答えを探しにフィールドへ。
この働き方が気に入っています(前編)

掲載日 2021年2月24日



富士通株式会社(以下、富士通)が経営方針として掲げるDX企業への変革。その変革において不可欠なデザイン思考は、固定概念や従来の商習慣に捉われず、新しいイノベーションを起こすためのマインドセットであり、また、社員一人一人の想像力を引き出す手法となるものです。デザインセンターには、デザイン思考を実践することが求められ、さらに、富士通全社員に浸透させる役割も期待されています。

デザインセンターに所属する南澤沙良氏は、2017年の入社以来、一般消費者向けの電子ペーパーの開発など、富士通グループのパソコンメーカーである富士通クライアントコンピューティング株式会社(以下、FCCL)の新規事業にデザイナーとして携わっています。今回、具体的な仕事内容とともに、富士通におけるデザイナーの役割や効果について伺いました。

前編のポイント

  • デザイナーとして、製品のUI/UXデザインを担当している。
  • ユーザー体験向上のため、製品の企画からプロモーションまで携わることが増えた。
  • 製品が使用される現場を知り、ユーザー視点を持つことがデザイン思考の実践に繋がる。


デザイナーとしてどのような支援ができるのか、臨機応変に考える

——— 現在、どのような仕事に携わっていますか。

南澤: 新卒で入社して今年4年目になり、主にUI/UXのデザインを担当してきました。現在はデザインセンターのプロダクトデザイングループに所属し、主に、電子ペーパーの「QUADERNO(クアデルノ)」やエッジコンピューター「MIB(Men in Box)」など、FCCLの新規プロダクトに携わりながら、他部署の仕事にも横断的に関わっています。ソフトウェアのUI/UXをデザインすることもあれば、企画段階において、研究チームと一緒にユーザーのヒアリングや現場視察を行い、製品化に向けて一緒に取り組むこともあります。

電子ペーパー「QUADERNO」

——— プロジェクトのなかで、デザイナーはどの段階から関わるのでしょうか。

南澤: 私が所属する部署であるビジネスデザイン部の業務はさまざまです。たとえば、サービス設計やUI/UXのデザインなどが挙げられますが、量産型パソコンなどの既存事業はライン業務体制がしっかりできていて、それぞれの業務担当が比較的明確です。

一方、私が主に担当している新規事業については、案件によってかなり幅があります。たとえば、「QUADERNO」の仕事では、「電子ペーパーを一般消費者向けに作る」という方針がFCCLで決まった段階以降の全フェーズに関わりました。「他社の電子ペーパーと差別化するためにどのような製品が望ましいのか」といったコンセプト作りに始まり、ロゴデザインやUIデザインなど具体的な制作の仕事から製品化後には購入者にヒアリングも実施しています。「どこが刺さったか(役立ったか)」「どこが不満か」「最初に立てたコンセプトとの乖離がないか」など、デザイナー自らインタビューをして、その結果をまとめ、今後どうしていくかを考えるワークショップも事業メンバーと実施しました。

次の商戦に向けた開発が決まれば、たとえばワークショップで出たアイデアを生かして具体的にUI/UXを設計したり、プロモーションの企画を考えたり、プロモーション動画のディレクションをしたりと次の仕事へと繋がっていきます。新規事業の仕事は、その場の流れや状況に左右される部分が大きいので、デザイナーとしてどんな支援ができるかということを常に考え、臨機応変に動くことが求められますね。

デザイナーの仕事の流れ(例)

デザイナーが製品の使用環境やユーザーを知ることの重要性

——— 仕事を進める中で、デザイナーとしてどのようなことを心がけていますか。

南澤: どんなに便利な機能だとしても、使いにくいUIであれば使う気が起きないし、デザインがイマイチでテンションが上がらないから使わないということもありますよね。世に出ている製品にも、せっかく便利な機能があるのに使われずに損をしているものがあると思うのです。

だから、デザイナーとして「使いやすい」「ナチュラルに使える」「気分が上がる」といったことを追求して、ユーザーが本当にほしいものをきちんと届けることを心がけています。電子ペーパーであれば、機能を盛り込み過ぎたら逆にペーパーとして気軽に使いづらくなる可能性もあるでしょうし、「本当にその機能は必要なのか」という根本的な問いも忘れてはいけないことです。

そのためには、現場やユーザーの声を聞くことが欠かせません。「QUADERNO」の場合は、FCCLのECサイトを通じて購入者にお声掛けし、質問項目を自分たちで検討し、実際に1人1時間くらい使ってじっくりとインタビューをしました。他の案件でも、工場など実際に製品が使われる現場を視察し、撮影し、実際にユーザーがどう動くかといったことを観察します。特にUIについては、現場でユーザーが何に困っているかを把握した上で解決策を示すようにしています。

——— オフィスを離れ、いわばフィールドに出ていくことも多いということですね。

南澤: そうですね。デザイナーは、答えを持っているわけではありません。答えを見つけることにモチベーションがあるんだと思います。仮説があっても答えではない。答えに繋がるヒントを見つける機会をフィールドに求めるのは、とても大切なことだと思いますし、そのモチベーションこそ富士通が求めるデザイン思考、その現れの一つだと考えています。

たとえば仕事で電子ペーパーが使われる場合、そのユーザーの業務環境は私にはわからない。まず、その環境を自分が知らないと、ユーザーが何に困っているのかが理解できません。話を聞くことはもとより、実際にシステムを使ってもらい、その人がどこを見ているかを観察する。デザイナーが現場を知る、足を運ぶというのはとても大切なことだと思います。

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