パソコンの利用と健康


目次
  1. 1. はじめに パソコンの利用と健康
  2. 2. パソコンの利用と疲労
  3. 3. パソコンを使う時の姿勢
  4. 4. パソコンを使う時の周囲の明るさ
  5. 5. パソコンと空調
  6. 6. タブレット・スマートフォン利用のヒント


近年、テレワークの拡大や教育現場におけるIT機器の活用、スマートフォンやタブレットの普及など、さまざまな場所でデジタルデバイスが活用されています。特に、職場以外の場所で長時間パソコンを使う人は増加傾向にあります。

パソコンを長時間使用することが、精神的あるいは身体的な疲労の原因になるという指摘があります。このような疲労は、パソコンを使う時の姿勢や、照明、空調をはじめとする周辺環境も原因だと考えられています。ここでは、パソコンを利用する際に知っておきたい、適切な姿勢や周辺環境についてご紹介します。

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2. パソコンの利用と疲労

疲労の原因

パソコン利用時の疲労の原因には、次のようなものが考えられます。

  • 長時間、椅子に座ることで姿勢が拘束され起こりうる、首、肩、腕、背中、腰などの疲労。
  • 高度な判断を連続的に行なったり、続けて単調な入力作業を行なうことによる、精神的な疲労。
  • キーボード作業を中心に、頻繁に手指や腕を使うことによる、手や腕の疲労。
  • 部屋の明るさが適切ではなかったり、ディスプレイ上の文字を見続けたり、ディスプレイの映り込み、極端に明るいものが見えることによる、目の疲労。

疲労を軽くするためには

疲労は、パソコンの作業継続時間や設置場所の工夫により軽減することができます。厚生労働省から出されたPDF「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」 (2019) をもとに、富士通では次のような提案をしています。

適度な休憩

同じ姿勢を長時間続けたり、ディスプレイの文字を長時間見続けたりしないように、適度な休息をとるようにしてください。

  • 連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業時間までの間に10分~15分の作業休止時間を設けましょう。(リラックスして遠くの景色を眺める、作業中に使用しなかった身体の各部を動かすなどの運動を行なうとよい)
  • 連続する作業時間内においても、その中で1~2回、それぞれ1~2分程度の作業休止をとりましょう。
  • 疲れを溜めないよう、個々の特性に合わせて、無理のない作業量となるよう配慮します。

ストレッチ

  • 長時間パソコンを使う前、使った後は、体操やストレッチなど軽い運動等を行ないます。
  • 休憩中は椅子から離れ、背筋や腕を伸ばしたり首を回すなどのストレッチを行ないます。
  • 短時間しか休めない時は、キーボードやマウスから手を離し、身体の両脇にたらして手を休めましょう。

パソコンの手入れや周囲の整頓

パソコンや、その周辺が手垢やホコリなどで汚れていると、マウスの反応が悪くなったり、ディスプレイが見にくくなるなど、疲れる原因になります。疲れにくい作業姿勢がとれるように、パソコンや机の周りを整理整頓しておくことを心がけましょう。

  • 作業場所やパソコンの清掃を行ない、常に清潔を心がけましょう。
  • 特にディスプレイは、静電気でホコリが付着しやすいので、きれいに拭きましょう。
  • パソコンの周辺や机の下を整理整頓して、適切な作業姿勢がとれるようにします。

疲労や痛みがとれない時は

  • 休憩しても疲労がとれなかったり、激しい痛みを感じる時などは、すぐにパソコンを使うのをやめて、すみやかに医師に相談してください。
  • 症状が軽ければすぐに回復するものでも、進行すると回復に長い時間を要することもありますので、気をつけましょう。

3. パソコンを使う時の姿勢

パソコンを使う時は、適切な姿勢で作業できるように机や椅子を調整し、ディスプレイやキーボードの置き方を工夫することがポイントです。

ここでは、ノートパソコンとデスクトップパソコンそれぞれのデバイスごとの、注意するポイントを見ていきます。

ノートパソコン使用時

ノートパソコンは、ディスプレイとキーボードが一体化されており、キーボードが小さい場合もあるなど、姿勢が制限されやすく視距離が短くなりがちです。このような特徴をよく理解し、次の点に注意して使うように心がけましょう。また、「ディスプレイと姿勢」「キーボードと姿勢」「机や椅子と姿勢」の項目も参考にしてください。

  • 多くのノートパソコンでは、外付けディスプレイやキーボード、マウス、テンキー入力機器などが利用できます。作業の効率化・作業負荷の軽減に役立ちますので、ノートパソコンで長時間作業を行う場合は、作業内容に応じて外付け機器の導入を検討しましょう。特に、マウスは疲労軽減だけではなく、作業効率の面からも導入をおすすめします。
  • 作業する際には、周辺機器を置くスペースを十分に確保します。マウスを使用する場合はマウスを動かす場所を広めに確保します。
  • 長時間同じ姿勢を続けないため、前後、左右にノートパソコンを動かせる程度の余裕を持たせます。
  • キーボードが好みの角度になるように調節し(脚がない場合は本などを使うと良い)、キーボードの手前に手首を休ませるパームレスト、アームレストの空間を確保します。
  • 姿勢を正し、ディスプレイと目の距離を40cm以上離すように心がけます。
  • 画面を見やすい角度に調整します。体格や姿勢によって適切な角度は異なります。また、一日のうちに見やすい角度が変化することもありますので、長時間の作業では、何度か見直すのがよいでしょう。

デスクトップパソコン使用時

デスクトップパソコンでは、ディスプレイやキーボードを置く位置や角度の自由度が高く、調節がしやすいという利点があります。「ディスプレイと姿勢」「キーボードと姿勢」「机や椅子と姿勢」の項目も参考にし、適切な姿勢を心がけましょう。

  • 作業する際には、周辺機器を置くスペースを十分に確保します。マウスを動かす場所も広めに確保します。
  • キーボードが好みの角度になるように調節し(脚がない場合は本などを使うと良い)、キーボードの手前に手首を休ませるパームレスト、アームレストの空間を確保します。
  • ディスプレイと目の距離を40cm以上離すように心がけます。
  • 画面を見やすい角度に調整します。体格や姿勢によって適切な角度は異なります。また、一日のうちに見やすい角度が変化することもありますので、長時間の作業では、何度か見直すのがよいでしょう。

ディスプレイと姿勢

ディスプレイは、作業する人にとって使いやすい位置、角度、明るさに調整します。

  • ディスプレイの上端が目の位置より下になるように高さを調節し、ディスプレイと目の距離を40cm以上確保します。
  • ディスプレイ、キーボード、書類と目までの距離(視距離)が同じ程度で、適切な視野範囲に収まるようにします。
  • 表示する文字は、あまり小さくならないよう、文字の高さがほぼ3mm以上を目安にします。(見え方には個人差があるので、無理なく見える大きさで表示する)

キーボードと姿勢

細かい動きを行なう筋肉は疲労しやすいといわれています。キーボードを使う入力作業は、大きな力を必要としませんが細かくてすばやい動きが続きます。また、肘から先に集中した動きが多く、他の部分の運動を伴わないので、長時間、同じ姿勢でいることになります。その結果、部分的に血行が悪くなり、首、肩、腰などに疲労や痛みを感じることがあります。

  • 手首は、前腕(肘から手首までの部分)に対して真っ直ぐ伸ばし、キーボードは身体の正面に置き、身体がねじれないようにします。
  • キーボードを打つ際は、手のひらを、机やパームレスト(注)に強く押しつけないようにして、パームレストが手首を圧迫しないようにします。
  • 書類を見ながらキーボード操作をする時は、書見台を使いましょう。キーボードのキーは、力を入れて叩くのでなく、押す感じで入力します。
  • 「ctrl」、「shift」キーと他のキーを片手で同時に押すような時、指を無理に広げると負担になる場合があるので、手が小さい人は両手の指を使うような習慣をつけると良いでしょう。


(注) パームレスト:手首を水平に保つために、手のひらや手首を載せるパッドやクッションのこと

机や椅子と姿勢

机や椅子は身体に合ったもの、また、身体に合わせて調節できるものを選びましょう。

特に、ダイニングテーブルや事務用机など、パソコンデスク以外でノートパソコンを使う場合などは、机や椅子の選び方や組み合わせで、疲労の度合いがずいぶん違ってきます。作業する人が最も楽な姿勢をとれるように、調整をしましょう。

机や椅子の選び方

  • 机は、書類・キーボード・マウス・書見台・その他、パソコンを使って作業をする時に必要なものが適切に配置できる広さを持ち、床からの高さが概ね65~70cmが良いでしょう。
  • 高さを調整できる机を選ぶ場合は、60~72cmの範囲で調節できるものが良いでしょう。
  • 椅子は、座面の高さを自分の体格に合わせて調節でき(通常、床から37~43cmの範囲)、背もたれ付きのものが良いでしょう。
  • 机に腕を乗せることができない場合は、適当な長さの肘掛けを持つ椅子を使います。

机や椅子の調節方法

  • 机の高さが調節できる場合は、椅子を身体に合わせて調節し、次に机を適切な高さに調節します。調節できない場合は、机が適切な高さになるように椅子を調節し、必要に応じて足台などで椅子の高さが身体に合うように調節します。
  • 机の高さの目安は、作業する姿勢で上腕を垂直にし、肘を90度程度に曲げた時、キーボードに自然に手指が届くくらいが望ましいです。
  • 椅子に深く腰をかけて、足の裏側全体が床または足台に接するようにします。また、椅子と大腿部との間に、手指が押し入る程度のゆとりを持たせます。

4. パソコンを使う時の周囲の明るさ

明るさについて

パソコンを使う時の周囲の明るさは、新聞の文字が無理なく読める程度を目安にしてください。周囲に極端に明るい場所や暗い場所があると、知らない間に目が疲れてきますので注意が必要です。特に窓面は明るくなることが多いので、ブラインドやカーテンなどで調節しましょう。また、手元を照らす補助照明を使う場合は、ディスプレイ面を照らすとディスプレイに表示されているものが見えにくくなりますので、注意が必要です。

  • 垂直面の照度は、500ルクス以下(新聞の文字が楽に読める程度)で、明るくなりすぎないようにします。
  • キーボードの照度は、300ルクス以上(新聞の文字が楽に読める程度)で、暗くなりすぎないようにします。
  • 視野に入る明暗の差を小さくし、特に光っているものが視野に入らないようにします。

まぶしさやディスプレイへの映り込み

視野の中で光って見えるもの(天井照明、窓、光が反射しやすい機器や家具など周囲と比較して明るいもの)がある場合や、ディスプレイに強い光が映り込む場合は、知らない間に疲労感・不快感が増加することがあります。直接目に入る光やディスプレイへの映り込みを減少させるためには、パソコンを使う場所を工夫することが重要です。

  • 天井照明、窓、光が反射しやすい家具などがディスプレイに映り込まないよう、置く場所を工夫しましょう。
  • 窓にはカーテンやブラインドをつけ、外光が直接目に入ったり、ディスプレイに映り込むのを防ぎましょう。

5. パソコンと空調

空調とドライアイ

空調によるドライアイは作業時における疲労原因の1つに指摘されています。ドライアイとは涙の減少や質的な変化により、目が炎症を起こすことです。空気が乾燥している時や、エアコンの吹出口から出る風にさらされると、眼が乾いてドライアイや眼の疲れの原因になります。空気が埃やタバコの煙などで汚れていると、弱った目がさらに刺激され、症状がいっそう悪くなる恐れがあります。

空調と身体の痛みやコリ

エアコンの吹出口から出てくる冷たい風が直接身体に当たると、血液の循環が悪くなり、首、肩、腰などの痛みやコリが起こりやすくなります。

空調との付き合い方

パソコンを使う場合は、空気の乾燥やエアコンから吹いてくる風、部屋の冷やしすぎに注意が必要です。暑さや寒さは人によって感じ方が違います。適度に調節して、健康を損なわないようにしましょう。

  • 相対湿度は40~70パーセントになるようにし、乾燥している時には加湿器を使いましょう。
  • エアコンから吹いてくる冷たい風が身体に当たらないように、風の向きや強さをコントロールしましょう。
  • 夏は、部屋の温度を下げすぎないようにします(室内の温度は、17~28度を目安とする)。
  • 定期的に換気しましょう。

6. タブレット・スマートフォン利用のヒント

テレワークや在宅学習時の注意するポイント

これまでは、テレワーク/在宅学習は、会社勤務や学校での学習の補助的な位置づけとされてきました。
しかし、今後はテレワークや在宅学習がより一般的なものとなり、家庭でパソコン、タブレット、スマートフォンを使う時間はますます増えていくことが考えられます。

タブレットやスマートフォン市場を見渡すと、次々に新しい製品や使い方が提案されています。その一方で、これらは一般的な情報機器として、私たちの生活に浸透しつつあります。実際にテレワークや家庭学習に利用している人も多いのではないでしょうか。この章では、タブレットやスマートフォンをテレワークや在学習に使用する際に気を付けたい基本的なポイントを挙げました。

以下の7つのポイントは、日本人間工学会の「タブレット・スマートフォンなどを用いて在宅ワーク/在宅学習を行う際に実践したい7 つの人間工学ヒント」(2020年6月) の提言をまとめたものです。
タブレットやスマートフォンといった情報機器のそれぞれの特性を理解し、効率性だけではく悪い影響(疲労や慢性的な疾患)が出ないよう、参考にしてください。

1. 在宅ワーク/在宅学習で情報機器を使用する場合は、「20-20-20 ルール」を実践しましょう。(20分ごとに20秒小休止、20フィート(6m)先を見る)

2. タブレットやノートPCなどの情報機器を使用する場合は、座った姿勢と立った姿勢を交互に取りましょう。

3. スマートフォンを持っている腕をもう一方の手で支え、スマートフォンは持ち上げて首をできるだけまっすぐにしましょう。



4. タブレット・スマートフォン用のスタンド/ケースを使用し、本や雑誌の上に置くなどして、画面は目の高さまたは少し下になるようにしましょう。



5. 情報機器でコンテンツを閲覧・視聴するときには横向きにして使用することを基本にしましょう。


6. ストップ・ドロップ・フロップ!小休止を取る習慣として、このシンプルな方法を実践しましょう。

7. タブレット・スマートフォンで長時間文字入力をするときは、外付けの人間工学キーボードを使用しましょう。

出典:タブレット・スマートフォンなどを用いて在宅ワーク/在宅学習を行う際に実践したい7つの人間工学ヒント(2020年4月)一般社団法人日本人間工学会

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