協業事例インタビュー

Quantstamp, Inc

富士通アクセラレータプログラムでの共創の取り組みを、座談会形式でご紹介します。今回は、米国本社のブロックチェーン、特にスマートコントラクトのセキュリティ監査を実施するスタートアップであり、世界的に有名なアクセラレーターであるY Combinatorのプログラムにも採択され注目されている、「Quantstamp, Inc」さんです。

Quantstamp, Inc(クォントスタンプ、以下「Quantstamp」)は米国本社のブロックチェーン、特にスマートコントラクトのセキュリティ監査を実施するスタートアップです。同社は世界的に有名なアクセラレーターであるY Combinatorのプログラムにも採択され、注目されています。

まだ黎明期とも言えるブロックチェーンですが、すでに起きてしまった様々な事件を引き合いに出すまでもなく、セキュリティの重要性は語るまでもありません。Quantstamp社が扱うブロックチェーン分野の重要性はこれからも増すでしょう。

Quantstamp社は、FUJITSU ACCELERATOR第6期プログラムに採択。両社がタッグを組むことで、作れるブロックチェーンの未来とは。Quantstamp社のAPAC Business Development Regional Managerである小田 啓氏と、FUJITSU ACCELERATOR事務局メンバーの安西 潔氏にお話を伺いました。

黎明期のブロックチェーンにセキュリティから向き合う

Quantstamp, Inc Business Development Regional Manager, APAC 小田 啓 氏

─Quantstamp社はブロックチェーンのセキュリティ監査の会社という認識でよいのでしょうか。

Quantstamp 小田氏(以下、小田)

そうですね。ただ最近はブロックチェーンのセキュリティ監査だけでなく、ブロックチェーンシステムの開発を担うことも多くなっています。

今のブロックチェーンは「90年代前半のインターネット」に似たフェーズです。当時のインターネットは電話回線で画像を1つダウンロードするのに数分かかるような世界観。それが25年かけてスマートフォンで動画がストリーミングできるという時代になりました。同様に、ブロックチェーンはこれからどんどん進化していくでしょう。

ブロックチェーンに対するリテラシーは徐々に上がっています。ブロックチェーン=仮想通貨という誤解が解けて、ブロックチェーンにはどういう使い方があるのかということを、各社が検討したり、PoCをし始めました。

ただ、アイディアがでてきてそれをやりたいと思っても、ブロックチェーンの実装はまだまだハードルが高いんです。Quantstampがブロックチェーンの監査ができますよという提案をしても、そもそも監査するためのブロックチェーンのシステムを作るのが大変。だったらQuantstampで開発もしてしまおうということで、最近は開発案件も手がけています。

Quantstampでは監査をすればするほど、逆に安全なアーキテクチャーとはどういったものなのかという知見が溜まってきました。その結果、お客様にセキュアなシステムを作るバリューが培われてきたんですね。

富士通株式会社 FUJITSU ACCELERATOR事務局 安西 潔 氏

─富士通は今、ブロックチェーンとどのように向き合っているのでしょうか。

富士通 安西(以下、安西)

富士通は、ブロックチェーンのコンソーシアムであるHyperledgerに、プレミアムメンバーという形で参画し、多くのプロジェクトを立ち上げています。とはいえまだまだ多くはPoC止まり。リアルなプロジェクトが動き出すにはもうちょっと時間がかかりそうだと感じています。

先ほど小田さんが、「今のブロックチェーンは90年代のインターネット」という話をされていました。全くそのとおりで、とはいえインターネットの時代を経験している分、ブロックチェーンは今後、インターネットを超えるスピードで発展するのではないかと思います。

日本のコミュニティに参画する

─Quantstamp社がFUJITSU ACCELERATORにエントリーしたきっかけを教えて下さい。

小田

元々Quantstampは、シリコンバレーが源流のPlug and Play Japanというアクセラレータープログラムに参加していまして、そこで富士通と知り合いました。色々とやりとりをしている中で、FUJITSU ACCELERATOR第6期が募集開始するということで、応募しました。

安西

Quantstampさんの事業にはすぐにピンときて、ぜひお付き合いさせていただかなければと思いまして、お誘いしました。

富士通は歴史的に金融機関や証券取引所など、特にセキュリティを大事にしなければいけないお客さまが大勢いらっしゃいます。そうするとブロックチェーン事業を構築する上でも、セキュリティは差別化要因になるんですね。

ただ、当時からセキュリティを専門にやっている会社というのは少なかった。そのため。Quantstampさんと、どういう形でどういうことに取り組めるかというのを、FUJITSU ACCELERATORの協業検討期間を通して模索したいと考えたんです。

小田

Quantstampとしても、元々アジアの拠点を日本に置きたいという話があったんです。日本でビジネスを展開するのは海外のスタートアップにとっては特に難しい。他の国では案件ベースでサクサク始まり、手離れも早い。一方日本ではリレーションシップが必要になり、長い付き合いになる。日本は仲間に入れてもらうのに時間がかかるという点を乗り越えるために、ストラテジックパートナーとして富士通とご一緒できるというのは心強かったですね。

─アクセラレータープログラム中はどんなことをされていましたか?

小田

まずは色々な企業を紹介いただきました。また直接的にQuantstampの活動というわけではないのですが、スマートコントラクトのセキュリティのグローバルスタンダードを作るコンソーシアムを作り、富士通に参画いただいています。将来的に大手企業や金融庁にもアクセスすることになると思うので、そこに参画いただけるというのは非常に心強いですね。

安西

富士通グループには中国でスマートコントラクトを研究している「Fujitsu Research and Development Center」があるのですが、そのメンバーがプログラムにジョインしました。FUJITSU ACCELERATORでは主に国内の事業部とスタートアップのマッチングをするのですが、Quantstampの場合は領域が非常に先進的。そのためグローバルで得意な部門に任せたほうが協業検討が進むということで、国をまたいでマッチングしました。

セキュリティ面で日本のブロックチェーンプロジェクトに貢献を

─FUJITSU ACCELERATORの協業検討期間が終了した後の、両社の今後の取り組みについて教えて下さい。

小田

安西さんが語るように、国内のブロックチェーンプロジェクトはまだまだPoC段階のものが多い。ただ最近は実験的なものではなく商用に向けたPoCも多くなっています。精度が高いプロトタイプを作り、そのまま実装に向かっている動きも見えてきました。

日本でのSIerの雄は富士通。一緒にいることでいずれは何かしら一緒にできる案件が生まれてくるのかなと思っています。

安西

システム構築においてセキュリティは肝。富士通のクライアントである大きい金融機関なり取引所が、新しくブロックチェーン使って何かを立ち上げたいといった際に、セキュリティ面で一緒に取り組みをご一緒したいですね。

(執筆・撮影:pilot boat 納富 隼平)

Quantstamp, Inc

クォントスタンプはクォントスタンププロトコールや自動セキュリティツールを独自開発し、監査を行い、スマートコントラクトを担保するサービスを提供しています。クォントスタンププロトコールは公開閲覧可能なスキャンレポートの作成を通じて、スマートコントラクトのセキュリティやスマートコントラクトを作成するプロジェクトの信憑性を高めることを目的としています。

〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町12-10
住友不動産渋谷インフォスアネックス1階
URL:https://info.quantstamp.com/jp 新しいウィンドウで表示

Quantstamp, Inc Business Development Regional Manager, APAC 小田 啓 氏

23年間ロンドンで育ち、ケンブリッジ大学卒業後、ゴールドマンサックスに入社。ロンドン及び東京で16年間債券トレーダーを務める。その後、宇宙ベンチャーにて、マーケティング、営業、資金調達などを経験。2018年4月、Quantstampに参画。APACを中心に、世界の企業がブロックチェーン及びスマートコントラクト技術をスムーズに導入できる為の支援を行っている。

協業担当者

富士通株式会社 グローバルマーケティング本部 ポートフォリオ戦略統括部 エコシステム推進部 安西 潔

学生時代よりマイクロソフトで働き、大学院卒業後ソフトバンクグループに勤務。
富士通では、事業部門でビッグデータビジネスに携わった後、FUJITSU ACCELERATORの企画・立ち上げメンバーとして、第1期からプログラムに関与。現在は海外担当として、プログラムの海外展開や海外エコシステムとの連携を中心に手がける。また、ブロックチェーン分野では、Hyperledger Marketing Committeに参画中。

本件に関するお問い合わせ

富士通アクセラレーター事務局

ページの先頭へ