ふヘンなみらい 第1回 未来構想に新風を!ヒトの、変わらないもの、変わるものについて考えるプロジェクト

ふヘンなみらい 第1回
未来構想に新風を!ヒトの、変わらないもの、
変わるものについて考えるプロジェクト



掲載日 2021年11月17日

「ふヘンなみらい」。ちょっとユニークな名称が付けられたこのプロジェクトは、日頃、サービスデザインを担当する富士通デザインセンターのメンバーが、「ヒトの、変わらないもの、変わるものについて考える」ため、2020年に始動させた活動です。ショートショートの創作という手法を用いて、従来のデザイン思考のフレームワークでは実現し得なかった、深い対話や自由な発想の機会を生み出しています。活動を進めるにあたって、メンバーが協力を仰いだのが、現代ショートショートの旗手として知られるショートショート作家の田丸雅智さん。プロジェクトを象徴する作品をすでに3本執筆いただいているほか、社内向けワークショップの運営面でも助言をいただきました。
こちらの記事では、「ふヘンなみらい」立ち上げメンバーである前島朱里、宮入麻紀子のコメントも交えながら、取り組みの背景やコンセプト、これまでの活動の概要をご紹介します。



インタビュイープロフィール

  • 田丸 雅智さん :
    1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。ショートショートの書き方講座の内容は、2020年度から小学4年生の国語教科書(教育出版)に採用。2021年度からは中学1年生の国語教科書(教育出版)に小説作品が掲載。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。メディア出演に情熱大陸、SWITCHインタビュー達人達など多数。
    田丸雅智 公式サイト:http://masatomotamaru.com/
  • 前島 朱里 : 富士通株式会社 デザインセンター フロントデザイン部
  • 宮入 麻紀子 : 富士通株式会社 デザインセンター フロントデザイン部


「100%明るい」、ではない未来の描き方


富士通デザインセンターは、パソコンやスマートフォンといったプロダクトのデザインはもとより、新たなユーザー体験を創出するためのサービスデザインにも日頃から取り組んでいます。前島と宮入は、サービスデザインの知見を強みに、様々なお客様と共に新たなサービス創出を行うチームのメンバーです。そんな2人の中には、ある時から、自分たちが従来とってきたアプローチへの疑問が芽生え始めたといいます。サービス創出のために世の中のトレンドや変化にばかり着目してきたけれど、それだと「先端」を作り出すことはできても、「まだ誰も考えていない最先端」を創造することはできていないのではないか……。こうして2人は、想像の「出発点」を変える新たなアプローチを確立するべく、立ち上がったのです。

「変わり続けるものがある一方で、時が経っても変わることのない、人の本質的な感情や価値観があるはず。人にとっての普遍的なものや、不変なものも加味しながら、未来を描いてみたい。そんな想いがプロジェクトを始める動機になっています」(前島)「最先端を追い続ければ、その先には明るい未来が待っている――という量産型シナリオとは一線を画するような手法を目指したいと考えました。最先端を追求することで、もしかしたら待ち受けているかもしれないマイナス面も正直に表現しつつ、皆がそれについて深く考えるきっかけになるものを描きたいと考えていました」(宮入)

デザインセンター 宮入麻紀子


普遍なもの・不変なものに目を留める


田丸さんへの執筆の依頼に先立ち、前島と宮入が手がけたのは、プロジェクトのベースとなるフレーム作り。特に、時を経ても変わらないもの=「ふヘン」な要素を問い直すために、自然科学や工学、人文科学、社会科学といった学問の諸分野に目を向け、最終的に8つのファクターとして整理し直しました。

「ふヘン」な視点を持つための8つのファクター

さらに、〈変わらないもの〉と〈変わるもの(=テクノロジー、環境/気候変動、社会、トレンド)〉が互いに作用し合う中で、これからの社会の「最先端」がどのようなものになるかを検討するアプローチをとることとし、アイデアの種をまとめていったのです。

〈変わらないもの〉と〈変わるもの〉が作用し合う題材を検討し、リストアップした

こうして言語化したアイデアの種=ショートショートの題材をもとに、田丸さんとディスカッションを実施。その後、田丸さんにショートショートの設計図となるプロットを数本作成していただいた上で、本格的な執筆へ。その中から最終的に3つの作品が誕生しました。

  • 田丸さんによるショートショート作品は、本記事末尾よりPDF形式でご覧いただけます。


創作活動を通して生まれる対話の価値


ショートショート3作品が完成した後は、富士通デザインセンターのメンバー向けに、ショートショートを執筆するワークショップを開催。田丸さんを講師に迎え、20名が参加しました。このワークショップの肝は、各人が自由に執筆した後に、その作品を互いに読み解き、対話する時間を持つこと。そのプロセスを通して、参加者は、自分の中にある「ふヘン」を客観視すると共に、他のメンバーにとっての「ふヘン」に触れることができ、未来を考えるうえで気づきを得ることができるのです。

さらにその後は、ワークショップの参加対象を、デザインセンター以外の組織のメンバーにも拡大。初回の感触も踏まえ、執筆前にメンバー同士が会話してアイデアを出し合ったり、執筆のテーマとなるユニークなキーワードを検討する時間を設けたりするなど、プログラムに工夫を加えながら回数を重ねていきました。

その後は、デザインセンターの中からお客様と一緒にワークショップを実施するメンバーが現れるなど、「ふヘンなみらい」プロジェクトがきっかけで生まれたショートショート創作の試みは、富士通社内で着実に広がりつつあります。

デザインセンター内でのワークショップの様子


「みらい」への貢献を目指して


プロジェクトの今後の活動については、ワークショップの継続的な開催はもちろんのこと、SFプロトタイピングのように、ショートショートとは別の創作手法を用いて未来を描く試みを実践している企業とのコラボレーションも検討中。ただ、最大の目標はやはり、「この取り組みから生まれたアイデアの種を、実際のプロダクトやサービスとして結実させることです」(前島)との言葉通り、「ふヘンなみらい」プロジェクト発のソリューションを誕生させること。これまでの富士通にない新たなアプローチで、より良い「みらい」の創造に貢献するべく、チャレンジは続きます。

デザインセンタ― 前島朱里

『 会社の汚染バスターズ 』

文・田丸 雅智 イラスト・カヤヒロヤ

打ち合わせの際に、前島さんと宮入さんから最も強い思い入れを感じた題材です。ビジネスパーソンなら誰でも多かれ少なかれ思い当たる節がありそうな、この題材。本当にこういったものがあればいいなという気持ちをより強くこめて書きました。(田丸さん)

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