14インチで世界最軽量のノートPC、LIFEBOOK UH Seriesが4回連続でグッドデザイン賞を受賞

14インチで世界最軽量のノートPC
LIFEBOOK UH Seriesが4回連続でグッドデザイン賞を受賞



掲載日 2023年12月18日

富士通のノートPC、LIFEBOOK UH Seriesが、2023年度のGOOD DESIGN AWARDを受賞しました。UHシリーズとしては4回連続の快挙です。審査員が手にした時に思わず「軽い」と声が出てしまったという世界最軽量に加え、14インチ画面、豊富なI/O、ハイストローク/フルサイズのキーボードといった高いスペックを備えています。今回受賞した第4世代は、カラーバリエーションも一新し、ディテールまで徹底的にこだわり抜いたノートPCです。デザインを担当した2人に話を聞きました。

インタビュイープロフィール
エクスペリエンスデザイン部

  • 山下 慶太
  • 堀 志織

部署名・肩書は取材当時のものになります。

軽い筐体に最大限の使いやすさを追求したデザイン

——— このPCを手に取ると、持った手が浮き上がってしまうほど軽いですね。

LIFEBOOK UH

山下: 一番軽いモデルは、14インチ画面のノートPCとしては世界最軽量の689グラムで、持ち出すことをためらわせない軽さです。UHシリーズのコンセプトは、Minimum & Maximum。今年発売されたのは4世代目ですが、コンセプトの基本は当初から変わりません。余分なものは削ぎ落としつつ、最大限に使い易さを追求した製品で、ユーザビリティに一切の妥協のない製品となりました。

堀: 単体での作業性を向上させるために、UHシリーズとしては初の14インチ画面が採用されました。本体サイズは13インチの先代モデルとほぼ同等のまま、液晶周りのフレームを限りなく細くし、画面占有率は93%となりました。市場の反応も良かったですね。

山下: 数年前から働き方改革が進み、コロナ禍で自由な働き方が加速しました。ハイブリッドワークが普及し様々な場所に移動して働き、出先ではノートPCのみで作業することが増えています。その中でモバイルノートPCが解決すべき課題を「軽量と感性品質の両立」と「あらゆる場所で作業性を最大化するユーザビリティの追求」と捉え、デザインしました。

  • ※感性品質 :
    品質特性のうち、人間の感性によって評価される品質特性
デザインセンター 山下

——— 「あらゆる場所で作業性を最大化する」とはどういうことでしょうか?

山下: トータルな視点でユーザーを身軽にすることです。いくら本体が軽くなっても、これ1台で作業できず変換コネクタなどの荷物が増えては本末転倒です。HDMI、USB3.2 Type-A、Type-C(各2口)、MicroSDカード、LANなどモバイルユーザーの使い勝手を考慮したI/O端子を薄い筐体に収めるために、開発者と共に細かい努力を重ねました。

——— そのほかのデザインの工夫を教えてください。

山下: 軽量化によって得られるベネフィットがある一方で、ユーザビリティの細かなマイナスな部分も出てきます。これらを見逃さず改善していくことで、本当に使い易いノートPCの実現を目指しました。

堀: 例えば、画面の開けにくさの問題です。装置が軽いために、開けるときにどうしても本体が浮きあがり滑ってしまうのです。しかし、指掛かりを増やしたり、ヒンジ(本体と画面の間の蝶番)を弱くしたりするのではなく、原因を突き止め最適な改善を実施しました。具体的には、底面のゴム足の位置や形状を工夫することで、本体の軽さと開けやすさを両立させました。

山下: ヒンジは今回から1本の長い形状のものを採用しました。このことで排気性能を担保しつつ、機械然としたたたずまいにつながる排気口を隠し、見た目のノイズを減らしています。お客様はわざわざ意見をおっしゃらないですが、感性品質を敏感に察知していると思っています。感性品質を向上させるためにどこから見ても美しい装置を目指しました。

堀: 天面の形状も工夫しています。奥行寸法を縮め、コンパクトな筐体にするために、やや厚い液晶を採用していますが、それを感じさせないように外側に向け緩やかにカーブしています。店頭では画面を開けて展示されることが多いので、画面の薄さは重要です。軽やかさや先進性をアピールするため、またお客様が無意識に感じる気持ち良さを追求して、あらゆるディテールに対して丁寧な調整をしました。

——— 堅牢性についてはいかがでしょうか?

山下: 薄く軽やかに感じることと同様に、堅牢性も重要です。設計者が頑張っているのはもちろん、デザイナーが提案した外観形状も堅牢性の実現を支えています。例えば本体側面コネクタエリアの深い垂直面は、軽さと強さを両立する構造として大きな役割を果たしています。持ち歩くPCに対して過度にデリケートな扱いを求めることなく、使いやすい道具としての仕立てを重視しました。

堀: 環境に配慮した取り組みも積極的に実施しています。例えば内蔵スピーカーボックスには海洋プラスチックを使用しています。製品本体だけでなく、梱包材のプラスチック使用量も削減し、前機種比で約86%となりました。

山下: 大量生産される製品では、軽量化自体が原料を減らすことになりサステナブルにつながります。また部品種別の見直しと削減により、廃棄部品を大幅に抑制しました。取扱説明書も大半をオンラインで提供して紙を減らし、紙の使用量は前機種の半分以下になっています。

カラーバリエーションを一新し、モダンでシンプルな印象に

——— 今回は、カラーバリエーションを一新したそうですね。

山下: 新たにフロストグレーというカラーを採用しました。ノートPCには高性能感や強い個性よりも、様々な環境に馴染み、家でも外出先でも調和する仕立てが重要だと考え、より普遍的な存在感を持つ色であるグレーを選択しました。

堀: PCの存在意義の変化を捉え、若者の間で見られるシンプルなライフスタイルや、自己主張と共感のバランスを重視する価値観を考慮した結果、代々の黒、白、赤の3色から、黒(ピクトブラック)、白(シルバーホワイト)、グレー(フロストグレー)というモノクロのカラーバリエーションに変更しました。モノクロに統一することで、UHシリーズ全体をモダンでシンプルな印象に作り上げています。

デザインセンター 堀

山下: 新色のグレーは特に慎重に選びました。グレーにも様々な色合いがあり、青っぽくすると昔の事務機器のようなイメージになるので、暖色系で高級感のあるグレーを探しました。何種類も試作品を作って検討しました。

——— こういった金属感のない、マットな色合いのグレーのノートPCはあまり見たことがありません。

堀: グレーはスタンダードな色ではなく、FMVとしても初めてトライする色でした。そのため、一部に「赤からグレーに変えて、ターゲット層に受け入れられるのか」と不安視する声もありました。デザイナーとして自信を持って薦めたことと社内の若手の意見が後押しして採用されたという経緯があります。

山下: 幸い新色のフロストグレーを含め、第4世代の売れ行きが良く、市場のニーズやトレンドをうまく取り入れることに成功したと捉えています。

堀: 家電量販店のバイヤー様との商談に同席し、新色のフロストグレーをプレゼンしたこともあります。フロストグレーがターゲットとしているのは若年層です。私自身が、魅力を最大限伝えることで採用に貢献できたと思います。モノづくりだけでなく、商談に参加して直接伝える重要さを認識しました。

山下: ほかに、あえて主張を抑えたロゴ、キーボードのフォントサイズやコントラスト、コネクタアイコンの色など、絶妙にチューニングを行っています。これらの細かな積み重ねが、洗練された仕上がりにつながったと思います。

デザインの意図が伝わったことが嬉しい

——— グッドデザイン賞受賞おめでとうございます。

山下: UHシリーズは代々受賞しているため、プレッシャーもあり、受賞を聞いたときにはチームみんなで喜びました。そして審査員のコメントを読んで、ようやくここまで来ることができた、デザインの意図が伝わったと思いましたね。

審査評

「とかく軽さという数値だけを追い求めたものは、それと引き換えに質感が悪くなるなど、どこか破綻してしまう事が多いが、本機はそのようなネガティブなところが見つからない。本体質感の高さ、キーボードの堅牢な押し心地、フロントの控えめなロゴ、軽量機でありながら充分なポート類の実装など全体から、使うユーザーへの深い眼差しを感じさせる。」

(一部コメント抜粋)

堀: デザインを学んでいた大学の恩師から「名前が載っているね」と連絡をいただき嬉しかったです。フラッグシップモデルを担当し賞をもらったことは、デザイナーとしてのマイルストーンになると思います。これまでは欧州向けのPCを担当していたので、自分がデザインした機種が店頭で見られるのが嬉しいです。家族や友人にも見てもらえます。

山下: 「グッドデザイン賞を受賞した世界最軽量のPC」としてニュースにもなるので、やりがいを感じます。UHを担当するのはこれが3機種目ですが、今回は特にやり切ったと思います。胸を張って「めっちゃええの出たで!」と家族に言えるような製品です。

——— 最後に、お二人が今後取り組みたいことについて教えてください。

山下: 毎回、これ以上良いものはできない装置を目指して作っているので、また次のことを考えるのは大変です。まずは今回の装置を振り返り、技術動向やトレンドを踏まえながら次について考えたいと思います。PCは、CPUやOSなど他社の部品を組み合わせて完成します。それが難しくも面白いところですね。

堀: 例えば塗装に使う溶剤の規制で、使えない塗料が出てきたりそれによってトレンドが変わったりすることもあります。またコロナを経てPCに求められる価値も変化したように、今後も様々な時流でPCへのニーズが突然変化するかもしれません。そんな変化を柔軟に受け止め、PCに限らず、今本当に求められている価値は何かを常に問い続けられるデザイナーでありたいです。

山下: コロナ禍でテレワークが増え、ワークスタイルの変化が暮らしに大きな価値をもたらすことに気づきました。それに少しでも貢献できていることが嬉しいですし、さらなる可能性も感じています。PCだけにとらわれず、人にフォーカスして、日々アンテナを立てて観察しつつ、働き方を自由にするという大きな視点でデザイナーとして貢献できることを考えていきたいです。

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