光ディスアグリゲーテッドコンピューティングは、ユースケースに合わせ、ネットワーク・コンピューティング機能を柔軟に組み替えることにより、最適なリソース配備・運用を可能とするコンピューティングプラットフォームです。2030年代の高度で多様なサービスを支えるために、従来のコンピューティング技術では実現が困難な高性能な処理を低消費電力で実現します。
富士通は光ディスアグリゲーテッドコンピューティングの実現・普及を通し、様々なパートナーの新たな価値を創出するサービス提供を支えるとともに、持続可能な社会の実現に貢献します。
次世代ICTインフラへの要件
6G時代。5Gで進んだデジタル化がさらに多くの分野で進行し、距離や時間の制約を超えた、極めてリッチなユーザ体験が実現される社会が到来するでしょう。そこでは、人や様々なモノがネットワークにつながり、大量のデータに基づいて革新的なサービスが提供されます。
なぜ今“6G”か?2030年を見据えた富士通の覚悟こうした世界を実現していくために、ICTインフラにはどのような要件が求められるでしょうか。
高性能
生成AIの進化を筆頭にICTインフラに求められる計算量は急増しています。そのため、これまでよりも大規模な計算を高速にできる、高性能なICTインフラが必要となります。
スケール性
増加し続ける計算量に対応できるスケール性も重要となります。例えば、サーバーなどのインフラ数を増やし、分散処理させるスケールアウトなどです。一方で、スケールアウトしたインフラを一か所に集中させることは、電力供給や冷却など難しい面があります。そのため、インフラを広域に分散配置し、それを用いて、スケール性を出せることも必要となります。
低消費電力
このように増加し続ける計算量に対応すべく大規模化していくICTインフラによって、情報通信関連の消費電力は爆発的に増大していくことが見込まれます*。環境負荷を低減していくためには、ICTインフラの低消費電力化が急務となります。
柔軟性
6G時代では人や様々なモノがネットワークにつながり、様々なサービスが生まれることで、計算能力、ネットワーク帯域、遅延など、サービスごとに要件の多様化が進むと考えられます。そのため、サービス要件や負荷状況に応じて最適なインフラを構成できる柔軟性も必要となります。
富士通は、これらの要件を満たす新たなICTインフラとして、光ディスアグリゲーテッドコンピューティングを提案しています。
* 国立研究開発法人科学技術振興機構(2019)「情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.1)」
光ディスアグリゲーテッドコンピューティングの機能と効果
光ディスアグリゲーテッドコンピューティングは、3つのコンポーネントにより、前述の要件を実現するコンピューティングプラットフォームです。
①Composable disaggregated infrastructure(CDI)
従来のサーバーオリエンティッドなアーキテクチャーから、CPU、ストレージやGPUといったサーバー内リソースをディスアグリゲーションし、リソースプール化したアーキテクチャーへ変更することで、サービス要件にあわせた柔軟な論理ノードの構成を実現します。
また、性能要件に合わせた最小限のリソース構成、及び処理に応じた最適なアクセラレータの活用により、ICTインフラの低消費電力化を実現します。
②インターコネクト
リソース間、チップ間の接続、処理を、電気ではなく光によって行います。高速性、電力効率に優れた光技術を活用することで、電気的な接続を行う従来コンピューティングと比して、消費電力を削減するとともに、低遅延や処理性能向上を実現します。
③コントローラー
CDIとインターコネクトを制御し、リソースプールからサービスに必要なリソースの組み合わせを抽出し、論理ノードを構成します。サービスの状況を監視し、サービスのSLA/マニフェストに沿ってリソース構成をリアルタイムに変更し、システム全体を最適化することで、低消費電力化を実現します。また、ラック内、ラック間、データセンター間におけるリソースプールを統合しスケール性を実現するとともに、広範囲の稼働リソースの最適化を実現します。
活用が期待されるユースケース
光ディスアグリゲーテッドコンピューティングは次のような特性を持つサービス領域にて、その効果を最大限発揮します。
①大量のデータ処理が必要
②処理内容が多様で、様々なアクセラレータの活用が望ましい
③処理負荷のダイナミックレンジが大きい
④遅延要求が厳しい
こうした特性を持つサービスとしては、大量データを処理する画像解析AIや、リアルタイムで高負荷の処理を行うレンダリングを活用するサービスが考えられます。例えば、街の人々を見守り、街の安全を守るSmart Securityが挙げられます。このサービスは、大量のカメラ映像を使用したリアルタイム処理が求められることから、①大量データ処理が必要であり、④遅延要求が厳しいと言えます。また、昼夜間での人口差に基づいて、②処理内容が多様かつ、③負荷処理のダイナミックレンジが大きいサービス領域になります。光ディスアグリゲーテッドコンピューティングを活用することで、状況に応じて最適なアクセラレータ(FPGA/GPU)を必要なだけ割り当てを行うことにより、見守り・検知機能を担保しつつ、低消費電力を実現することが可能となります。
光ディスアグリゲーテッドコンピューティングの展望
光ディスアグリゲーテッドコンピューティングの適用範囲は、単一のサーバやデータセンター等の局所的な領域に留まりません。その適用範囲はICTインフラ全域に拡大し、広範囲にわたるリソースの最適配備が実現していきます。
将来的には、APN*等の高度な光技術を活用し、地理的に分散した複数のデータセンターへの適用も見込まれます。すなわち、都市間を跨いだリソースの融通をも可能とし、大規模なスケールで、高性能、低消費電力のICTインフラが実現されていくことになります。
実現と普及に向けた富士通の取り組み
研究開発
富士通の強みである、光技術とコンピューティング技術を活用し、光ディスアグリゲーテッドコンピューティングの3つの特長を実現する技術について研究開発を行っています。
また 日本電信電話株式会社と戦略的業務提携を結び、共同で光ディスアグリゲーテッドコンピューティングを含めた新しいICTインフラに関する研究開発を推進しています。
具体的には、処理に応じたアクセラレータ活用を実現するコントローラ技術や、アクセラレータ間直接通信・接続技術、および光電融合デバイスの活用を可能とする技術の研究開発に取り組んでいます。
コミュニティ活動
光ディスアグリゲーテッドコンピューティングのような革新的な技術の実現・普及には、幅広いパートナーとのグローバルかつオープンな連携と、それによるイノベーションが不可欠と考えています。富士通は、IOWN Global Forum*などのグローバルな各種コミュニティ活動に参画し、光ディスアグリゲーテッドコンピューティングの実現・普及を進めます。
IOWN Global Forumでの富士通の取り組み* The IOWN GLOBAL FORUM mark and IOWN GLOBAL FORUM & Design logo are trademarks of Innovative Optical and Wireless Network Global Forum, Inc. in the United States and other countries.