2030年はどのような社会になっているのでしょうか?
デジタル未来社会
わたしたちのまわりでは、さまざまなデジタルテクノロジーが登場し、人々に受け入れられ、社会の仕組みを変えてきました。6Gが実現されると予想される2030年には、生活の様々なシーンで今以上にテクノロジーは進化し、社会は変化していくでしょう。
たとえば、工場や農場といった「つくる」現場においては、センサーやロボットの普及により、作業や生産の効率化が一層進展します。
工場の現場では、作業ロボットなどの普及により作業の自動化が進み、従来、熟練工など人手に頼らざるを得なかった工程でも自動化が進むと考えられます。農場の分野でも、ロボット農機による農作業の無人化やドローンによる農薬・肥料撒布の自動化が進み、衛星やカメラ、センサーの普及により、農作物の生育情報を監視、解析することで、各作業工程のタイミングや収穫量の調整を行うことができるようになります。
「でかける」シーンにおいて、移動手段である自動車も一層進化し、道路に設置されたさまざまな機器や、道路走行中の自動車同士で周囲の状況を共有しあうことができるようになります。これにより、走行スピードなどをコントロールすることができるようになり、渋滞が解消されるだけでなく、運転者や歩行者の安全性も格段に向上することが期待されます。
また自動車と交通インフラ間、自動車と自動車間など、刻々変化する周囲の状況を共有し、自動で走行スピードをコントロールする自動運転なども実現されます。
このような、先端テクノロジーを用いてデザインされた豊かな未来社会を、わたしたちは「デジタル未来社会」と呼んでいます。テクノロジーによってイノベーションが継続的に起こされ、わたしたちの持つ多様な価値が信頼でつながれ、誰もが夢に向かって前進できる社会がデジタル未来社会です。デジタル未来社会では、誰もが自在にテクノロジーを活用し、その恩恵を受けたわたしたちも、テクノロジーを一層進化させていきます。
デジタル未来社会を実現するために必要な
ICTにおけるネットワークアーキテクチャー とは
ネットワークへの要件
テクノロジーの進化によりもたらされるデジタル未来社会のサービスでは、今以上に高品質、低コスト、低消費電力が求められます。このようなサービスを提供するためのアプリケーション・データ・ICTインフラは世界中の様々な場所に遍在しています。例えば、企業や自治体などのオンプレミスなクラウド上でサービスが提供される場合もありますし、大規模データセンターにあるクラウド(センタークラウド)やWAN(Wide Area Network)にあるエッジクラウドを利用して提供される場合もあります。
デジタル未来社会において、品質の高いサービスを低コスト、低消費電力で提供するためには、このような遍在するICTリソースを効率的に活用することが重要になり、以下のような要件が必要となります。
6G時代のネットワークアーキテクチャー
これからのネットワークの要件を踏まえて、重要となるのがディスアグリゲーションとオーケストレーション、グリーンという考え方になります。
従来、ネットワーク装置はハードウェアアプライアンスとして提供されてきました。しかしながら、現在ではそれらの装置や機能をいくつかの構成要素に分解していくディスアグリゲーションが進んでいます。ネットワーク仮想化の進展も手伝い、分解された機能は汎用コンピュータ上で容易に組み合わせることが可能になりつつあります。
ディスアグリゲーションされた機能を、ネットワークワイドに拡がっている様々なコンピュータリソース上で最適に組み合わせることで、品質、コスト、及び消費電力の観点で最適なICTシステムを構築することができます。このように、エンド・ツー・エンドでネットワーク機能を配備し、運用する仕組みがオーケストレーションになります。
加えて、6G時代に向けてのサステナブルな社会の実現においては、グリーンの観点は欠かせません。ネットワークのエンド・ツー・エンドで環境負荷を低減する仕組みを担うグリーン技術の革新が重要となります。
ディスアグリゲーションとオーケストレーション、グリーン技術によって特徴づけられるネットワークアーキテクチャーによって、デジタル未来社会のICTサービスは支えられていきます。
それでは、こうしたアーキテクチャーはどのように実装されるのでしょうか。ICTインフラは、前述の通り、さまざまな事業者によって、さまざまな場所で提供されます。したがって、ICTサービス提供者は、分散されたインフラを管理し、その上に必要な機能を組み合わせる必要があります。
その際ICTサービス提供者にとって、ICTインフラは事業者や場所をできるだけ意識せず、単一のインタフェースによって操作できることが望ましいでしょう。すなわち、ICTサービス提供者がエンド・ツー・エンドのシステム全体を一元的に取り扱うことができ、簡単にICTシステムを構築したり変更したりすることができるような、ICTインフラを目指すべきと考えます。
富士通のネットワーク技術の方向性
富士通は、”オープン&ディスアグリゲーション”、”インテリジェントネットワーク”、”グリーン技術”を3つの柱として、技術開発を推進しています。
オープン&ディスアグリゲーション
要件に合わせてエンド・ツー・エンドで最適なネットワークを提供できるようにするためには、個々に分解されたネットワーク機能が、オープンなインタフェースにより相互接続可能かつ、仮想化プラットフォームで実現できることが求められます。富士通では、オープン&ディスアグリゲーションの取り組みとして、ディスアグリゲーテッドコンピューティングの開発等の取り組みを進めています。
インテリジェントネットワーク
地理的に分散し、マルチベンダで構成されるエンド・ツー・エンドのネットワークは、大規模かつ複雑であることから、効率的な運用が求められます。個々の装置の使用状況やサービス品質に関するネットワークの状態を収集し、AIなどを活用したネットワークの自動化、最適化を行うインテリジェントな運用管理の実現に向けた取り組みを進めています。
グリーン技術
ハードウェア領域では、高周波ミリ波、サブテラヘルツ波を活用した高速かつ省電力なRUの開発や、光電融合技術を光トランスポートのみならずコンピュータシステムにも適用することで小型化、低消費電力化の実現を目指します。また、ハードウェアでの取り組みに加え前述のインテリジェントな運用管理を通じ、ネットワーク全体の消費電力削減を目指した取り組みを進めています。
デジタル未来社会を支える6G時代のネットワークは、オープン&ディスアグリゲーション、インテリジェントネットワーク、グリーン技術といった最新の技術を用いて低消費電力・柔軟性・高信頼性を実現する必要があります。富士通は、これらの技術開発に引き続き取り組み、世界中のお客様に提供することで、デジタル未来社会の実現に貢献していきます。
テクノロジーによって実現する、接続された持続可能な未来のビジョンとは
「あらゆる情報へのアクセスを向上させ、産業創出と技術革新を促進する社会の実現」という社会課題の解決に貢献していきたいと思います
Global Fujitsu Distinguished Engineer 認定エンジニア
作本 和則