港区様
MICJET MISALIO子ども・子育て支援V1 保育所AI入所選考

保育園の入所選考の振り分けがわずか1分程度に。
スピードアップで区民サービスの向上を図る

港区役所庁舎外観

港区においては1997年から人口が増加に転じ、2019年4月時点の人口は約25万9,000人で、うち未就学児の人口は約1万7,000人でした。比較的若い世代が多いのが特徴で、年間3,000人前後の新生児が誕生していることから、子育て支援を区の重要な政策と位置づけ力を入れて取り組んでいます。具体的には、国に先駆けて2015年にスタートした第2子以降の保育料の無料化や、保育料助成制度の充実を図り、子育て世帯への経済的負担軽減に努めています。また、保育定員の拡大にも取り組んでおり、2019年4月1日には8,447人の保育定員を確保し、待機児童数ゼロという目標を達成しました。区の試算によると今後も人口は増加する見込みで、2030年には31万9,000人に達するとみられていることから、今後も引き続き子育て支援策に力を入れていく方針です。このシステム導入に向けての取り組みは2018年度の業務改善における区長賞を受賞しており、港区全体のなかでも期待されている取り組みといえます。

課題
効果
課題2019年度は2,900人分の入所申し込みに対し、職員14名以上が手作業で振り分け。数日かかりきりになり他の業務を圧迫していた
効果振り分け作業そのものは約1分程度で完了。全体で4日間ほどの期間短縮が期待される。
振り分け作業日数の削減により、決定日の前倒しが可能になることが期待される。
課題入園希望順位や兄弟の条件など、入園の要望が叶えられているかを手作業でしか確認できておらず、精神的な負担が大きかった
効果職員の作業は情報の入力までとなり、情報管理に注力できるようになる。

システム導入の背景

導入にあたっての経緯をお聞かせください

港区では2018年度を「港区AI元年」と位置づけ、複数部署においてRPA注1やAI注2の活用を推進してきました。働き方改革による業務負担の軽減に対応すると同時に、自動化により業務量を減らすことでよりよい区民サービスにつなげるのが狙いです。今回は、AI活用推進の流れと子育て支援に力を入れる区の思惑が合致したことから、特に負担の大きかった保育園の入所選考作業(マッチング)の省力化に取り組むことになりました。

従来の入所選考作業ではどのような課題や問題点がありましたか

毎年増加する入園希望者を1件ずつ手作業で振り分けていたので、単純に作業量そのものが膨大だったということがあります。また、振り分けた後、個々の入園希望順位や兄弟の条件など、希望者の要望が叶えられているかの確認も手作業で行っており、間違いが許されないという精神的な負担もかなりありました。1年で一番申し込みが集中するのは4月入所の1次申し込みで、2019年度は約2,900人の希望者を14名体制で作業を行いました。とにかく業務量が多いので、身体的・精神的な負担はかなりありました。

港区 子ども家庭支援部 保育課 課長 山越 恒慶 氏の写真港区 子ども家庭支援部 保育課
課長 山越 恒慶 氏
港区 子ども家庭支援部 保育課 保育支援係 前係長 佐藤 明子 氏の写真港区 子ども家庭支援部 保育課
保育支援係
前係長 佐藤 明子 氏
港区 子ども家庭支援部 保育課 保育支援係 係長 森田 秀和 氏の写真港区 子ども家庭支援部 保育課
保育支援係
係長 森田 秀和氏
港区 芝浦港南地区総合支所 区民課 保健福祉係 佐藤 健太 氏の写真港区
芝浦港南地区総合支所
区民課 保健福祉係
佐藤 健太 氏
港区 高輪地区総合支所 区民課 保健福祉係 小川 結惟子 氏の写真港区 高輪地区総合支所
区民課 保健福祉係
小川 結惟子 氏

システム導入の準備/実証実験

導入検討にあたり不安はありましたか

入園希望者の振り分け作業は、各家庭がもつ条件を1件1件考慮する必要があり、1人の判定がずれてしまうと玉突き的に多くの希望者の判定がずれてしまうような複雑な作業なので、当初は機械的に結論を出すことに対して否定的でした。ところが、実際に実証実験を行ってみると、こちらが入力する指数と優先順位さえ正しければ、単純な振り分け作業における速度は、手作業に勝ると思うようになりました。

実証実験で大変だった点はありますか

約3か月かけて実証実験を行いましたが、まずシステムのフォーマット形式に馴染みがなく、使用される単語や記号に慣れるのに時間がかかりました。また、手作業で出した結論と他のものが出した結論を比較するという作業そのものの経験がなかったので、2つの結論が異なっていた場合、そのずれを検証する作業が大変でした。ずれの要因は単純にデータ入力が間違っていたということのほか、システムで定義づけされている兄弟条件の解釈の違いなど複数の要因が挙げられ、結果検証の作業に時間がかかりました。

実験実施中の富士通の対応はどうでしたか

情報のやりとりのなかで、わからないことはすぐに質問させていただき、都度丁寧に説明していただきました。ほとんどのことはその場で解決・納得することができ、技術的に調整が必要なものは後日あらためて返答いただくなど、適切な対応をいただけたと思います。システムに対する知識がまったくなかったにもかかわらず、作業のなかでの不安はなかったです。

システムの本格運用に向けて

運用に向けて準備していることはありますか

指数や優先順位など、正確なデータがあるというのがシステム利用の前提条件になるので、入力した内容を正しいフォーマットで出力できるよう基幹システムの整備を始めたところです。また現在港区で使っている基幹システムは予備スペースが少ないことから、入りきらないデータについては現状、備考欄に記載することにしています。人間が読むならば問題はないのですが、AIが読み取る際には同一のことを示していても表現が少し違うだけで同じ情報として認識しないといったことが起こっています。そのため、この情報をAIに正しく読み込ませるために、言葉の定義づけや入力ルールの見直しを進めているところです。過渡期である今は新しいルールに困惑することもありますが、入力を担当する職員全員にルールが定着すれば、加速度的に運用しやすくなると考えています。

システム導入で期待される効果をお聞かせください

入所選考においての最大の負担は振り分け作業にあり、これまでは入力したデータを紙に出力し、それをもとに作業を行ってきました。振り分ける作業そのものがゴールであり目標でしたが、システム導入後は入力が終わった時点で我々の手を離れてAIが振り分け作業を行うので、正確なデータ入力がゴールになります。つまり、入力作業を含めたデータ管理がより重要になるので、これまで以上に慎重にデータを扱うという心構えができました。また、入所選考の振り分けにかかる時間は、従来に比べて4日間ほど短縮できる見込みです。この4日間は通知の準備などに使えるようになりますし、スケジュール自体の変更、例えば入園希望提出の締め切り日を遅らせる、あるいは結果発表日を早めるということも可能になります。もうひとつ、これまで入力していたデータのなかには、AIが判定するにあたり不要なデータも含まれていました。現在その精査を行っていますが、不要なデータ入力を省きシンプルにすることで入力そのものの負担も減ることになります。もちろんシステム導入で得られた時間と労力を入所選考以外の業務に割けるようになるので、区民サービスの向上にもつながると考えています。

パッケージ開発部門やSEに期待することはありますか

先述したとおり、現在、港区で運用している方法とシステムが求める要件が異なる場合に、どのように解決するのかを検討しています。現在組まれているシステムで対応できない部分に対して、我々が運用方法を変えてシステムに歩み寄るのか、あるいはまったく別の方法での解決を考えるかのいずれかになりますが、システムで対応できるようにしていただけるといいですね。入所選考にあたっては自治体ごとに異なるルールで行っており、また制度の改正などにも柔軟に対応できる汎用性の高いシステムを期待します。特殊な事情をもち受け入れ側の調整など様々な要件を考慮する必要がある家庭に対しても、幅広くAIで対応できるようになるとありがたいです。

今後の展望/富士通への期待

子育て・保育分野でシステムに期待することはありますか

現在、システム入力に多くの時間を費やしているので、次のステップとしては書類の電子化や、電子申請された書類の指数、優先順位の自動入力などを期待しています。保育園の数が増え続けているなか、似た名前の保育園も複数あり、希望園の名前を間違えてしまうリスクも想定されます。AI OCR注3を活用して帳票を自動で取り込めるようになれば、省力化が図れるのはもちろん、こうしたリスクも減ると考えます。また、システム入力は各総合支所で行っていますが、支所では保育以外の業務も行っています。システム入力に費やす時間が少なくなれば、保育以外へのサービスの向上にもつながると期待します。

今後富士通に期待することはありますか

システムの運用にあたっては時間の短縮はもちろんですが、まずは正確性が第一。保育業務においては、操作のしやすさ、様々なルールへの柔軟性は大いに期待するところです。入所選考以外では、増え続ける保育園の管理負担が年々増加しています。保育園の運営支援策として様々な補助金制度があり、その管理作業が煩雑で業務量が増加しています。一方で保育園運営事業者側の事務処理も大きな負担になっている状況なので、こうしたことを包括して単純化・省力化できるシステムの開発を期待します。

港区の皆様の集合写真後列左から 森田 秀和 氏、山越 恒慶 氏、佐藤 健太 氏
前列左から 小川 結惟子 氏、佐藤 明子 氏

港区様 概要

所在地東京都港区芝公園1丁目5番25号
代表者港区長 武井 雅昭
人口259,293人(147,417世帯)(2019年5月1日現在)
職員数2,172人(2018年4月1日現在)
ホームページhttps://www.city.minato.tokyo.jp/
港区のご紹介

首都東京の都心にある港区は、政治・経済・文化芸術の中枢を担っており、台場、六本木、汐留、麻布十番などの人気のスポットや、青山、麻布、赤坂、高輪、芝浦といった個性豊かな街並みをもっています。商業施設などの近代的な高層建築が並ぶ一方、歴史を感じさせる文化財や史跡等も多く残っており、近代的なものと伝統的なものが調和する魅力ある都市です。国内外からのアクセスにも優れ、観光やビジネスで多くの外国人が訪れる国際性豊かな経済活動・情報発信の拠点となっています。在日大使館や外資系企業も多く、人口の8%ほどが外国人居住者という特徴もあります。

東京タワー:地上333m、1958(昭和33)年に完成した東京タワー。戦後日本復興のシンボルとして親しまれ、2013(平成25)年には国の有形登録文化財に指定されました。

麻布十番:商店街には創業100年以上の老舗や洗練されたショップなど、新旧の魅力が混在。周辺には歴史の古い寺院や建物などが点在する一方、国際色豊かな街としても知られています。

東京タワーの写真東京タワー

麻布十番の写真麻布十番

[2019年8月1日掲載]

自治体ソリューションに関するお問い合わせ

Webでのお問い合わせ

  • 入力フォーム

    当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。

お電話でのお問い合わせ

ページの先頭へ