成功するデータ活用とは。説明可能なAIによるデータ分析と活用事例を紹介

データドリブン

購買行動やクレジットカードの利用履歴など、顧客データの分析をビジネス戦略につなげるデータドリブンマーケティングが重視されています。しかしデータ分析の基盤を導入(DX投資)しても使いこなせず、顧客データが眠ったままという声も多いようです。今回はDX時代のデータ分析とその活用について探ります。

DX投資を行っても、思うような成果が得られない理由は?

経産省が主導する、日本の産業界のDX推進。省力化・効率化ではなく収益向上にデジタルを活用するため、多くの企業が試行錯誤を重ねています。ところがその一方で、BIツールの導入やDX人材を採用したものの、思うような成果を得られていないという声は珍しくありません。

DXの神髄は、データドリブンといえます。最近ではデータドリブン経営やデータドリブンマーケティングとして語られますが、データドリブンはその名のとおり「データをもとにすること」です。デジタル化が進んだ企業では、多くのデータが蓄積されていきます。そのデータを分析した結果から、「勝てる戦略」を立てて実行していくのがデータドリブンです。

これまで多くの企業では、経営者や現場の責任者による経験や勘で進むべき方向を決定していました。こうした環境では決定に至った根拠がロジカルに言語化されがちです。データドリブンには、経験や勘というブラックボックスはありません。

データを根拠とした決断には、失敗や成功の要因を突き止めやすいというメリットがあります。誰の目にも明白なデータから導き出されたロジックは、その大きな説得力で組織を動かし、企業活動をスピードアップさせます。そして取り組んだ個々の施策をデータで評価し、さらなる次の一手に活かしていきます。

DXで成果を出せていないと感じる企業は、このデータドリブンへの道筋がみえていないことが多いといえます。データドリブンには、データ分析が欠かせません。今回はDX時代の「データ分析」について掘り下げてみます。

データ分析の現場が抱える課題

自社が保有するデータの分析は、データドリブンの第一歩です。しかしその第一歩目で躓く企業は少なくありません。データ分析がうまくいかない理由を考えてみましょう。

データ自体の収集が困難

複数の決済サービス、各社と提携したポイントサービス、自社の友の会など、様々なチャンネルに顧客データが存在し、収集が困難になっている場合です。顧客データを正確に分析するためには、様々なチャネルからのデータを複合的かつ漏れなく収集することが重要です。

分析の観点がわからない

データを収集したものの、どんな観点で分析したらいいかわからないというケースです。データ分析は、データの特性を知る必要があります。そのデータは誰がどんな業務で使っているのか。また業種内や競合他社との関係で、そのデータがどんな意味を持つのか。データの背景や活かせるシーンを理解し、様々な観点からデータを眺めることが必要です。

データの横断的活用ができない

事業部ごとに独自のシステムを構築している場合、事業部の中だけの「閉じたデータ」になっていることは珍しくありません。複数の組織でコストをかけて同じデータを取得しているなど、データのフォーマット違いで統合した分析を諦めることもあります。

また、ポイント管理や決済などシステムごとにベンダーが異なる場合も、データが個別管理になってしまい、同様の課題が残ります。そのため、システムを連携させ、情報を一元管理するためには、ベンダー間での調整が必要になります。

データ分析が属人的になっている

データ分析が特定の人物に偏っているケースです。データ分析に留まらず、過度な属人化は客観的な視点を失いがちです。その人物が退職した際は、社内にノウハウが残らないというリスクが生じます。分析結果だけでなく、それに至る経緯も透明化しておく必要があります。

データ分析でできること

データ分析とは、蓄積したデータをBIツールなどで加工し、規則性や相関・因果関係などを把握することです。ただの数字の塊にみえるデータも、分析することで大きなヒントやチャンスがみえてくることがあるでしょう。

データ分析で大切なのは、日々の業務や顧客の購買行動を通じて蓄積されていく、データの価値に気づくことです。例えば下記のようなデータは、すでに多くの企業が保有しているのではないでしょうか。

顧客データから、将来の顧客動向を把握する

・購買情報(クレジットカード、ポイント等)
・顧客属性(年齢、性別等)
・顧客の志向・関心 など

データ分析の取り組み方

データ分析は、データドリブンの過程にあるひとつの要素です。全体の流れをみてみましょう。

①データ収集: 必要なデータを収集する
②データの可視化(加工): データを数値として可視化する
③データ分析: 可視化されたデータから傾向や関係を読み解く
④施策の決定: 課題や仮説から、施策を導き出す
⑤施策の実行: 施策を実行する
⑥効果測定: 施策を実行した結果を評価し、改善する

①~③がデータ分析にあたります。データドリブンは常に回り続けるPDCAサイクルということができます。トライアンドエラーを繰り返す中で、企業は成功の鍵を探ります。データ分析の目的は、データドリブンの判断材料を用意することといえるでしょう。

データ分析に新たに着手する場合、押さえておきたいポイントを紹介します。

企業が目指す指標から、データ分析を組み立てる

企業のKGIやKPIから、分析すべきデータを探ります。KGI(Key Goal Indicator)は、最終目標を定量的に示した指標です。KPI(Key Performance Indicators)は、KGIに到達するためのプロセスを評価する指標です。

目標には売上、利益、市場規模、顧客数など、様々な指標が設定されていると思いますが、その現状や達成度合いを把握するデータをピックアップしていきます。

分析のための課題設定(目的に到達するために考えられる課題の抽出)

上記でピックアップしたデータをもとに、企業のKGIやKPIの達成度合いを測る分析結果はどういうものがのぞましいか、その具体的な内容を決定します。重要なデータの背景にある要因の規則性や因果・相関関係もわかるアウトプットを用意します。

例:
売上の構成要素とその内訳、売上を構成する要素の関連性、季節や世相の影響、施策の寄与度 など

どんなデータが使えるか

自社はどんなデータを保有しているか、全社を横断して把握しておきましょう。分析したいデータが特定の部署に眠っていたり、複数の部署に散在するデータを組み合わせることで、思わぬヒントが浮かび上がったりすることがあります。

最近は、ビジネスにビッグデータを活用する企業も増えています。自社で保有しているデータ以外にも、活用できるものがあります。国や地方公共団体及び事業者が保有している官民データのひとつ「オープンデータ」は、国民が利用できるようネットで公開されています。

成果を生み出すデータ分析とは

ここで視点を顧客データに移してみましょう。いま多くの企業では、膨大な顧客データを分析することでデータを活用し成果を生み出しています。事例を通して、成功のヒントをみていきましょう。

データ分析技術+業界知見

データ分析の現場では、BIツールによる解析とその結果を読み解きます。前者にはデータアナリストやデータサイエンティストの能力が、後者は業界の知見が必要とされます。データ分析に成功している企業では、この双方の能力を持つ人材を確保しています。

AIの活用

データ分析にAIを活用する企業も増えています。顧客の購買行動を記録した膨大なデータから、行動変容を促す要素をAIが導き出すことができるようになっています。AIを活用するメリットは、IT人材の不足に対応できる点です。前述のデータアナリストやデータサイエンティストは、IT人材の中でもさらに数が少ない職種となっています。AIならデータを読み込ませれば、リアルタイムで分析結果を返してくれます。

AIの活用にあたっては、AIが導き出した施策を鵜呑みにするのではなく、結論に至ったロジックを理解しておきましょう。それにより万が一施策が失敗した際、どこに原因があるのか、どこまで戻ればいいかという判断が正確になります。

AIによる新たな顧客のニーズに合ったプラットフォームを提案。富士通のCTPに見る活用事例

AIを活用したデータ分析プラットフォームのひとつに、CTPがあります。CTPはConsumer Tagging Platformの略称で、消費者の行動データにタグをつけます。スーパーや商業施設のPOSやクレジットカードの膨大なデータを、CTPのアルゴリズムがタグ化します。タグに注目することで消費行動の「なぜ」を理解し、戦略立案や販促に展開することが可能です。

例えばクレジットカードデータには、利用者ごとに「ビジネスホテルの利用が多い」「証券会社で投資している」「特定のブランドしか利用しない」などのタグが自動でつけられます。そのタグの変化をAIが分析し、過去の傾向から未来を予測します。

AIの予測が導かれる根拠は、結びついたタグで確認できます。タグの集合を把握することで、利用者に促す行動をつかみやすく、具体的な施策が立てやすくなります。


活用事例
①百貨店のポイントデータをタグ化し、ポイントの使い方でグルーピング。属性ごとに異なる施策で売上UP。
②金融データをタグ化し、地域の生活者のライフスタイル・ライフステージを可視化。その地域を商圏とするスーパーのマーケティングに活用。
③クレジットカード会社の金融商品のターゲティングに活用。従来の属性情報(年齢・性別・職業)での販促に比べ、コンバージョン率が1.5倍に向上。

データドリブンをつくるデータ活用に必要なデータ分析は早期着手がポイント

消費者の新たなニーズや変容していくライフスタイルに応え、購買シーンに最適なアプローチを行うためには、顧客データや消費行動を分析し、将来の行動予測につなげることが不可欠となっています。多くの企業がデータドリブンに取り組む中、その第一歩であるデータ分析の重要性は高まっています。

すぐに結果がでないデータ分析は後回しになりがちですが、DX時代のゴールドラッシュと言われるように、データが持つ価値や可能性に気づいた企業から成功の鍵を手に入れています。データドリブンの戦略開発は、一筋縄ではいきません。さらにデータの収集と分析、活用には、時間と手間がかかります。早めに着手することで、成功にいち早く近づくことができるでしょう。

これからデータ活用を始める場合は、顧客と接点があるチャネルのデータから収集を始めることをお勧めします。特に金融データやポイントデータは、購買活動の分析に必須です。現在、様々なデータ分析ツールが提供されていますが、決済やポイントサービスのデータをまとめて収集し、CTP分析までトータルに対応できるものを選んでおくと安心です。

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