5Gの速さを体感できるUIを
いかに実現するか(前編)
~ arrows 5G F-51A

掲載日 2021年8月23日

5G対応端末としては世界最薄となる7.7mmの本体、本体を囲むフレームや背面の意匠に高級感を持たせ、さらに先進技術をイメージしたUIが盛り込まれた5G対応スマートフォン「arrows 5G F-51A」が2020年度のグッドデザイン賞を受賞しました。UIデザインを担当した三澤 建人に、UI画面を設計するにあたって求められたことや大切にした点を聞きました。

前編のポイント

  • 世の中のニーズを集め、分析しデザインに落とし込んでいくのがUIデザイナーの仕事。
  • UIデザインでは「使い勝手」と使うことでもたらされる「経験」が最も大切。
  • UIの理想型は「利用者に意識されない空気のような存在」であること。


UIデザインで重要なのは人とのコミュニケーションの作り方

5G対応スマートフォン「arrows 5G F-51A」は、5Gの特性である超高速・大容量・低遅延を予感させるUIデザインが特長です。「UIデザインで重要なことは、人を迷わせない、直感的に操作がわかる画面の作り方、もっと言えば『人とのコミュニケーションの作り方』です」と語るのは、UIデザインを担当した、デザインセンタープロダクトデザイン部の三澤 建人です。

「arrows 5G F-51A」のデザインにあたって、三澤は「5Gの特長を踏まえたリッチコンテンツの軽快な操作を実現するためのUIが求められました。5Gの特長の一つに高速通信がありますが、我々はこの『速さ』に着目し、通信だけでなく体感的な速さをも感じることができるソフトウェアを目指しました」と話します。

そのソフトウェアの一つが「FASTフィンガーランチャー」です。この機能を使えば、ホーム画面からアプリを選んで立ち上げる操作を省略でき、利用者は使いたいアプリを瞬間的に立ち上げて使うことができます。「ほんのわずかな手順の省略のようですが、使い心地としては素早さや新しさなどを感じられるものになりました」と三澤はこの機能の利点を説明します。

スマートフォンのロック解除と同時にアプリを起動できる機能が「FASTフィンガーランチャー」

例えば、近年キャッシュレス決済の利用者が増えていますが、実際に使ってみるとアプリの起動に手間取ったり、うまく読み込めなかったりということがあります。「キャッシュレス決済など、日常生活の中でのさまざまな利用シーンを想定し、どういった操作ができれば使いやすいかを考え、UIに落とし込んでいくことがデザイナーの重要な仕事だと思います。『FASTフィンガーランチャー』もそのような観点から生まれました。世の中で何が必要とされているか、あるいはこれから何が必要とされるか、そういった情報収集や分析にもデザイナーが関わり、開発に反映させました」と三澤は「FASTフィンガーランチャー」誕生の経緯について話します。



UIデザインでは「使い勝手」と使うことでもたらされる「経験」が最も大切

今回のUIデザインの中でも、この「FASTフィンガーランチャー」の注目度は高いといえます。ユーザーの各指に対応するアプリを割り当て、指紋認証によるスマートフォンのロック解除と同時にアプリを起動できます。ロック画面からキャッシュレス決済アプリを瞬時に立ち上げるように設定すれば、レジ前でのもたつきもなくせます。

「UIデザインでは、まずは『使い勝手』と、それによってもたらされる『経験』が最も大切だと思っています。例えば、ロック解除はスマートフォンという端末においては非常に利用頻度が高いものです。当たり前のように毎回やらなくてはいけないことを、一つひとつ見直し、進歩させることは意味があることだと考えています。
仮にロック解除からアプリの起動に毎回5秒かかっていた時間を削減できたとしたら、これから先何万人もの人が同じ体験をしたときに、その時間の総和は膨大なものになるかもしれません。小さな影響をたくさんの人に与えられることが、スマートフォンのデザインに関わる上でやりがいを感じる点だと思います」と三澤は語ります。



UIの理想型は「利用者に意識されない空気のような存在」であること

5G対応端末という先進性とテクノロジーを感じさせる意匠が特長の「arrows 5G F-51A」。スマートフォンの市場を見ると、米国Appleや韓国のSamsung、中国のXiaomiやOppo、Huaweiといった海外メーカーが上位を占めています。そのような中で、日本メーカーとしてのこだわりはあったのでしょうか。

「企画段階から日本市場におけるトレンドや時代のニーズから最適なソフトウェアを搭載しようという考えがありました」と三澤は説明します。日本でも近年、大容量の動画視聴や非常にメモリを消費するハイクオリティなゲームアプリが人気です。そこで、動画やゲームのような重いソフトウェアを使っても素早く快適に動作する機能を提供しようと考えられたのが「FAST Appドライブ」です。

「FAST Appドライブ」はあらかじめ登録しておいたアプリの素早い起動を実現。動作の重いゲームアプリは起動に時間がかかるため、この機能を使うことでユーザーはストレスなくアプリを使うことができます。

「FAST Appドライブ」は、登録したアプリにメモリを最適化し素早い起動を実現しています

「日本メーカーとしてのこだわりや市場ニーズの反映については、UIの作り込みよりも前の段階、企画やコンセプトの部分で取り込みました。一方、UIデザインについては、むしろ『日本らしさを反映しない』ような考え方をしました。というのもノンバーバルで伝わる、直感的に迷わず使えるというのがUIの理想形ですから、そこに日本的な何かを無理に入れることは考えていません。

UIデザインは、それが何を解決するものかを考えるところから始めます。いかに機能や価値を象徴する画面を作れるか、そして、そこから突飛さや派手さを取り除いて、いかにユーザーの生活に馴染ませることができるかが重要だと考えています。UIは最終的には『利用者に意識されない空気のような存在』であることが理想だと信じていますので、そんなUIを実現できるように心がけました」と三澤は想いを語ります。

ユーザーに新しい体験を提供するUIにこだわった「arrows 5G F-51A」。後編では三澤が「arrows 5G F-51A」のUIデザインで最もこだわった部分や苦労した点、そして、デザインの持つ重要性について紹介します。

デザインセンター三澤 建人


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