答えを探しにフィールドへ。
この働き方が気に入っています(後編)

掲載日 2021年3月4日



富士通株式会社(以下、富士通)が経営方針として掲げるDX企業への変革。その変革において不可欠なデザイン思考は、固定概念や従来の商習慣に捉われず、新しいイノベーションを起こすためのマインドセットであり、また、社員一人一人の想像力を引き出す手法となるものです。デザインセンターには、デザイン思考を実践することが求められ、さらに、富士通全社員に浸透させる役割も期待されています。

デザインセンターに所属する南澤沙良氏は、2017年の入社以来、一般消費者向けの電子ペーパーの開発など、富士通グループのパソコンメーカーである富士通クライアントコンピューティング株式会社(以下、FCCL)の新規事業にデザイナーとして携わっています。今回、具体的な仕事内容とともに、富士通におけるデザイナーの役割や効果について伺いました。

後編のポイント

  • インターンで感じた、富士通の企業価値や考え方。
  • 専門性を持ち、かつ自由に仕事ができる富士通のカルチャー。
  • ユーザーが体験する価値を向上させるため、デザイン思考という“同じ脳“を持つ。

インターンで感じた、テクノロジー企業ならではの合理的な思考と柔軟性

——— 大学院時代に富士通でインターンをされたと伺いました。入社までの経緯をお聞かせください。

南澤: 学生時代は、プロダクトデザインを軸にサービスデザインも含め総合的にデザインを学びました。富士通でインターンを体験したのは大学院1年のときです。インターン先として富士通を選んだのは、同じ研究室に富士通に就職した先輩がいたことがきっかけですが、何より「Human Centric Experience Design」を掲げていたことが大きかった。私が考えていた、ユーザーの現場を見てニーズに合うもの作る、それができる会社だと思いましたね。

富士通はさらに、製品に直接接点のあるユーザーを対象にするだけではなく社会的な視野を持って製品・サービスを提供する企業姿勢でした。また、今後絶対に必要になるであろう、IT技術とユーザーとのタッチポイントであるプロダクトを製造するメーカーであることも惹かれた理由の一つです。

インターンシップは、書類とポートフォリオ(作品集)、面談による選考を経て採用され、3週間ほど現場を体験しました。当時は中国からのインバウンド需要が高まっていて、インターンシップのテーマとして、その需要に対するリテール(一般消費者向け小売り)の新サービスの考案を行いました。「爆買い」の中心地であった東京・銀座に足を運び、中国からの旅行者がどのように買い物をして何に困っているのか、どういうソリューションがあれば改善されるのか、どんな体験ができたら嬉しいのか、観察しながらアイデアをブラッシュアップしていったのです。その結果、大きなキャリーケースを2〜3個引きずって買い物をするスタイルが主であることがわかったので、手ぶらで買い物できるよう宅配ボックスのようなものを利用して店舗とホテルが連携するサービスを、営業担当と一緒に考えて提案しました。机に張り付いているだけでなく、フィールドに出ていくことができる職場であること、一人一人にある程度の裁量があることがわかって働きやすいと感じたことも、入社への後押しになりましたね。

もう一つ、テクノロジー企業ならではの合理性や柔軟性を持った企業カルチャーと感じたことも安心材料になりました。たとえば、応募書類の一つであったポートフォリオ。製本して提出を要求する会社が多く、それが学生にとって結構な負担になっていたのですが、富士通はPDFでもOKでした。小さなことではありますが、代替案が排除されていない。その印象は実際働き始めてからも変わっていません。立場によって捉え方はさまざまですが、「意味のないこと・理不尽なこと」を極力少なくしようとするカルチャーは、仕事上とてもやり易さを感じます。

一人一人が専門性をもって自由に仕事ができる環境

——— 大学や大学院で学ばれたことは、すぐに仕事で役に立ちましたか?

南澤: 仕事に直結する知識や手法は入社後にOJTで身に付けてきました。ただ、“デザインする”ことに関しては、アウトプットが違うだけで基本的な考え方は同じだと思います。大学で勉強していたのはプロダクトデザインやサービスデザインでしたが、ユーザーのどういう課題を解決するためにどのようなソリューションにするかを考え、チームで分担しながらその目的に向かって進めるという「プロセス」については、大学からの経験が活きていると思います。

——— 富士通は、プライベートでも社員同士の交流が多いと伺いました。企業カルチャーについてはどう感じていらっしゃいますか。

南澤: 上司や部下といった関係を越えて一緒にテニスやスノーボード、バーベキューなどを楽しむ機会があったり、直属の先輩が自宅に招いてくれたりと、業務に関係なくフラットに仲良くできるカルチャーが根付いていると思います。仕事だけの関係だと、他の部署の動きは見えにくいものですが、多くの部署の人と交流できるので、いざその人の知識や経験が必要になったときに話を聞きやすいし、雑談から社内の動きを知ったり、仕事のヒントを得たりすることも少なくありません。

上司や先輩に対して意見を言っても怒られないし(笑)、むしろ言うことを求められる空気があるので、萎縮しながら言われた通りの仕事をするということがない。私にとってはとても働きやすい環境です。また、比較的自由に仕事をすることが許容される土壌があると思います。もちろん、その分責任は伴いますが、一人一人の裁量が大きいことも働きやすさにつながっているのではないでしょうか。

大きなシステムを作るため“脳”は一つに

——— デザインセンターは、社内にデザイン思考を浸透させる役割も担っていますね。営業、SEを含めた全社員がデザイン思考を取り入れることについて、どのように考えていますか。

南澤: まず、デザイナーの立場で最も大切にして常に気にしているのは、エンドユーザーが価値を感じるかどうか。それを踏まえて、営業担当やSEがデザイン思考を取り入れるということは、「エンドユーザーの価値を軸に物事を考える」ことだと私は考えています。その姿勢が価値判断の軸として全社的に共有できれば、仕事はしやすくなるのではないでしょうか。

ただ、「ユーザーの価値を考える」は「ユーザーの言うことを聞く」と必ずしも同義ではありません。よく言われることですが、大切なのはインサイトを探ること。人は自分の欲求を正しく把握して、表現しているとは限らないので、いかに本音を探り、仮説を立て、検証し、提案するかが大切になります。こうした認識を共有し、それぞれが専門性を活かしながらコラボレーションする環境がさらに整うといいですよね。

——— そうしたなかでのデザイナーの役割をどう考えていらっしゃいますか。

南澤: 経営側や企画担当の思い、SEの立場から見た実装の可否、納期などさまざまな要素を考慮します。その上で、ユーザーが感じる価値について考え、それをわかりやすくチームに伝え、納得感をもって皆が動けるようにサポートしながらクリエイティブを担うのがデザイナーの仕事だと思っています。

富士通が手掛けるシステムや事業はとても大きな規模で、一人で担うことは到底できません。役割分担が必要です。でも、“脳”がいくつもあれば右足と左足がバラバラに動いてバランスを崩して倒れたり、目的地にたどり着けなかったりするかもしれません。それぞれが「デザイン思考」をインストールして同じ“脳”をもつことで、より良い結果が導き出されると思います。

今、社内ではデザインの価値が大きく見直され、今後一層、仕事の中でデザイナーの考えを丁寧に伝えていくことが求められるでしょう。一方で、これを機にますますデザイナーが働きやすくなるのではと期待もしています。やりたいことがある、それを主体的に進める意欲と行動力がある、そんな方々と一緒に仕事をすることを楽しみにしています。

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