デザイン効果の定量化宣言

デザイン効果の定量化宣言

~財務/非財務資本に対するデザイン効果の測定に関する研究を開始します~



掲載日 2022年8月29日

近年、企業におけるデザイン活用の期待が高まっています。
しかし、デザインの効果はこれまで定性的な表現に留まることが多く、何をどの程度向上させているのか、最終的に企業価値を向上できているのか、定量的な納得感が不十分な状態といえます。このため重要性に比して、デザインへの投資や、ビジネスの中心でのデザイン活用が進まず、日本企業のデザイン経営レベルが伸び悩んでいると考えられます。

私たち富士通デザインセンターはこの状況を打破すべく、デザイン効果がどのように企業価値向上に結び付いているのかのストーリーの明確化と、その効果を定量的に測定可能にするための指標設計を目的とした研究を開始します。
本研究を通し、デザイナーは自身のビジネスインパクトを他職種に明瞭に語れるようになり、経営層はデザインへの投資のバランス感覚をつかめるようになることで、デザイン経営のより一層の促進・向上を目指します。


測定対象となるデザインセンターの取り組み

インハウスデザイン組織である富士通デザインセンターにおいて、測定対象となる取り組みは大きく下記の4つです。


①:日々の業務を通じた全社事業への貢献
お客様へのデザインサービスの提供や、富士通内での商品・サービスの企画・開発におけるデザイン、提案活動におけるデザインなど
②:中長期的な時間軸での全社事業への貢献
富士通内におけるデザイン思考浸透などの制度・カルチャー変革、プレゼンス向上につながる発信活動など
③:デザインセンターの組織力向上
個々のデザイナーのスキル向上、デザイナーとしての成長を促す環境整備、誰もが使用可能なナレッジ整備など
④:デザインを通じた社会への貢献
ナレッジ共有によるデザイン業界水準の底上げ、社会課題解決による市場開拓など


本研究の特徴と私たちが乗り越えていくこと

上の4つの取り組みにおいて、①は財務指標(売上や案件数など)向上による富士通事業への直接的な貢献を通じて、②③はそれぞれ富士通全体とデザインセンターの非財務資本(主に人的資本と知的資本)の向上を通じて、④は社会やインダストリー全体の牽引という母数の拡大を通じて、最終的に富士通の企業価値向上に貢献していると仮説を立てています。
本研究では、各々の取り組みがどのような定量指標で測定できうるのか、それらの指標がどのように連鎖して企業価値につながるのかを、可能な限り飛躍のないストーリーで描くことを試みます。

また、ストーリーを描くだけでは終わらせず、データを収集分析し相関関係を明らかにしていくことにも挑戦します。各指標のデータを蓄積していくことで、例えば何らかの非財務資本をどの程度向上させることが、何年後にどの程度のインパクトを企業価値にもたらすのかを統計的に明らかにすることを目標とします。
これによってデザイン効果を誰にでも納得できる形で指標化していきます。



デザイン効果の定量化を、デザイン業界のトレンドとする

本研究の成果は、富士通内でのデザインセンターのビジネスへの貢献説明に用いるだけでなく、ESGやSDGsを絡めた企業の統合報告書のようなイメージでまとめ、社外にも発信していきます。本研究は富士通としての活動ですが、類似の研究や指標化を多くのデザイン組織が実施することで、デザイン業界のプレゼンスを向上させ、経営層などから適切な投資を引き出し、デザイナーがより活躍できる環境を醸成できると考えています。指標自体は各デザイン組織の取り組み内容や取得可能なデータ次第となりますが、各企業が積極的に社外公開していくことで、効果を定量的に表現していく慣習をデザイン業界に根付かせることが必要です。



今後の予定

本年度中に企業価値に至る指標のストーリーを明らかにし、現時点で取得可能なデータで分析を実施します。 その後、新規データ取得と並行してデータ蓄積を継続し、データによる相関関係の有意性や係数の分析を実施していきます。

本記事や今後の私たちの研究成果公開を見て、共感いただけるインハウスデザイン組織やデザインファームの方々は是非協働をお願いします。



デザインセンタ― 戦略企画部

デザインセンタ― 戦略企画部

  • 藤村 拓自
  • 松井 晶子
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