愛知県幸田町 様 導入事例
複数の生体認証システムを「手のひら静脈認証」に統合
認証情報の一元管理を実現し、高精度なセキュリティ環境を確立
愛知県幸田町(以下、幸田町)は、500以上の自治体への採用実績を持つ、手のひら静脈認証対応PCログオン多要素認証システムAuthConductor V2と入退室管理システム AuthGateを導入。これらの導入により、従来、別々に運用していた基幹系システムへのログオンとサーバー室への入退室管理のユーザー情報の管理を統合し、認証情報の一元化による管理コストの削減や、高い認証精度による業務生産性の向上を実現した。
- 課題基幹系システムログイン時の認証精度の低さを改善したい
- 効果手のひら静脈認証の導入で、大幅な認証精度向上の実現
- 課題手のひら静脈認証の導入で、大幅な認証精度向上を実現
- 効果手のひら静脈認証で認証情報を統一し、管理コストを軽減
部長 成瀬 千恵子 氏
課長 稲熊 公孝 氏
主幹 藤田 美香 氏
主事 竹内 一樹 氏
背景
認証精度の低い指紋認証システムにより、窓口業務の生産性が低下
愛知県の中南部に位置する幸田町は、人口42,650人(2021年10月1日現在)。東西に国道23号、南北に国道248号が走り、鉄道ではJR東海道本線が通るなど、交通の利便性が高く、農商工業がバランスよく発展している町だ。そうした土地柄は多くの人々を惹きつけており、2020年国勢調査では、愛知県内で1位となる人口増加率+7.3%を記録した。また、ふるさと寄附制度(ふるさと納税)の取り組みにおいても高い成果を残しており、2019年度には愛知県1位となる約38億円の寄附額を集めている。
2016年、幸田町は同町初となる生体認証システムを導入。導入したのは2種類の生体認証で、基幹系システムへのログオンには他社製の指紋認証システムを、庁舎内のサーバー室への入退室管理装置としては富士通製の手のひら静脈認証対応「SGシリーズ」を選定した。同年、総務省が「自治体情報システム強靭化向上モデル」を発表したのを受け、セキュリティ体制の強化が目的だった。
しかし、この導入以降、幸田町は、生体認証に関するいくつかの課題を抱えることになった。その一つが、指紋認証システムの認証精度の低さだった。同町の情報システムを担当する企画部企画政策課の主幹 藤田美香氏は、当時の課題について振り返る。
「以前は、例えば、手が荒れている職員の指紋が読み込まれないなど、認証精度に関するトラブルがしばしばありました。基幹系システムは主に窓口業務で利用されるので、認証がしづらいと、住民サービスの提供に影響が及んでしまいます。そのため、指紋が読み取りづらい職員に関しては、認証レベルを下げて運用するといった対応がされていました」(藤田氏)。
ほかにも、指紋認証と手のひら静脈認証を用途別に使い分けていたため、2つのユーザー情報を管理しなければならないことも課題だった。両者は認証方法が異なるので、指紋や手のひら静脈は別々に登録・管理が必要であり、権限変更も別々に行わなければならなかった。そのため認証情報の管理は煩雑化し、企画政策課の担当者の業務負担になっていた。
経緯
手のひら静脈認証ソリューションが課題解決の最適解
こうした課題に直面した幸田町は、情報システムのサポートを受けるトーテックアメニティ株式会社(以下、トーテック)に、課題解決に向けたアドバイスを求めた。このときにトーテックから提案されたのが、多要素認証システム「AuthConductor V2」と入退室管理システム「AuthGate」を用いた手のひら静脈認証での連携だった。幸田町へのサポートを担当するトーテックの西部達也氏は、手のひら静脈認証ソリューションを提案した経緯について話す。
「もともと富士通の手のひら静脈認証は当社で導入しており、認証精度には強い信頼を置いていました。幸田町様からご相談をいただいたちょうどその時期に、AuthConductor V2とAuthGateとの連携が可能になったとの知らせを富士通よりもらい、幸田町様の課題だった基幹系システムと入退室管理の認証情報を統合できるのではと考えました。当時、連携機能はリリース間もない機能でしたが、幸田町様はすでに富士通製のSGシリーズをご活用されていたので、導入もスムーズに進められるはずだと考えました」(西部氏)。
西部氏の提案を受けた幸田町は、AuthConductor V2およびPalmSecure-F Light センサー、AuthGateを取り寄せ、装置のサイズや認証精度、速度など旧システムとの比較を実施。複数の検討を経て、導入を決定する。こうして、幸田町は、手のひら静脈認証ソリューションの導入による、認証精度の向上と管理コストの削減にのぞむこととなった。
ポイント
導入時プロジェクトを通じて、手のひら静脈認証ソリューションの高い認証精度を実感
2020年7月、AuthConductor V2及びAuthGateの導入プロジェクトが開始される。プロジェクトでは、まず、AuthConductorサーバーの導入など、システム環境の構築が先行して進められ、次いで、全職員を対象とした認証情報の登録が行われた。
プロジェクトメンバーとして導入を手がけた、企画政策課主事の竹内一樹氏は、認証情報の登録作業時に、AuthConductor V2やAuthGateの認証精度の高さを実感したという。
「認証情報の登録は、平日の勤務時間帯に通常業務と並行して行いましたが、滞ることなく進行しました。以前の指紋認証システムの場合、職員によってはなかなか認証されず、登録にかなりの時間を費やすことがありました。しかし、今回の導入では、そうした時間のロスがほぼなかったため、システムへの期待が非常に高まったのを覚えています。事実、認証情報の登録は、300名を超える職員を対象に行いましたが、1日100名を超えるペースで進められ、約3日間で完了することができました」(竹内氏)。
また、認証情報の登録や職員IDとの紐付け方法など、導入に関する手厚いサポートもプロジェクトの円滑な進行を後押ししたと竹内氏は付け加える。
こうしたなかで、幸田町はプロジェクトを着実に進め、2020年12月にすべての作業を完了。翌2021年1月に、AuthConductor V2とAuthGateの同時稼働に至る。
効果と今後の展望
手のひら静脈認証ソリューションが、デジタル時代のセキュリティ体制構築にも貢献
現在、幸田町では、基幹系システムを導入しているPCへのログオン用にAuthConductor V2を150台、サーバー室の入退室管理用にAuthGateを2台導入し、認証情報を連携している。これにより、基幹系システムと入退室管理の認証情報が統合され、課題となっていた煩雑な認証情報の管理を大幅に効率化している。
また、AuthConductor V2の導入により、基幹系システムへのログオンは円滑化し、窓口業務などの生産性向上を促進している。企画政策課で課長を務める稲熊公孝氏はAuthConductor V2は職員間でも好評を得ていると、導入の手応えを語る。
「以前、私は選挙管理委員会に配属されており、基幹系システムを利用する機会も多かったのですが、そのころには周囲から『認証が遅い』『何度も指紋を読み込ませないと認証されない』といった不満の声が、しばしば上がっていました。しかし、今回の導入以後は、そうした声が全く聞かれません。実際に、企画政策課にクレームが届いたこともなく、多くの職員が手のひら静脈認証の使いやすさに満足しているようです。管理者側の私としては『クレームがない』というのが、何よりの導入効果だと感じています」(稲熊氏)。
そのほか、AuthGateによる入退室管理も職員間で好評だ。以前、導入していたSGシリーズは、認証時に手のひら静脈の認証に加えて、テンキーで職員IDを入力する必要があった。しかし、AuthGateは、読み取り精度の向上により、手のひら静脈のみでの認証が可能となったため、よりスムーズな入退室を実現している。
手のひら静脈認証ソリューションの導入を通じて、認証精度向上や認証情報管理の効率化を実現した幸田町。今後は、近年、急速に進む行政のデジタル化に対応した、強固なセキュリティ体制の構築に力を注いでいく。企画部長の成瀬千恵子氏は、その意気込みを語る。
「2021年9月にデジタル庁が創設され、今後、マイナンバーカードの普及を通じた、住民サービスのデジタル化が急速に進んでいきます。もちろん、幸田町も様々なデジタル化に取り組み、より利便性の高い住民サービスを提供していく方針です。一方で、住民の皆様から信頼を得るためには、適正なセキュリティ環境が整備されなくてはいけません。今回の手のひら静脈認証ソリューションの導入は、幸田町がより強固なセキュリティ環境を築くうえで、重要な役割を果たしてくれたと思っています」(成瀬氏)。
昨今、社会的にも注目を集める行政のデジタル化。利便性の高い住民サービス提供が求められる一方で、地方自治体の情報セキュリティのあり方にも関心が高まっている。新たな時代に対応したセキュリティ環境を構築するにあたり、幸田町の事例は大きな示唆を与えるに違いない。
愛知県幸田町 様
所在地 | 〒444-0192
愛知県額田郡幸田町大字菱池字元林1番地1 |
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従業員数 | 390名 |
事業内容 | 官公庁 |
ウェブサイト | https://www.town.kota.lg.jp/ |
[2021年12月掲載]
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