未来を「リ・デザイン」し、ありたい姿を実装し続ける 新型コロナウイルスに挑む「つくれるコンサル」チームの強みとは【前編】

未来を「リ・デザイン」し、ありたい姿を実装し続ける
新型コロナウイルスに挑む「つくれるコンサル」チームの強みとは【前編】



掲載日 2022年1月25日

「私たちは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていきます。」
2021年に富士通が発表したこのパーパスでは、私たち富士通の企業活動は経済的な成功に加え、社会の幸福の増大に貢献すべきだと述べられています。
ともすれば相反する概念として語られる「ビジネス」と「社会の幸福」。しかし、富士通のソーシャルデザイン事業本部デジタルタッチポイント事業部の生川 慎二氏は10年以上前から「ビジネスで社会課題を解決する」ことに取り組んできました。

その生川が2020年3月に立ち上げた「新型コロナウイルス感染症対策チーム」では、健康観察チャット「N-CHAT」をはじめ国や自治体に未知なる感染症の対策システムや地域医療を守るためのスマホアプリを感染症専門医と開発し、60を超える感染症現場の問題解決に貢献してきました。
「N-CHAT」は、2020年5月の長崎クルーズ船内クラスター対応において、状況把握の的確さと疾病災害の抱える複合的な課題への対策が評価され、2021年グッドデザイン賞を受賞しました。また、政府提言の症候群サーベイランスや多数の医療・介護・学校・企業等での採用など、大きな実績を残しています。

前編では「ビジネスで社会課題を解決する」ことを目指した経緯、また、それを実現するためのユニークなチーミングについてご紹介します。

前編のポイント

  • 社会課題解決は長丁場。活動を継続するため「ビジネス」として成立させる必要がある。
  • 「未知のモデル」は「破壊と創造」から生まれる。デザイン思考のアプローチが有効。
  • メンバーの才能を引き出すチーミングで、「つくれるコンサル」としての優位性を確立。


インタビュイープロフィール

  • 生川 慎二:ソーシャルデザイン事業本部 デジタルタッチポイント事業部 第2ソリューション部
  • 「つくれるコンサル」チームメンバー
    ソーシャルデザイン事業本部 デジタルタッチポイント事業部 第2ソリューション部:黒瀬 雄三、松山 博至、菱田 貴史、高木 朝加
    デザインセンター ビジネスデザイン部:小黒 興太郎、小田 彩花


「ビジネスで社会課題解決」を志した原体験

生川は2017年に富士通が発表したAIチャットボット「CHORDSHIP」事業を、社内ベンチャー方式で立ち上げた経歴の持ち主。事業企画の根底にあったのは、「離れていても人と人がつながることができる社会デザイン」というコンセプトでした。

そのコンセプトは、2011年3月、東日本大震災発生後に被災地を訪れたときに生まれた課題意識に端を発します。

避難生活を送る多くの被災者、在宅医療・介護の情報連携が不足し困惑する医療従事者、避難者全体の6割以上を占める高齢者、これらは被災地特有のものばかりではなく、未来の日本を襲う社会課題の縮図でもありました。

東日本大震災発生後に被災地の被害の様子

同時に、被災地で社会課題に取り組む難しさも目の当たりにしました。
「意欲的に課題解決に取り組むNPOが、復興予算の終了とともにストップした事例をいくつも見ました。災害復興に関わらず、社会課題は総じて解決が困難で、十数年、数十年のスパンで向き合う必要があります。だからこそ、経済的なサステナビリティを自ら担保し、ビジネスの枠組みの中で、社会課題に挑む必要があると考えるようになりました」(生川)。

ソーシャルデザイン事業本部 生川


そこにあるべき「未知なるモデル」は破壊と創造から生まれる

「生川さんは『どうしたらできるか』という言葉をよく使います。はじめに『未来のありたい姿』があるからこそ、たとえ困難に直面しても、それを突破するためのアクションにすぐ移ることができるのだと思います」。
これは、生川のチームでプロデューサーとして活躍する黒瀬 雄三氏の言葉です。
さらに、「ありたい姿」の実現に必要なのは「破壊と創造」だと生川は説明します。「イノベーションやデジタライゼーション、DXと、様々な表現が用いられてきましたが、『破壊と創造により未知のモデルを形にしていく』点では、すべて同じだと思っています。その際、大切なのは『未来のありたい姿から考える』ことです」(生川)。

現状分析を起点とするAs-Is/To-Be型で発想する場合、結果は「改善策」に留まりがちです。ソリューションのブラッシュアップには通用しても、未知のモデルを生み出すアプローチとしては適切ではないと言います。一方生川のチームが採用する「アイデアライゼーション・アプローチ」では、ありたい姿を実現するためのアイデアについて、検証を重ねて実現する、リーンスタートアップの手法を採用しています。

「ありたい姿」から目を背けず、破壊を恐れない、創造をためらわない、生川のスタンスとデザイン思考の親和性の高さは当然のことでした。



走りながらプロトを回す「つくれるコンサル」

社会課題の解決をビジネスの枠組みで実現するには、新市場開拓やチーミング、さらにマネタイズまでカバーできるイントレプレナー(社内起業家)の存在が不可欠です。

「まず0から1を生みださないと何も始まりませんからね。大企業の中では、イントレプレナー気質の人は育ちにくいと言われますが、資金繰りや行政との連携など、ベンチャーに比べて圧倒的に有利なのは間違いない。大企業ならではの強みを活かさない手はないと思っています」(生川)。

そして、イントレプレナーである生川が、自身のチームに掲げているのが「つくれるコンサル」。
フロント対応を行いながら顧客の期待値コントロールに手腕を発揮する「プロデューサー」、高速アジャイル開発の要と言うべきUI/UXデザインを担当する「スプリンター」、新しい技術の検証や実装方式の検討を引き受ける「CTO(“CHORDSHIP” Technical Officer)」、チームを構成するこれらのポジションすべてを「つくれるコンサル」と定義しています。

「なにかを『つくれる』能力は、他のコンサルティング会社にはない富士通の強みです。そもそも、未知のモデルは運用の中で成長し続けていくものなので、高速で『つくれる』必要がある。『つくれる』上に、『未来のありたい姿』も描けるコンサル。我々はそんな立ち位置を自認しています」(生川)。



自走自立型チームを育む「モチベーションマネジメント」

「つくれるコンサル」チームの特徴は、各ポジションが重なり合いつつ存在するフラットな組織であること。プロジェクトマネージャー(PM)をトップに置く一般的な受託開発プロジェクトの組織構造とは大きく異なります。

垂直型の指示系統ではない分、個々のメンバーには、より主体的な判断やアクションが求められます。そんなチームを運営する上で、生川が重視していることが3点あります。

1点目は、「才能ファースト」で個々のメンバーを尊重し、責任のある仕事を任せること。 現在入社2年目の菱田 貴史氏は、学生時代のオンライン講師や水泳競技経験を買われ、入社1年目にして水泳競技大会向けプロジェクトのプロデューサーに大抜擢。「配属4ヵ月目だったのでとても驚きましたが、プロデューサー志望を公言していたのでチャンスをいただいたのだと思います。」(菱田)。

同じく現在入社3年目の高木 朝加は、UI/UXを担当するスプリンターでありながら、『N-CHAT』の教育用動画ではナレーターを務めています。「一度試してみたら、『声優みたいだね!』と生川さんが褒めてくださって、それがそのまま県庁のサイトに載り、国の感染症対策専門会議を通じて紹介もされました」(高木)。

2点目は、プロジェクトのビジョンをメンバー全員が共有できる状態を作ること。 メンバーのポジションにかかわらず、各々がプロジェクトの戦略を踏まえたアクションを取れるようにするためです。

そして3点目は、メンバーのモチベーションに絶えず働きかけること。 「チームのKPIとして、メンバーのモチベーションを最重要視しています。いいアウトプットはとことん皆で褒めるし、それが世に出た時はその功績を称える。難しい課題を突破していくことが面白いと感じられる環境だと、才能を存分に発揮して活躍してくれるようになります」(生川)。

メンバーの大多数が平成生まれの「つくれるコンサルチーム」の躍動の理由がここにあります。



プロジェクトメンバー

黒瀬 雄三
つくれるコンサル プロデユーサー。2019年富士通コンベンションにおいて、つくれるコンサル理論で最優秀論文賞と最優秀発表賞を受賞。つくれるコンサルとして金融・流通・公共のデジタライゼーションプロジェクトを数多く手掛ける。

黒瀬 雄三

高木 朝加
つくれるコンサル スプリンター。CHORDSHIP開発からフロント対応へ志願。長崎県健康観察チャットのキャラクター「まもちゃん」の声優を務める。変化スピードが速いワクチン接種予約管理システムのUI開発を担当。

高木 朝加

菱田 貴史
つくれるコンサル プロデューサー。学生時代から志願してCHORDSHIPプロジェクトへ。入社1年目(配属後4ケ月)で、日本水泳連盟学生委員会九州支部様健康観察チャット/リーダーに抜擢。コロナ感染症対策として、B.LEAGUEや病院・介護・企業などの健康観察チャットも推進。

菱田 貴史

松山 博至
つくれるコンサル CTO。金融出身のデジタルエンジニア。多数企業よりヘッドハンティングのお誘いがある程の高いスキルを持つ。メガクラウド運用・インターネット接続・セキュリティ等のアーキ設計から高速実装まで“瞬時”に方向性を示す。

松山 博至

小黒 興太郎
デザイナー。新型コロナ感染症対策プロジェクトへデザイナーとして参加。社会モデルのコンセプトメイクや動画によるビジョン訴求(スポーツ分野、コロナ感染症対策分野)を担当。つくれるコンサルと共にUX起点で、ワクチン接種後社会のソーシャルデザインに取り組む

小黒 興太郎

小田 彩花
デザイナー。インターン時代からCHORDSHIPプロジェクトへ参画。つくれるコンサルが仕掛ける未知なるモデルの初期デザインの大半を手掛ける。「エンドユーザーが本当に負荷なく使えるサービス」に向けてUI/UX起点でのサービス設計やアバターデザインを行う。

小田 彩花

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