ノートPC LIFEBOOK CH Seriesがグッドデザイン賞を受賞~目指したのは、スマホのように気軽に使えるモバイル端末

ノートPC LIFEBOOK CH Seriesがグッドデザイン賞を受賞
目指したのは、スマホのように気軽に使えるモバイル端末



掲載日 2024年2月1日

富士通のノートPC LIFEBOOK CH Seriesが、2023年度のGOOD DESIGN AWARDを受賞しました。CHシリーズは、若い世代のユーザーにスマホのように毎日持ち歩いて使ってもらうことを目指して設計したPCで、このシリーズとしては初の受賞です。CHシリーズ開発のきっかけの一つは、数年後の未来を見据えて理想のデザインを考える「アドバンスプロジェクト」だったそうです。デザインを担当した2人に話を聞きました。

インタビュイープロフィール
エクスペリエンスデザイン部

  • 岡本 浩平
  • 岩田 永太郎

部署名・肩書は取材当時のものになります。

アドバンスプロジェクトでデザインした次世代のノートPC

——— CHシリーズ開発の経緯を教えてください。

デザインセンター 岡本

岡本: CHシリーズは2020年10月に初代モデルを販売し、今回受賞したのは2022年11月に販売開始した第2世代モデルです。このシリーズの発端の一つは、デザインセンターの「アドバンスプロジェクト」という少し先の未来の製品をデザインするプロジェクトです。
アドバンスプロジェクトでは、実現可能性よりも理想形に重きを置いてデザインします。自動車業界のコンセプトカーのような位置づけですね。ここで次世代のノートPCをデザインしました。先進的な技術を盛り込みつつ、薄くて軽く、目新しい色を使った「攻めた」あるいは「とんがった」デザインのノートPCです。

岩田: これまであまりターゲットとしていなかった、学生や若いビジネスパーソン世代に向けたノートPCを作ろうと企画した製品です。製品化が決まると、本腰を入れて調査をするところから始め、企画部と一緒に量産化するための現実的なデザインや機能に落とし込んでいきました。

岡本: LIFEBOOKには、最軽量で研ぎ澄まされたエクストリームモデルUHシリーズがありますが、これとは嗜好性が異なり、若者が生活の一部として使うようなPCを目指しました。これまでデザインセンターで培ったB2BやB2Cの知見を活かして、UHシリーズとほぼ同一サイズながら趣向の異なる製品を提供したいと考えました。
目指したのは、大学の新入生や新社会人の新生活にマッチするPCです。コロナ禍で、オフィスだけでなく自宅やカフェで仕事をする機会が増えたため、ターゲット層のライフスタイルや、行き交うシーンに調和する外観にも気を配りました。

——— 初代のモデルと何が変わったのですか?

岡本: ディスプレイの縦横比がこれまでの16:9から16:10になり、画面サイズは大きくなりましたが、筐体の大きさはほとんど変わっていません。カラーバリエーションは新色の青が加わり、ベージュゴールド、モカブラウン、クラウドブルーの3色展開になりました。これまで上位機種、下位機種、それぞれ2色の合計4色展開でしたが、上下機種共通の3色展開としたのは、お客様はこの方が選びやすいというデザインセンターからの提案です。
新色に関しては、軽快さや先進性を表し、インテリアやファッションの嗜好性の高い若い世代に受け入れてもらえる色を検討しました。さまざまなデータやトレンドカラーも意識して、青を採用しました。

岩田: こだわったのは、画面を開けたときに一色に見える「ノイズレスさ」です。コスト優先で、カラーバリエーション全てのキーボードを黒色で共通化するという考え方もありますが、この製品では各色で構成パーツ全てに同じ色相の色を用い、視覚的にノイズの少ない、コンテンツに集中できるデザインを目指しました。若い世代に好まれるシンプルな印象のデザインです。
とは言え、パッと見て一色に見えように仕上げることは実は非常に難しいのです。ノートPCの中にはアルミ、プラスチック、ゴムなどさまざまな材質が使われています。材質ごとの着色方法も塗装や印刷など処理が異なるため、一つの筐体の中にまとめ上げるのは大変でしたが、CMF(カラー、マテリアル、仕上げ)と言われる外観品質の専門デザイナーと協力して実現することができました。

また、従来は画面の下に配置されていたロゴを、作業時に視界に入りにくくなるようキーボード左上に移動させています。筐体の背面ロゴも、ノイズレスの観点から左下に小さく配置していますが、インテリアになじむだけでなく、ロゴが目立つことを嫌う人もいるのでは、と様々なユーザーの嗜好を考慮した結果、そのような仕立てにしています。

LIFEBOOK CH

開発チームと調整を重ね、堅牢性も兼ね備えた薄いPCを実現

——— そのほかの特長を教えてください

岩田: ヒンジ(本体と画面の間の蝶番)の取り付け位置も検証を重ね、画面がキーボード面より沈み込むよう開く仕様にしています。それにより画面周りがさらにすっきり見えるようになりました。また、キーボード面に多少傾斜が付くため、タイピングが行いやすくなる効果もあります。

岡本: 環境に配慮した取り組みも行っています。内蔵のスピーカーボックスに再生材を使用しているほか、パッケージについても、パーツ構造の見直し、印刷面積の削減、工程の削減などの工夫をしました。取扱説明書はほとんどをデジタルへ移行し、前機種比較で紙を90%削減しました。

岩田: キーストロークが深いのは、以前より富士通のPCがこだわっている点です。またキーの場所によって押す力を変える多段階押下圧を採用しており、長時間の使用でも疲れにくくなっています。

岡本: 軽薄短小を目指したため、技術者とはかなり議論しました。お互いに強いこだわりがあり、何度も話し合って試作して、落としどころを見つけました。例えばコネクター類は規格があるため、高さのあるHDMIとUSB Type-Aの端子を左右の奥に配置することで、本体の手前側を薄くすることができました。

デザインセンター 岩田

——— 新しいソフトウェアがプリインストールされているそうですね。

岩田: 快適なコミュニケーションを提供するテクノロジーとして、今回、AIメイクアップアプリが大変好評をいただいています。コロナ禍で、カメラを使ってオンライン会議をすることが多くなりました。このメイクアップアプリは、化粧をしてなくても登録しておいた設定でカメラが自動的に判断して、化粧をしているように顔を映すもので、日本人の顔立ちに合わせて作っています。リップの配色などにはデザインセンターの女性デザイナーの感性が反映されました。そのほかにも、万が一紛失してしまった際に役立つ、探し物トラッキング機能を搭載しています。

岡本: スマートフォンとの連携も強化しました。モビリティに優れたスマホと、画面が大きく作業しやすいPCを同時に使えば、より便利になります。画像を即座に転送したり、音楽の再生をPCとスマホで行き来したりという使い方を想定しています。他にも例えば、スマホの高性能カメラを使って現場の状況を映しながらPCでオンライン会議ということも可能です。現在、スマホとの連携機能はほかの機種にも展開していますが、先駆けとなったのがこのCHシリーズです。

ユーザーの「なんか良いね」の裏にあるデザイナーの尽力

——— グッドデザイン賞受賞おめでとうございます。

岩田: 真面目に作った製品が評価されて大変嬉しいです。CHシリーズのデザイン、機能のバランスの良さが評価につながったのではと考えています。

審査評
「ニューノーマル時代におけるGenZ/Millenials層のビジネスパーソンや学生に向けた、Windows 13inch モバイルノートPC。日常的に持ち運ぶのに相応しい軽量ボディとファッショナブルなカラーアソート、オンラインコミュニケーションを主体としたデジタルライフに適したソフト&UI等、時代に即した機能を搭載。」

岡本: 今回は、出願した4機種のPC全てが受賞できました。我々が製品に込めた狙いや思いが受け入れられたと思うと、とても喜ばしいですね。

岩田: 細部へのこだわりや小さな工夫を積み重ねて、多くの人に「なんか良いね」と自然と感じていただけるような製品になったと思います。PCはデザインする際の制約も多いのですが、その分やりがいも感じます。

——— 今回受賞したPCは、最初の「アドバンスプロジェクト」のデザインに近いのでしょうか。今後の展望などあれば教えてください。

岡本: 当初のデザインではもっと薄かったですね。ただ「持ち歩きたくなる薄さ・軽さで、常に自分の身近な道具として感じられるPC」という構想はある程度実現できたと思います。

岩田: 現時点での実現は難しくても、将来的には画面周りの縁をなくすなど、ノイズレスなデザインをさらに追求していきたいですね。まだまだやれることはあると思います。

岡本: 今できることにとらわれ過ぎず、対象の根底に潜む理想を忘れないようにデザインしたいです。モノだけにフォーカスするのではなく「それをユーザーがどう使って喜んでくれるか」という利用シーンを作ることを大事にしたいと考えています。

岩田: 近い将来には例えば、室内であればどこにいてもワイヤレスで常に充電されている環境が実現することでしょう。そうなればPCのあり方も変わってくると思います。固定概念にとらわれず先端技術もしっかりウォッチして、今までになかったような価値、体験を提供できるハード、ソフト、サービスデザインを一気通貫で取り組んでみたいです。

岡本: ワイヤレスイヤホンとオンライン会議が、我々の働き方やコミュニケーションの仕方を大きく変えました。このような世の中を変える製品・サービスに挑戦してみたいですね。また、単機能でも生活になじみ、なぜかいつも使ってしまうような製品・サービスを作ってみたいという思いもあります。ユーザーが、「特に理由はないけれどなんかいいな」と愛用してくれるようなものには、実はデザイナーのこだわりが詰まっているかもしれません。さらには、製品が使用された後の影響についてまで今まで以上に長いスパンで配慮しつつ、デジタルとフィジカルが相互に価値を高め合うプロダクトやサービスをデザインしたいですね。

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