ミリ波 / 28GHz帯無線通信装置
さらなる豊かな暮らしを実現するために。
現在、より高度な自動農場管理や遠隔医療、
スマートファクトリー等の実証実験が進められて
います。これら次世代技術を社会実装するには、
28GHz帯を含むミリ波帯の活用が必要です。

ミリ波 / 28 GHz帯の概要
普段、我々が日本国内で使用している5Gのスマートフォンは、Sub6と呼ぶ3.7 ~ 4.5 GHz帯の周波数が使われています。このSub6では、300 Mbpsを超える高速通信が可能となり、高画質な動画再生がスムーズにできます。一方、さらなる超高速通信に加え、超低遅延・多数同時接続を可能とするのは28 GHzをはじめとしたミリ波帯であり、5Gの真価を発揮する周波数帯です。
28 GHz帯の割り当て帯域は400 MHzであり、Sub6の4倍です。これにより大容量の情報をスピーディーにやりとりできるメリットがあります。この特徴を生かした4K/8K映像を使った遠隔地のインフラ点検のほか、超低遅延による遠隔医療、多数同時接続による数万台に及ぶIoT端末の管理などが可能となります。これらが実現すれば、担い手不足をはじめとする現代の社会課題への取り組みに対し、大きな力となり得ます。
他方では、この28 GHz帯を使いこなすために技術的な障壁が伴います。周波数が高く波長が短いため、距離当たりの減衰量が大きいことから、長距離伝送には適しません。また、ビームの鋭さから直進性が強く、建物のような障害物を回り込んでの通信が不得意です。そのため、これまでのサブギガ帯やマイクロ波帯と比較して、使いこなしの点で非常に難易度の高い周波数領域であると言えます。
弊社ではこれまでに、この28 GHz帯の無線装置のほか、70 GHz帯の車載用ミリ波レーダやE-Band帯インパルス無線システムを開発してきた経験から、ミリ波帯に関わる多くの開発ノウハウを蓄積しています。
ミリ波 / 28 GHz帯の設計・評価に伴う課題の一例
①ミリ波 / 28 GHz帯設計ノウハウ
短波長をはじめとした、ミリ波 / 28 GHz帯の持つ電気的特性を把握したうえで、電子回路を構成する必要があります。実装デバイスのサイズや配置関係、機構上の設計制約から、単純に回路寸法を小さくすれば良いということではありません。高い次元での無線品質を維持した回路の設計がキーとなります。
②デジタルビームフォーミングの導入
複数のアンテナから放射する電波を特定方向に集中させることで、ミリ波 / 28 GHz帯のような高い周波数においても、遠距離の通信や通信感度の向上が可能です。そのためには、各アンテナ素子にA/D変換回路を実装し、それらの出力に対してデジタル信号処理を施すデジタルビームフォーミングの導入が解決策の一つとして挙げられます。
③高密度実装に対する加熱手法
ビームフォーミングは多数のアンテナを用います。これに付随し、増幅器のようなアクティブデバイスも同一基板上へ高密度に実装することになります。これにより、局所的な温度の上昇が発生し、無線装置の正常動作に大きな影響を及ぼします。通常サイズのViaによる放熱では限界があるため、高密度実装に適した放熱が必要です。
上記課題に対するモバイルテクノの技術ソリューション
①電磁界シミュレーションを駆使したミリ波 / 28 GHz帯RF回路の設計
利用する周波数により、物質の電気的特性(例:比誘電率、誘電正接)は変わります。特にミリ波のように非常に高い周波数領域は、マイクロ波以下の低い周波数の延長線で設計することは大きなズレや手戻りの原因となります。当社ではミリ波 / 28GHz帯の開発経験を豊富に持ち、このノウハウを事前検討に用いる電磁界シミュレーションに落とし込むことで、精度の高い設計を実現しています。②RFSoCの使いこなしによるデジタルビームフォーミング
当社は2000年の創業当初から、モバイル携帯無線基地局の開発に携わっており、昨今の基地局無線装置にはRFSoCが用いられています。RFSoCは、デジタルビームフォーミングをはじめとした高度な信号処理やA/DおよびD/A変換が可能であり、回路の小型化を実現します。当社は早くからチップメーカと連携し、実機評価を重ねてRFSoCの機能を最大限に引き出すためのノウハウを蓄積しています。28 GHz帯においても、RFSoCによるデジタルビームフォーミングの開発実績があります。③銅コインの活用による高い放熱性の実現
従来のハイパワー増幅器は、PT基板及び金属筐体に直接ネジ止めできるセラミックスパッケージが主流でしたが、現在はリードレス構造のQFNパッケージが増加しています。5 mm角前後の小さなサイズが多く、通常の細いViaを複数設けても放熱が追い付かず焼損に至ります。解決策として銅コインがあります。イメージとして細いViaを一つに束ね、大きな径にした放熱Viaです。当社ではPT基板加工メーカと連携し、この銅コインの実装に成功し、28 GHz帯におけるハイパワー増幅器の安定動作に寄与しています。 ※右図に示す中央の黒い円が銅コインです。技術紹介資料「ミリ波帯の開発実績」
- モバイルテクノで開発してきたRF/ミリ波に関する事例一覧
- RF/ミリ波シミュレーション環境
- 構造(筐体)検討スキル
- Chip評価スキル
- ミリ波チップ量産テストシステム開発
- ミリ波帯における具体開発事例