CX・EXとは?体験価値向上を軸としたマーケティング戦略を考える

社会課題

近年、マーケティングにおいてCX(顧客体験)を重視する企業は多く、CXの向上に関する取り組みも数多く行われています。CXの向上に関わる要素として、EX(従業員体験)に注目する企業も出てきました。そこで、今回はCXとEXについて、それぞれがどのように関わっているのか、またDXも加えた「3つのX」と今後の展望について考察します。

CX・EXとは

近年、マーケティングにおいてCX(顧客体験)を重視する企業は多く、CXの向上に関する取り組みも数多く行われています。CXの向上に関わる要素として、EX(従業員体験)に注目する企業も出てきました。そこで、今回はCXとEXについて、それぞれがどのように関わっているのか、またDXも加えた「3つのX」と今後の展望について考察していきます。まず初めに、CX・EXという言葉の意味や注目される理由についてみていきましょう。

CX(顧客体験)とは

CXとは「Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)」という英語を略したもので、日本語では「顧客体験(顧客体験価値)」と表されます。CXには、顧客が商品やサービスを知り、比較・検討し、購入して利用し、廃棄または解約するまでの一連の体験が含まれます。

商品やサービスに対するCXでは、どうしても購入した後の利用についての部分が注目されがちですが、CXは商品やサービスを知った段階からスタートしていること、また利用した後の廃棄・解約までの全てが含まれるということも理解しておきましょう。

CXが注目されている背景として、機能や性能、価格といった「合理的価値」は均質化しやすいため、他社と差別化するのが難しくなってきていることが挙げられます。そこで、CXによって顧客の「体験価値」をプラスすることで、差別化を図ろうとしているのです。

EX(従業員体験)とは

EXとは「Employee Experience(エンプロイーエクスペリエンス)」の略で、日本語に訳すと「従業員体験(従業員体験価値)」となります。EXには、従業員がその企業で働くことで得られる(金銭的価値を除く)経験や体験が含まれます。例えば、仕事の充実感や達成感、上司や同僚からの評価や承認、職場環境や福利厚生などの待遇がそれにあたります。

EXが注目されるようになったのは、優秀な人材の獲得や、人材の流動性が高まったことなど、人材確保の難しさにあります。せっかく採用した従業員が簡単に転職してしまうと、長期的なプロジェクトに携わってもらったり、企業理念を業務に反映したりしにくくなってしまいます。

EXもCXと同じように、従業員が企業を知り、採用を経て働き、転職や退職に至るまでのライフサイクルを包括的に考える必要があります。CXを考える際のカスタマージャーニーマップのように、エンプロイージャーニーマップを作成するのもEX向上に有効だとされています。

CX向上にはまずEXから?

商品やサービスの差別化のためにはCX(顧客体験)の向上が重要です。そして、CXの向上のためにはEX(従業員体験)が重要である、と考えられています。EXが高まることで、企業への帰属意識や貢献意識が高まり、従業員のモチベーションやパフォーマンスが高まる効果が期待できるためです。

EXの高い企業はCXも高い

実際に、従業員への投資に力を入れている企業ほどCXが高いという事例もあります。

世界規模のコーヒーチェーンでは、従業員に充実した学びの機会を提供するというEXの取り組みがなされているようです。大学の学費を支給したり、オンライン受講をサポートしたり、日本でも通信教育の補助で従業員のスキル開発を支援したりするほか、市場平均を上回る給与や医療・退職給付などの手厚い待遇が受けられるそうです。

その結果、スキルアップに意欲的な従業員が集まり、マニュアル的な接客ではなく、スタッフが独自に考えた「おもてなし」の提供が可能となりました。接客以外にも、心地よい空間を提供するという店舗運営の視点でEXが活かされています。その結果、新規顧客の獲得だけでなく、CX向上によるリピーター獲得につながっています。

CX・EXを高める「感情的価値」という考え方

顧客のニーズは時代によって変化していきますが、価値観というマクロ的な視点から考えると、現代は1970〜80年代の「モノ消費」を経て、1990年代の「コト消費」から、現代の「イミ消費」「トキ消費」の時代へ移り変わっていると言えます。

SNSが台頭し、東日本大震災やコロナ禍で相互扶助の精神が広まった現代では、単なる商品・サービスの所有や消費、体験そのものの消費ではなく、商品やサービスを購入することで得られる体験に何らかの付加価値を求める「イミ消費」「トキ消費」へとそのニーズも変化しています。

「イミ消費」「トキ消費」では、CXにおける「感情的価値(付加価値)」を重視します。例えば、環境保全や歴史・文化の継承、応援消費などによる貢献意識、この商品やサービスでしか得られないという限定感、参加意識などです。

「感情的価値」を生み出し、提供するのは人間にしかできないことです。デジタル化が進み、より便利で効率的な社会になれば、競合との差別化になりえる「感情的価値」はさらに重視されるようになっていくでしょう。人間が人間に対して行う仕事は、仕事への充実感や達成感を生むというEXの観点からも重要だと考えられます。

CX・EXにDXを加えた「3つのX」

CX・EXを向上させる施策を検討している企業が、その解決手法の一つとして注目しているのがDXです。近年、小売・リテール業でも注目されるDXの定義と、CX・EXとの関連性を併せてみていきましょう。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは

DXとは、もともとデジタル技術の浸透により、人々の生活をより良いものへ変革すること、既存の価値観や枠組みを覆すような革新をもたらすことを指します。これをビジネスに限定すれば、企業や業務を変革するためにデジタル技術を導入すること、と言い換えられるでしょう。

マーケティングやリテールの分野でもDXが注目されているのは、デジタル技術の発展よって消費者の行動が大きく変化しているためです。消費者の購買・消費行動に合わせ、企業も変化していく必要があります。

「3つのX」は交互に関連する

CX・EXを高めようとすると、DXが必要不可欠です。前述のように、既に顧客の日常生活においてオンライン、オフラインの垣根はほとんどなく、コロナ禍などを通じた顧客のニーズを汲むためには、これまでのオフライン中心のシステムをデジタル技術によって革新することが必要だと考えられるためです。

また、EXを高めるためにもDXは重要です。例えば、顧客や従業員の行動データを分析して業務改革を行い、顧客対応を重視することで感情的価値を高めたり、リモートワークの充実で柔軟な働き方を可能にし、従業員満足度を向上したりすることがEXにつながると考えられるでしょう。

CX・EXの今後

CXから始まった考え方がEXに広まったように、今後もCX・EXを含む「体験価値」の考え方は広まっていくでしょう。SDGsの機運が高まる昨今では、社会課題の解決につながるCXや、企業の持続的な成長に欠かせないEXにより力を入れていくことが重要なのではないでしょうか。

このように、体験価値という考え方は顧客/従業員といった垣根を越え、商品やサービスに携わる人間全員を巻き込みながら、サステナビリティに寄与する「体験価値の向上」を目指していくと考えられます。

CX・EXを高める、体験価値向上というマーケティング戦略

マーケティング戦略において、これまではCX(顧客体験)だけが重視されてきましたが、近年ではEX(従業員体験)がCXを向上させる一つの要素であることがわかってきています。さらに、CX・EXを高めようとすれば、デジタル技術を取り入れて企業や業務の変革を行うDXの考え方も必要となるでしょう。今後はさらに、CX・EXといった限られた場面や人物を越え、商品やサービスに携わる人間全般を巻き込んだ体験価値の向上を目指す方向に向かっていくのではないでしょうか。

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