大手スーパーの事例から見る、リテールDXを加速させる秘訣とは

近年、リテール市場には、消費者嗜好の多様化、デジタル化の進展、そして新型コロナウイルスの感染拡大などによる様々な変化が起きています。その中で、今、消費者や従業員に求められているものは何か。2020年10月にオンラインで開催した「Fujitsu ActivateNow」の講演「リテールビジネスのデジタルシフトに向けた富士通のソリューション展開」から、関東圏にカスミ、マルエツ、マックスバリュ関東3社のスーパーマーケットを展開するU.S.M.H様の事例をもとに、ニューノーマル時代の新たなリテールソリューションについて探ります。

<目次>

  • アジャイル開発で重要な3つのポイント
  • 開発を成功に導くシステムアーキテクチャ
  • 「買い物の楽しさ」を感じてもらえるサービスを
  • リテールビジネスのデジタルシフトを支援するBrainforceとは

ニューノーマルにおけるリテール市場の変化とこれからのリテールDXとは

変革期の中のリテール市場において、富士通は、消費者体験(CX)と従業員体験(EX)の両方をバランス良く向上させるソリューションが重要であると考えています。消費者へは安全安心を担保しながら、利便性を高め、購買意欲を刺激し、従業員に対しては、働きたくなる職場の実現、継続的な成長を目指したビジネスの仕組みの創出です。

富士通では今後のリテールDXソリューションの方向性として、2段階の展開を考えています。1つは、お客様の事業の継続を目的とした「For Stability」、もう1つは、お客様のデジタルシフトを支援する「For Growth」です。

ここからは、ソリューション基盤を企画~検討~実証~開発と共に推進してきたユナイテッドスーパーマーケットホールディングス株式会社(以下U.S.M.H)様のDXについて、同社デジタル本部デジタル開発担当部長の角野泰次様にお話しいただきます。

デジタルシフトで「わくわくする買い物体験」を

U.S.M.Hのデジタルトランスフォーメーション(DX)のベースには、「ワクワクする買い物体験を創造したい」という思いがあり、そのためのさまざまなサービスを開発しています。

以前は「O2O(Online To Offline)」という考え方が主流でした。オンラインは情報への接触手段であり、実際の購買はオフラインでという、オンラインからオフラインへの「一方通行」だったわけです。

これに対し、現在、私たちは、「OMO(Online Merges with Offline」」という考え方を持っています。「オンライン」と「オフライン」を互いに行き交う「相互通行」の動線を引こうという考え方です。このOMOに基づき、店内と店外の両方のタッチポイントをカバーするサービスを実現するのが、U.S.M.HのDXです。

具体的には、店内のタッチポイントとして買い物アプリ「Scan&Go」、それと連動する「新セルフPOS」、デジタルサイネージ「ignica」など、店外のタッチポイントでは、ネットスーパーを基本とした「Online Delivery」アプリ、無人店舗「オフィスマ」、「移動スーパー」などのサービスを展開しています。

「Scan&Go」は、店内の商品をスマートフォンでスキャンして購入し、支払いもキャッシュレスで行えるサービスです。単にレジに並ばずに済むソリューションではなく、スマートフォンを介してお客様と双方向につながるコミュニケーションサービスです。地域内/企業内サービスとして展開している無人店舗「オフィスマ」でも利用できます。(図1)

図1 Scan&Goアプリの仕組み:入店するとスマホのGPSが店を判断して自動チェックインし、
商品のスキャンで購入と決済が行われ、出店時にチェックアウトすれば買い物が完了する。

また、「Online Delivery」は、いわゆるネットスーパーのサービスですが、スマートフォンでの利用を想定して開発しました。お客様との双方向プラットフォームと位置づけているためで、将来的には、BOPIS(Buy Online Pickup In Store)サービスへの展開も想定しています。(図2)

図2 Online Delivery:将来的にオンラインで購入して店頭で商品を受け取る「BOPIS」もサポートするほか、
インストールせず手軽に使えるWeb版も提供予定している。

これらの「U.S.M.H公式モバイルアプリ」は、2019年10月の公開以降、原則的に毎月機能を追加していますが、そのベースがMVP(Minimum Variable Product)という考え方です。「最小限の価値を生み出す機能ができた段階でリリースする」というMVPに基づき、素早いフィードバックを回せるアジャイル開発のアプローチをとっています。

これにより、無人店舗「オフィスマ」は、アイデアが出てから2カ月で1号店舗をオープンするといったスピード感で展開しています。それを支えているのが、アジャイルでの富士通との共同開発です。富士通のプロジェクトマネージャーとエンジニアリーダー、弊社のプロダクトオーナーとプロジェクトマネージャー、それに事業会社のビジネスメンバーやプロダクトオーナーが参加する定例会でリリースする機能や開発優先度などを決定しています。直接話し合うことが迅速な決定につながり、月1回のリリースを進める原動力になっています。

さて、アジャイル開発を進める上で重要な「3つのポイント」があります。それは何でしょうか。

開発を進める上で重要な3つのポイントとは?
続きは、こちらからお読みいただけます。

大手スーパーの事例から見る 、リテールDXを加速させる秘訣とは

概要

  1. コロナ禍におけるリテール市場の変化とこれからのリテールとは
  2. デジタルシフトで「わくわくする買い物体験」を
  3. アジャイル開発で重要な3つのポイント
  4. 開発を成功に導くシステムアーキテクチャ
  5. 「買い物の楽しさ」を感じてもらえるサービスを
  6. リテールビジネスのデジタルシフトを支援するBrainforceとは

登壇者

  • ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社
    デジタル本部
    デジタル開発担当部長 角野 泰次 氏
  • 富士通株式会社
    リテールシステム事業部 第二ソリューション事業部
    事業部長 清水 圭

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