田丸: ショートショートというジャンルを広く知ってもらいたい、という想いが動機になっています。もともと僕は、本を読むのも作文を書くのも苦手な子どもだったのですが、ショートショートのおかげで読書の面白さに目覚め、嫌いだった作文も好きになり、それが高じてショートショートの書き手になりました。でも、日本でこのジャンルが人気を集めていたのはずいぶん昔で、新しい書き手も読み手も育ちにくい状況に陥っていました。ショートショートというジャンルが好きだからこそ、もっと多くの人に手にとってほしいし、できることなら読者の中から次世代の書き手が育ってほしい。それが僕の願いです。そのため、書き方講座のノウハウはすべてオープンにして、誰でも実践できるようにしています。
前島: 精力的に活動されているのはそういった理由からだったんですね。今のお話でひとつ思い出しました。私には小学2年生の子どもがいるのですが、絵本の読み聞かせだとすぐ飽きてしまうのに、田丸さんのショートショート作品集『海色の壜』を読み聞かせてみたら、続きをせがまれました。それくらい、面白かったみたいで。ショートショートは、小さな子どもにも響く表現なんですね。
田丸: いや~、それはすごく嬉しいですね。
宮入: 学校で書き方講座をされていて、子どもたちの反応や反響はいかがですか?
田丸: かつての僕のように、普段は作文の筆が全然進まない子が、ショートショート講座では楽しく最後まで書けた、というお話を先生から伺うことが多いですね。あとは、講座の終了後には図書室のショートショート作品の貸し出しが伸びるとか(笑)。面白いのは、小学生の場合は例えば消しゴムや鉛筆、テレビなどの身近なものを題材にした作品がよく生まれるのですが、仮に題材は同じでも、アイデアやストーリーになるとそれぞれ違う作品になるんですよね。だから、数え切れないくらいの回数を重ねても、まったく飽きることがありませんし、これからもどんなお話と出会えるだろうかと想像するとワクワクします。