カーボンニュートラルの実現に向けた課題
現在、各業界でスマート化、デジタル化が進展しています。あらゆるものが通信ネットワークに接続され、2030年には全世界で1000億を超えるIoTデバイスがネットワークに接続すると予想されます。データを可視化するためのセンサーデバイスだけでなく、大容量かつリアルタイムな通信を必要とするXR技術や高精細映像を活用した遠隔医療、産業分野での遠隔作業、建築での重機の遠隔操作など、生活の様々な場面でこれまで以上にネットワークを活用したユースケースが想定されます。
こうした接続数および大容量データの送受信が加速度的に増加することにより、2030年には、データ量(IP トラフィック)は30 倍以上、ネットワーク関連設備の電力消費量も現在の技術で2倍※1(2018年比)になることが予想されます。さらに、膨大な量のデータを高速かつ効率的に処理・分析を行い、様々な業務へ活用するために、コンピューティングリソースも必要となります。その結果、ICTにおける電力消費は増加傾向にあります。
以上のことから、環境負荷低減に向けては技術革新によるデバイスの高密度化や、AIなどの技術を活用したICTの低消費電力化が求められています。富士通は主に以下の3つの取り組みを進めています。
取り組み1 : ネットワークにおける消費電力削減の実現
富士通は、無線システムや光伝送システムにおいて、環境に配慮した製品やサービスを開発しており、ネットワークのオープン&ディスアグリゲーションが各領域で進む中、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク全体での消費電力削減に取り組んでいます。

ハードウェアでの取り組み
RUの消費電力削減技術
ハードウェアでは、無線ネットワーク(RAN)において、高効率な無線増幅技術や通信トラフィックの変動に応じて無線リソースの最適配置を動的に実現する技術などを総動員して、RU運用時における電力効率の飛躍的な向上に取り組んでいます。
RUの消費電力削減技術
光伝送システムの低消費電力化と大容量化
光伝送ネットワークの領域においても、中核となるLSIの低消費電力化やシステムの大容量化を通じて伝送容量当たりの低消費電力化を追求しています。低炭素社会の実現に向け、伝送性能を向上させながら省電力性も進化させ、グローバルに展開していきます。
Beyond 5G時代の光伝送システム、サブシステム、光デバイスを開発

ソフトウェアでの取り組み
ソフトウェアでは、汎用ハードウェアで稼働可能なソフトウェア基地局化(Centralized Unit、Distributed Unitの仮想化)を推進し、クラウド化された共有リソースを用いて必要最小限の消費電力で基地局を稼働させることで、環境負荷軽減に取り組んでいます。※2
ソフトウェア基地局は、従来の専用機に比べ性能面での最適化の難易度が高くなるため、GPUのハードウェア仮想化機能を最大限に引き出し、収容セル数を増やすことに取り組んでいます。これを汎用サーバに組み込むことによって、性能が求められる地域においては汎用サーバの台数を大きく増やすことなく収容数の増加を実現し、一定の性能を担保します。
一方、過度な性能が求められない地域においては、同技術を活かし、よりコンパクトな汎用サーバを利用しソフトウェア基地局を稼働させることで、専用機よりも省電力化することが可能となります。結果、収容数の大小に係らず地域の実情に合わせた最適な電力使用を実現し、基地局全体の省電力化に貢献します。
ソフトウェア基地局による消費電力削減 システム全体像

ネットワーク全体での取り組み
ネットワーク全体では、AI/MLによる運用管理の最適制御により、ユーザーの利用状況に応じた環境負荷軽減に取り組んでいます。
コンテナ技術を活用した基地局オートスケール
RANの領域において、ソフトウェア基地局をコンテナ化することで要求に応じたスムーズなスケールアウトなど、クラウドの特性を活用した柔軟なネットワークの運用も可能となります。クラウド上ではリソースのひっ迫状況に合わせ、ゼロタッチでオートスケールさせることで必要なリソースを必要なだけ随時確保することができ、予備リソースが削減されます。これにより不要となった設備とそこで使用される電力の削減が可能となります。こうしたリソース管理は、AI/MLを活用したRICの高精度運用にて通信の負荷状況に合わせて、コンテナ化された基地局を自動で追加・削除を行う自動スケール技術により実現します。
コンテナ技術を活用した基地局オートスケール システムアーキテクチャと適用技術
SDNコントローラによる全体制御
RANだけでなく光伝送ネットワークの領域でも、SDNコントローラによる全体制御を行い、消費電力の削減に取り組んでいます。
光伝送システムにおいて、ディスアグリゲートされた各機能(WDM/トランスポート/スイッチなど)をつなぎ合わせた柔軟なネットワークの構築のためにOptical SDNコントローラによる全体制御を提供しています。これにより最適な組み合わせでの迅速なネットワーク構築を可能としネットワーク全体の消費電力を削減します。
SDNコントローラによる全体制御
取り組み2 : 機器のライフサイクルにおける環境負荷軽減
富士通は、製品運用時における消費電力削減だけでなく、製品ライフサイクル(製品の素材選定、製造、物流、破棄など)において環境負荷軽減に取り組んでいます。
製品ライフサイクル
設計段階から小型化・軽量化と部品点数の削減により製品素材の削減を行うと共に、破棄工程で解体やリサイクルが容易となるよう設計しています。物流工程での梱包資材の削減や、破棄工程で出たリサイクル素材を活用した製品製造など、製品ライフサイクルにおけるCO₂削減と省資源による環境負荷軽減に取り組んでいます。
製品ライフサイクルに於けるCO₂排出量の割合
ダウンサイジングによる環境負荷軽減
また、製品ダウンサイジングによる環境負荷軽減に取り組んでいます。※3光伝送システムについて、従来の空冷式ではなく、スーパーコンピュータでも実績のある水冷技術を世界で初めて伝送システムへ採用し、筐体の大きさを抑えることで、冷却のためのコスト、占有スペースなどの運用コストやCO₂排出量などを抑え、環境負荷軽減に取り組んでいます。
水冷式大容量光伝送システム
伝送容量あたりの体積比較
取り組み3 : パートナー協調による取り組み
富士通はNTT様と協業※4し、IOWN構想※5の下、ネットワークの高度化・省電力化に取り組んでいます。IOWN構想は、低エネルギーで高効率な新しいデジタル社会のためのネットワーク・情報処理基盤の構想です。
この協業では、使用用途に応じて多様なハードウェアをソフトウェアで柔軟に組み合わせて活用し、高速かつ高効率なデータ処理を可能とするディスアグリゲーテッドコンピューティング技術の共同研究開発に取り組んでいます。
ディスアグリゲーテッドコンピューティングは、CPU・GPU・メモリ等のリソースを動的にかつ内部接続を光で接続するものであり、低消費電力かつ高性能なコンピューティングを目指しています。
オープンコミュニティーの取り組みとして、IOWN Global Forum※6にスポンサーメンバーとして参画しております。また、活動を通じてBoard of Directorにも選出されています。IOWN GFでは、Open All Photonics Network Architecture領域を中心に活動を進めているほか、IOWN構想賛同企業とのフォーラム活動を推進し、富士通の保有する技術・ソリューションにより、コミュニティーへ貢献していきます。
富士通は、こうした取り組みを中心に、顧客・社会のCO₂排出量の削減を目指します。
2050年に自らのCO₂ゼロエミッションを目指すと共に、デジタル革新を支えるテクノロジーやサービスによりカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。
IOWNは、日本電信電話株式会社の商標又は登録商標です
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