという、全社員が参加するオンラインイベントで複数セッションが企画されていたので、例えば人事の方には人事に関係のあるセッションを集めたダイジェスト動画を案内をする、といったイメージで、PRISMを使ってみたんです。

長尾(富士通)

ちなみに私は、その案内でFUJITRA Festivalを知ることになりました。まんまと術中にはまりましたね(笑)。周りでもパーソナライズされた動画を見ているメンバーがいたと聞いています。

富士通株式会社 長尾氏

中沢(クリエ・ジャパン)

そうでしたか、効果があったようでよかったです(笑)。ちなみに、こういったセミナーの集客でPRISMを使ったのは初めてだったんです。とはいっても、コンテンツの中身が変わるだけで仕組みは全く同じだったので、苦労は特にないと予想していましたし、実際にそのとおりでした。そういうことがわかったのも収穫の一つでしたね。

富士通社内でもPRISMの有効性が証明されたわけですね。そこからすぐに両社の協業が進んだのでしょうか。

長尾(富士通)

その通りです。富士通アクセラレーター経由でPRISMのことを聞いて、事業部としてもすぐに興味をもちました。というのも、我々Smart Finance事業部は保険会社を含め金融業界のお客さまが多いこともあって、この業界に有効な新しいソリューションは常に探しているんです。パーソナライズ動画の有効性を中沢さんから伺い、これは今後必要になってくるソリューションだと直感しましたし、パーソナライズド動画は、動画を開いたら最後まで見られる可能性が高いという点も気に入りました。メンバー間で「あれも使えそう、これも使えそう」と話が盛り上がったのを覚えています。

中沢(クリエ・ジャパン)

PRISMを紹介すると、富士通のように盛り上がる会社とそうでない会社にくっきり分かれます。似たような事業をされていても、自社の課題、例えば「5G時代には動画の存在感が増すのに対応できていない」「Z世代向けの販促には動画が必要」といったことを明確に認識していて、パーソナライズ動画を使えば解決できると感じていただけるかどうかが分水嶺のようです。我々としても業種・業界に関係なく、情報発信の難しさを認識しているお客さまと出会えると提案のしがいがあります。富士通はまさにそんな感じでした。

長尾(富士通)

PRISMの話を聞いて商品化できるかの調査にすぐに取り掛かったのですが、ネックになったのはパーソナライズド動画の認知度でした。色々な広がりが期待できるソリューションではあるものの、まだ皆さんに知られている仕組みではありません。本当に売れるのかどうかはその場で判断がつかず、社内でも議論となったんです。そこでプレマーケティングをしたり、営業メンバーにお客さまからの反応をみてもらうことにしました。その結果、トライする価値があると判断されました。商品化、つまりPRISMをベースにした「Fujitsu パーソナライズド 動画サービス」の開発と商品化に踏み切りました。

富士通はSaaS化とセキュリティ面からスタートアップを支援

スタートアップ企業のサービスを、富士通のソリューション群であるFinplexに取り込むことは上手くいったのでしょうか。

福田(富士通)

私はSEとして、「Fujitsu パーソナライズド 動画サービス」の技術面の企画から商品化までを担当しました。そもそもSmart Finance事業部のミッションは、先進的なサービスを提供されている会社や基礎研究を、富士通として何らかアドオンしてビジネスにしていくこと。そういう意味ではいつもやっていることなので、特段の苦労はありませんでした。

富士通株式会社 福田氏

春日井(富士通アクセラレーター)

Smart Finance事業部は富士通の中でも、スタートアップに対する理解やパートナーシップが進んでいる部門なんです。例えば、これまでもEltropy新しいウィンドウで表示(エルトロピー)やWaagu新しいウィンドウで表示(ワグー)といったスタートアップ企業との協業による新商品の開発実績があるので、ノウハウが溜まっているんですね。

福田(富士通)

とはいえ、クリエ・ジャパンは既にPRISMという完成品を提供しています。富士通としてPRISMを取り扱うからには、そこに付加価値を加える必要がある。中沢さんたちと議論を重ね、大きく2つの機能、つまり①PRISMのセキュリティを担保したSaaS化、②作成した動画のURLの暗号化・難読化を施しました。

中沢(クリエ・ジャパン)

PRISMは昨今のスタートアップとしては珍しく、SaaSではなくオンプレミス形式で提供しています。というのも、扱っているデータが金融・保険商品だったり健康診断の結果だったりと非常に秘匿性が高いので、SaaS形式ではセキュリティが心配だというお客さまが多いのです。もちろん、セキュリティを高めてSaaS化することもできるのですが、運用体制やセキュリティ試験だったりといったことを、お客さまごとに対応するのは、我々ではコストがかかりすぎる。その点富士通と組んでSaaS化すれば、実質的にもセキュリティは担保できるし、お客様への説明もできる。そこでPRISMをSaaS化していただくことにしたんです。

福田(富士通)

富士通は昔から金融機関との取引がありますし、当然セキュリティ要件は常にクリアしていて、そのノウハウも溜まっています。それを生かして、PRISMをSaaS化したということですね。

PRISMのSaaS化に伴って、②作成した動画のURLの暗号化・難読化にも対応しました。簡単に他人の動画が見れてしまうと情報漏洩に当たってセキュリティ的に問題になってしまうので、簡単に類推できないようなURLに変更してお客さまに送る仕様にしたんです。

他にも細かいことはいくつもありますが、大きくはこの2点をPRISMに加え、「Fujitsu パーソナライズド 動画サービス」として商品化しました。

春日井(富士通アクセラレーター)

こういったセキュリティを担保するケースは、クリエ・ジャパン以外の案件でもよくあるんです。つまり、スタートアップが既に世の中にプロダクトを提供しているものの、大企業、特に金融機関に提案するフェーズになると、どうしてもセキュリティの壁が出てくる。そこでセキュリティに信頼と実績のある富士通と協力し、大企業にも提案できる形にしていく。この連携によって、スタートアップ・お客さま・富士通がWin-Win-Winとなる。今回のクリエ・ジャパンさんのケースは、それが顕著に現れた例かと思います。

Fujitsu パーソナライズド 動画サービスの概要

富士通アクセラレーターは「結果にコミットするアクセラレーター」

春日井(富士通アクセラレーター)

今回の協業は、2つの点から時流にぴったりの共創案件となりました。

1つ目に、まずコロナ禍においての共創だったこと。コロナ禍から抜け出しつつあるとはいえ、アフターコロナにおいては過去のように対面でお客さまと会う機会は減っていくでしょう。そんな中、お客さまの特性やライフステージにあった提案をするためには、やはりデジタルの活用は不可欠。今回のPRISMとの協業は、その試金石になると思っています。

富士通アクセラレーター 春日井氏

2つ目は、2022年という「スタートアップ元年」にできた協業だということ。首相が号令をかけたこともあって、スタートアップとのオープンイノベーションの機運が世間で高まっていますが、残念ながら上手くいっていない事例もたくさんあると聞いています。そんな中、富士通アクセラレーターは2015年から開始し約110件の協業実績も出てきて、スタートアップ協業のプロという自負をもてるようになってきました。スタートアップの素晴らしいプロダクトに、富士通のセキュリティや信頼性、販路といった経営資源を組み合わせてお客さまの課題を解決する。今回はそれができた素晴らしい共創事例となりました。

中沢さん、最後に、富士通アクセラレーターに参加した感想を教えて下さい。

中沢(クリエ・ジャパン)

実は富士通アクセラレーターの前に、いくつか他のアクセラレータープログラムに参加したことがあるんです。そこでも役員向けにプレゼンまでしたのですが、その後は特に進展がありませんでした。しかし今回は、初めてと言っていいぐらい踏み込んで製品化まで話が進みました。素晴らしいことだと思います。

春日井(富士通アクセラレーター)

ありがとうございます。実際、他のスタートアップからも「結果にコミットするアクセラレーター」だとの声をいただいています。アクセラレーターは乱立していますし、スタートアップからすると応募手続きも大変です。そんな中、色んなスタートアップの口から「富士通は違うよ」「富士通は本当にビジネスにしようとしているよ」と言っていただけるのは嬉しいですね。

福田(富士通)

特に今回のPRISMとの協業は、既存のサービスとの親和性が高かったのがよかったですよね。既存のお客様に「さらにこういった営業スタイルの変革ができます」というストーリーが提案ができるようになったのは、富士通にとっても非常にいいことでした。

富士通アクセラレーターへの応募を検討しているスタートアップ企業へのアドバイスをお願いします。

中沢(クリエ・ジャパン)

我々はPRISMというプロダクトにもともと自信がありましたし、アクセラレーターだからといって、特に我々が気を付けたことは実はほとんどないんです。自分たちの製品に自信があるなら、スタートアップはそれを富士通に伝えればいいかと思います。チャレンジしてマイナスなことは一つもありません。興味があったら応募するのがいいと思います。

春日井(富士通アクセラレーター)

中沢さん、本日はありがとうございました。引き続き一緒に頑張っていければと思います。よろしくお願いします。

中沢(クリエ・ジャパン)

中沢さん、本日はありがとうございました。引き続き一緒に頑張っていければと思います。よろしくお願いします。

(インタビュー・執筆pilot boat 納富 隼平)

株式会社クリエ・ジャパン

クリエ・ジャパンは、顧客一人ひとりのデータに合わせて動画を最適化できる動画DXテクノロジー「PRISM」(特許取得技術)により、動画を活用したOne to Oneマーケティングの実現など、企業の顧客コミュニケーションをテクノロジーとデータで支援しています。

東京都渋谷区神宮前六丁目23番4号 桑野ビル2階
URL:https://crea-japan.com/ 新しいウィンドウで表示

株式会社クリエ・ジャパン 代表取締役社長 中沢 宏 氏

過去に携わったプロジェクトマネジメントおよびシステム開発経験は数百万規模から数億規模まで、100件以上にわたる。
自ら開発したソリューションを一部上場企業に販売した経験多数あり
2022年10月、株式会社クリエ・ジャパン代表取締役社長に就任。(現任)

富士通株式会社 グローバルソリューションBG Digital Solution事業本部 Smart Finance事業部

金融ビジネスにインパクトを与える新規サービスによってお客様の目に見える領域でのデジタルトランスフォーメーションを推進。主なミッションは金融デジタルビジネスにおける業種サービスの調査、開発と販売活動推進。現在FinplexCloud Lending/FaceTRUST/FrontSHIP/x-tech連携などの金融クラウドサービスを担当しており、クロスインダストリーにも注力。

富士通株式会社 グローバルソリューションBG Digital Solution事業本部 Smart Finance事業部 長尾 亮平

2014年に富士通株式会社に入社。通信キャリアのお客様を担当とした営業活動に従事。2018年より金融機関様向けのビジネス企画として情報銀行やデータ流通ビジネスの調査、企画検討に従事。その後、現職であるFinplexサービスの拡販、プロモーションを担当。金融機関に限らず、幅広い業界への提案活動中。

富士通株式会社 グローバルソリューションBG Digital Solution事業本部 Smart Finance事業部 福田 美波

2006年に富士通株式会社に入社後、損害保険会社基幹系・ユーザ向けアプリ開発、保守に従事。2020年よりFinplexサービスの企画、開発、保守、拡販に従事。現在はサービスマネージャとして「Fujitsu パーソナライズド 動画サービス」および、双方向型学習プラットフォーム「Advanced Teaming Experience Service」を担当。

富士通株式会社 FUJITSU ACCELERATOR事務局 春日井 淳史

1978年生まれ。中央大学商学部会計学科卒業。2003年に株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリに入社し、プログラマーとして大規模システム開発に従事。2008年に渡米し、Fujitsu Laboratories of Americaにてシリコンバレーのデジタル市場調査とスタートアップとの事業開発に従事。帰国後は富士通株式会社にて海外製品の商品化を担当した後、株式会社ジー・サーチに出向し、新規事業開発に従事。再び富士通株式会社に転籍した後は、デジタルマーケティングサービスの事業開発や提案活動に貢献。現在は、FUJITSU ACCELERATOR事務局メンバーとしてスタートアップとの協業による新規事業開発を担当。

本件に関するお問い合わせ

富士通アクセラレーター事務局

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