宮入: 実際に書いていただいた作品は、ブラックユーモアというかディストピアの気配が微かにありつつも、それが行き過ぎにならない絶妙なバランスに仕上がっていて、まさにこちらが期待したとおりでした。
前島: 私たちはよく、新しいサービスを検討する際に、未来を描くシナリオを4コマ形式で表現するのですが、そのフレームワークを使うと無条件に「明るい未来」になりがちなことに疑問を感じていたんです。未来は明るいに越したことはないけど、それだけじゃないはずだよね……と。ショートショートは、ユートピアとディストピア、その両面を併せ持った世界を描くことができるし、しかも4コマとは違い物語の中に自分の経験を重ねられる余地があるせいか、内容がすごく頭に残るし、誰かと語り合いたくなる。すごい表現方法だと思いました。
宮入: 私も「文字の力」を再認識しました。文字を追いかけるからこそ、感情移入もできるし、そこに書かれたディテールを追うこともできる。それに、日常会話では話題にしにくいセンシティブなテーマも、「物語の感想」としてならコメントしやすいですしね。対話の中で、自分の価値観を自然に発信することができる。実際、社内でワークショップをやったときに、メンバーの様子からそんなことを感じました。
田丸: お2人からは、社内の方々の声も共有いただいて、作品がどんな風に届いているのかが垣間見えてとても嬉しかったです。書き手として、ふだんは作品が出来上がった後のプロセスに直接関わることがそんなに多くはありませんので。
前島: そういえば、社内で定期開催されているオンラインイベントで、宮入さんが作品の朗読もしました! その時も、リアルタイムでの反響がすごく大きかったです。
田丸: ありがとうございます。嬉しいです。実は、ショートショートと朗読はとても相性がいいんです。全部読んでも10~20分ほどだし、想像力に訴えかける文学なので、ちょっとした楽器演奏や効果音と組み合わせた演出もしやすい。僕の作品も、朗読のイベントでよく取り上げていただいています。