世界最薄・最軽量を実現したタブレットPC
「FMV LOOX」がグッドデザイン賞受賞 開発デザイナーが語るFMV40周年記念フラッグシップモデルへの想い

世界最薄・最軽量を実現したタブレットPC
「FMV LOOX」がグッドデザイン賞受賞

開発デザイナーが語るFMV40周年記念フラッグシップモデルへの想い



掲載日 2023年3月6日

『FUJITSU PC 40th Anniversary』の記念モデルとして2022年6月に発売された13.3型タブレットPC「FMV LOOX」。「LOOX」ブランドの復刻となるこの製品は、富士通の技術を結集し、40周年のフラッグシップモデル※1として制作されました。美しいデザインと高いモビリティ性能、またユーザーの創造力を掻き立てるUIデザインが評価され、2022年度グッドデザイン賞を受賞しました。ハードデザイン、UIデザインそれぞれが優れていながらも一体感ある世界観を作り出した、デザインセンター エクスペリエンスデザイン部の岡本浩平、三澤建人に話を伺いました。

  • ※1 フラッグシップモデル :
    複数モデル製造される製品シリーズのうち、最も上位に位置づけられる製品のモデル。企業の顔となる代表的なモデル。

インタビュイープロフィール
デザインセンター エクスペリエンスデザイン部 デザイナー

  • 岡本 浩平
  • 三澤 建人

部署名・肩書は取材当時のものになります。



コンセプチュアルなデザインで、新たな創造体験を提供

13.3型WindowsタブレットPCとして、薄さ約7.2mm、軽さ約599gという世界最薄・最軽量を実現した「FMV LOOX」。アルミ削り出しの洗練されたスタイルに加え、Windows 11 Proや第12世代インテルCoreTM i7プロセッサを搭載し、その性能はクリエイティビティを刺激します。

「開発当初は、FMVブランドの40周年記念モデルということ以外は何も決まっていませんでした。FMVブランドの『細部まで人を想うからできることがある』というコンセプトに対し、現代社会においてコンピューティングでどのような体験価値を提供できるのか?その体験を実現する製品とは?と、およそ2ヵ月間をかけて企画を練りました」(岡本)

FMV LOOXの開発がスタートした時期はコロナ禍であり、モバイルPCやタブレットの使用頻度が高まった時期です。オンラインサービスも急激に増え、制作や発信が身近になり、人と端末の距離感がぐっと近づいたと感じた方もいらっしゃるかもしれません。LOOXの開発はオンラインサービス時代のプロダクトのあり方や、新たな製品を届けようとする開発者たちの認識を新たにする機会でもありました。

「オンライン、オフラインの垣根がなくなり、働き方もオフィスや自宅、外出先など場所に固定されなくなりました。場所が変わると、PCに対しても新たな不満や課題も見つかります。でも我々デザイナーにとっては、その不満や課題はアイデアのきっかけになり、既存のPCであっても進化の余地があることに気づきました。
仕事をする人、教育を受ける人、作品を創造するクリエイターなど、パソコンでアウトプットする人達が、どのような環境でも自由に創作できることが、今回のモデルの製品コンセプトです。私たちデザイナーが時代の変化をヒントにしてLOOXをデザインしたように、ユーザーにとってもLOOXがもたらす変化や新しさが創作の後押しになるといいなと思います」(岡本)

デザインセンター 岡本

「クリエイター向けの創作ツールというと専門的なものや小難しいものが多いですが、ユーザーがストレスなく創作体験できることがコンセプトなので、“初見の人でも触ればわかる”デザインを目指しました。WindowsのOSが10から11に入れ替わる時期でもあるため、UIの基礎的な部分を熟知しており、かつ変化に対応した新しいデザインを作れるメンバーで開発に臨みました」(三澤)



初見でも直感的に触れて、ストレスを感じない体験を目指す

チーム全体で「LOOXの目指す姿」が描かれました。次は、それぞれのチームの出番です。
プロダクトデザインチームが動き始めたのは、発売の約1年前。それから半年後、ハードウェア、アプリの規格などプロダクトの全体像が見えてきたタイミングで、UIデザインチームも本格的に始動しました。

UIチームが開発した機能として特筆すべきは「クリエイティブコネクト」です。従来PCは1台ですべて作業することが前提でした。しかし、例えば4K撮影で制作された100GBを超えるデータ量を扱うには、デスクPCに束縛されるか、大きな筐体のワークステーションを持ち歩く必要があります。そういう常識を変える必要がある、とチームは考えていました。
「複数のPCを自在に使いこなす『クリエイティブコネクト』は、LOOXとともに生まれた新しい概念です。今までのようにLOOX一台で作業することもできますし、複数のPCと連携できる拡張性もある。身軽さとパワフルさを両立する、より快適な作業環境を実現できます」(三澤)

デザインセンター 三澤

ユーザーのあらゆる使い方に対応できる機能や性能を備えた、新しい体験価値をもたらすタブレットPC―それがFMV LOOXがたどり着いた姿でした。
ハードデザインとUIデザインのそれぞれのチームは、開発中はそれぞれの担当領域でデザインを進めつつ、事あるごとにイメージする利用シーンやユーザー体験を持ち寄り、目線を合わせるために会話を繰り返したそうです。

「UIの検討や製品発表用のビジュアル作成時に、ユーザーはこんなふうに利用するのではないか、机の上はこんな状況じゃないかなど、イメージが湧いてくることがありました。そういったイメージを都度ハードウェアチームに伝えていました」(三澤)

利用シーン

「ハードデザインとUIデザイン、そして周辺機器、これらがセットとして自然に見えないとプロダクトの世界観が成立しないと改めて実感しました」(岡本)
このように、チームの担当領域だけでなく製品全体での課題についてコミュニケーションを図ったことで、細部にまでコンセプトが宿っていきました。

ハードウェアのデザインを担当した岡本は、薄さと軽さを追求しながらタブレットのフォルムの美しさも実現し、キーボードやスタンド、ペンなどの周辺機器についても、ユーザーに一切のストレスを感じさせない操作性を求めたと言います。「キーボードなどのオプションツールは力を入れずに着脱できるか、起動ボタンの場所はどこか…誰もが無意識でする動きについて、1~2秒の迷いや違和感を検証し、あらゆる面でのスムーズな所作を追求しました」(岡本)
こうして1年以上の開発期間を経て、あらゆるユーザーが満足する使用感を実現し、FMV LOOXは完成しました。



「ユーザー体験」も評価されグッドデザイン賞受賞

FMV LOOXには富士通のノートPC軽量化の技術やユーザビリティのノウハウが集約されています。その一方、スタンド、キーボード、ペンなどのオプションツールはそれぞれの分野を得意とする製造工場へ依頼しました。異なる工場での製造は、色や質感も含めた統一に苦労しましたが、細かい調整を経て、洗練された美しい端末が誕生。ハード、UI、ユーザー体験などが総合的に評価されグッドデザイン賞を受賞しました。

「製品として、ユーザーにどのような体験を提供できるのか、その点を評価していただいたことはすごくうれしかったです。ある意味コモディティ化※2されたタブレット端末というプロダクトでグッドデザイン賞を申請してどのように評価されるか、個人的には未知数だと思っていたので、ほっとしています」(岡本)
「使い方や体験を評価していただき光栄に思う一方で、『良いデザインはデザイナーだけではできない』と実感しました。今回のような良いプロダクトに仕上がったのは、関係者全員が同じ方向を向いて力を合わせた結果だと思います」(三澤)

  • ※2 コモディティ化 :
    市場参入時に、高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、一般的な商品になること。

今回、FMV40周年記念のフラッグシップモデル開発に携わるという貴重な経験だけでなく、グッドデザイン賞受賞に至った2人。この先、どのような展望を描いているのでしょうか?

「プロダクトのコンセプトを練っている時、『クリエイターとは、いわゆるアーティストなど特殊な人だけを指す言葉ではない』と思いました。FMV LOOXはすべての人の様々な表現をサポートできる製品になったと思います。今後も、ユーザーに寄り添った幅広いジャンルの製品を作っていきたいですね」(岡本) 「長くものづくりに関わる仕事をしていると、毎年発売される製品一つひとつの意味が薄くなっていると感じることがあります。前年モデルと大差ないな…とか。今回のFMV LOOXは使う人の目的を捉えて、高い品質をプロダクトに落とし込んだ結果、意味がある製品になったと思います。今後もこのような意味があると感じられるものづくりに関わっていきたいです」(三澤)

40年前に誕生したFMVシリーズ。2人は40年前のFMVをリアルに体験した世代ではありません。しかし、先輩から技術や想いを受け継ぎ、今の時代にふさわしいFMV LOOXを開発し、次世代へとつないでいきます。FMV LOOXは40周年記念モデルとしての完成形であり、次の世代のプロダクトの入口でもあります。FMV LOOXの進化はこれからも続いていきます。



  • FMV LOOXは個人のお客様向けモデルであり、富士通から法人のお客様向けの販売はしておりません。

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