協業事例インタビュー
株式会社Payke
富士通アクセラレータプログラムでの共創の取り組みを、座談会形式でご紹介します。今回は、スマートフォンでバーコードを読み取るだけで、商品情報を多言語で表示するサービスを提供・開発している、「株式会社Payke(ペイク)」さんです。
今回は、スマートフォンでバーコードを読み取るだけで、商品情報を多言語で表示するサービスを提供・開発している、「株式会社Payke(ペイク)」さんです。
Paykeを立ち上げたきっかけ
本日はよろしくお願いします。
一同
よろしくお願いします。
はじめに、Paykeという会社を立ち上げようと考えたきっかけについて教えてください。
古田
どこから話しましょうか(笑)。実はPaykeの前にも起業した経験がありまして。
ぜひ、1社目のほうからお願いします。
古田
私は高校生のときに沖縄へ移住しました。1社目では、貿易関係の業務、具体的には、「越境EC」に取り組んでいたんです。当時はまだ、越境ECという言葉自体が世の中にあまり出てきていない頃でしたが、沖縄の特産品を中国や台湾向けに販売しよう、と思っていました。
いまPaykeさんが手がけているサービスにも通じている業務内容ですね。
古田
そうですね。1社目の業務を通して気づいたのが、商品の情報をきちんと伝えないとモノは売れない、という現実です。物流自体は越境であってもなんとかなりました。けれど、「モノの価値」がうまく流通できていない、そんな課題に直面したんです。価値の流通のためには、情報を流通させていかなければならない。では、情報が流通できない障壁ってなんだろうと考えたところ、言語の壁ではないか、ということに気づきました。例えば、沖縄特産の「もずく」。これは中国語でうまく説明できないな、と(笑)。
たしかに、もずくを外国の方に説明するのは難しいですね(笑)。
古田
1社目で越境ECに取り組んでいてわかったこと。それは、バーコードです。バーコードって世界統一規格なんです。流通する商品には、バーコードが必ず貼付されているのに、バーコードが商品管理にしか使われていないのはもったいない。バーコードをメディア化し、商品情報を各国の言語で見られるようにしよう、メーカー企業のオウンドメディアにしてしまおう、と。そうしてPaykeの起業に至りました。前の会社はクローズし、Paykeでのサービス提供・開発に集中したのが、2014年でした。
富士通との共創活動を開始したきっかけ
富士通とはどのように出会ったのでしょうか。
古田
2015年にPaykeのサービスをローンチしてから、約1年半くらい経ったころかな。
松尾
2017年の春~初夏くらいでしょうか。富士通がスポンサードしていた平成28年度「起業家万博」(注)でPaykeさんがピッチに登壇されていました。そこでPaykeさんのお話を聞いた私たちは、そのアイディアやビジョンに共感し、「富士通賞」を進呈させていただきました。
古田
その特典として、富士通のアクセラレータプログラムにご招待いただき、そちらでもピッチに登壇させていただいたんです。
- (注)主催:総務省及び国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)
見事、最優秀賞を受賞されたんですね。
松尾
富士通賞をお贈りさせていただきながら、こんなこと言うのも、なんですが、Paykeさんがまさか、富士通アクセラレータプログラムで最優秀賞を受賞されるとは思っていなかったんです(笑)。起業家万博はどちらかと言うとBtoC向けのサービス・プロダクトが対象のピッチコンテスト。でも、当社のアクセラレータプログラムは、どちらかと言うとBtoB向けのものです。ですから、BtoC向けのサービスであるPaykeさんには少し不利じゃないか、と思っていたんです。
古田
なんだかコンテスト荒らしみたいになってしまいましたかね・・・(笑)。
松尾
いやいや(笑)。Paykeさんのアイディアとピッチが本当に素晴らしく、富士通の役員クラスも納得の内容でした。そこで、地域活性化に絡んだ新しい取り組みをしようと考えていた当社の自治体向けソリューションを手がける部門が、Paykeさんとの共創に関心を寄せ、お声掛けをさせていただいた、という流れでした。
期待と成果
共創活動はどのように進展していったのでしょうか?
古田
当社は、富士通さんからお声掛けいただく前にも、大企業や自治体の方からのお問い合わせ、協業検討というのは何度かさせていただいたことがありました。ですから、富士通さんからお声掛けいただいたときも、チャンスが一つ巡ってきた、と捉えていました。受けないという選択肢はない、と。
松尾
当社では、自治体向けに何か新しいサービスを、という検討をちょうど始めていたときでした。ですからPaykeさんのサービスが、インバウンド需要に刺さるソリューションであることに気付き、Paykeさんと富士通との共創で何か新しい・面白いモノができるのではないかと期待したんです。
古田
いざ活動が始まってみると、まさにトントン拍子といった感じでプロジェクトが進んでいきました。多くの大企業では、決裁・決断まで時間がかかることが多いのですが、富士通さんの場合はあまりそういった遅さを感じることがなかったです。
佐藤
両社で「自治体」という共通のフィールドがあったこと、共創で取り組むフェーズが「実証実験」であったことも、スピードを上げて対応することができた要因かもしれません。
古田
たしかにそうですね。私たちには、島根県という共通のフィールドがあった。富士通さんとの共創が始まる前から、当社でも島根県に関係するプロジェクトが進んでいたんです。
佐藤
富士通にとって島根県は、ホストを入れさせていただいている古くからのお付き合いでした。Paykeさんとの共創を開始し、どのように活動を進めていくか検討をしている中で、かなり早い段階で「そういえば、島根県で・・・」という話題が両社から挙がったんです。
古田
あのとき、話が進むのがすごく早かったですよね。「島根県・・・」ってなった翌週には、島根県にご一緒させてもらいましたから(笑)。
現在、共創活動として取り組んでいる内容を教えてください。
佐藤
2017年3月に、官民データ活用推進基本法(以下、官デ法)が制定されました。現時点では、官民でデータの利活用を推進しましょう、という基本方針が制定されただけで、具体的にどういった施策を行っていくかについてはまだまだ検討段階です。そんな時、Paykeさんが持っているバーコードの利活用技術と、島根県が持っている県産品の認証データや製品に関するデータを結びつけたら、官民のデータ利活用が相互に推進できるんじゃないか、と共創を考えたのです。
古田
それぞれが島根県というフィールドで活動していたのが、共創活動を開始したことをきっかけに一つのチームとして合流した、という感じでした。いまは、実証実験に取り組んでいます。
共創活動がもたらした効果の中で一番大きかったのはなんでしょうか?
古田
まず何より、富士通さんが持っているチャネルですね。当社のようなスタートアップ企業には、信用力がない。例えば、自治体の担当者の方に「Paykeです!」とご挨拶にお伺いしても、「・・・誰?」となるわけです。ところが、富士通さんと組むことで大企業の信用力というものを得ることができました。これはとても大きかったです。
松尾
Paykeさんは、富士通との出会いがなかったとしても、自治体さんからのお問い合わせは多数お持ちでした。いわゆる、ボトムからのアプローチはできていた。そこに富士通との共創が開始したことで、国や総務省の方針をお伝えすることができ、トップからのアプローチにもつながっていったんじゃないかと思います。
古田
まさに、そうです。官デ法のことは、富士通さんとの共創で初めて知りました。私たちだけでは気づけなかったビジネスチャンスに、富士通さんのおかげで気づくことができたんです。
Paykeさんと富士通との共創が描くビジョン
これからの展望は?
佐藤
現在、島根県との実証実験もそろそろ第2段階が始まります。島根県が提供するオープンデータの利活用をより深く進めていくことになります。今後は他の都道府県にも横展開をしていきたい、とも考えています。県産品のような地域の名産品は全国に数多く存在していますが、詳しく知られていないものがとても多いです。こうした地域の名産品を、Paykeさんの技術を用いて国内外、とりわけ外国人観光客の方たちに知ってもらえるよう、グローバルに向けての発信に力を入れてきたいと考えています。そして、魅力の掘り起こしと地域活性化へと結びつけていきたいのです。
古田
Paykeとしては、富士通さんの営業力にとにかく期待しています。全国でのパイプは、スタートアップ企業では持ち得ないものですから。今回の実証実験の成果を横展開するときには、富士通さんの営業力がなければ実現できないと思います。さらに、いまは自治体向けのソリューションで共創させていただいていますが、民需の方でも共創していけたらいいですね。
松尾
当社の強みの一つとして、機器類の保守運用サポートがあります。Paykeさんのプロダクトには、ハードウェア端末も含まれていますので、これらの保守運用サポートを全国規模で展開することができれば、Paykeさんへのご支援が一層深められると考えています。
最後に、富士通との共創の魅力を読者の方にお伝えしたいのですが。
古田
とにかく、チャネルが広がる、ということです。相手が大企業だからと遠慮している必要はないと思います。共創をすることで失うものはないんです。チャンスが増えるか・増えないか、そのどちらかですから。加えて、メディアバリューが大きいです。今回取材いただいたのもその一つの効果ですが、PR効果がとにかく絶大です。富士通さんとチーミングしているんだ、ということで信用力も向上します。いいことはあれど、悪いことはないんじゃないでしょうか。
ありがとうございました。
(執筆:株式会社カグラ 新村 繁行)
株式会社Payke
2014年11月設立。バーコードという世界中に点在する媒体を活かし、世界中の商品をインターネットにつなげることを可能にする『Payke』というアプリケーションを提供。
東京オフィス:
〒106-0041 東京都港区麻布台1-4-3 エグゼクティブタワー麻布台501
沖縄オフィス:
〒900-0004 沖縄県那覇市銘苅2-3-1 なは市民協働プラザ産業支援センター411号室
URL:https://payke.co.jp/company
代表取締役CEO 古田 奎輔 氏
東京都生まれ。高校を中退後、放浪の日々を送り、その後沖縄に移住。琉球大学に入学後、19歳で貿易業、EC事業を立ち上げる。県内貿易商社と協業し、沖縄県産品の貿易業や海外プロモーションに携わる。その後独立し、2014年に株式会社Paykeを創立。
協業担当者
富士通株式会社 第ニ行政ソリューション事業本部 事業戦略統括部 ビジネス戦略企画室 シニアマネージャー 佐藤 真喜子
全国自治体向けソリューションINTERCOMMUNITY21の企画・販売推進に従事。社会課題の解決に向けて、地域の人々や企業と一緒にデータを利活用したシステム企画を担当。
富士通株式会社 マーケティング戦略本部 戦略企画統括部 ビジネス開発部(富士通アクセラレータプログラム事務局) 松尾 圭祐
富士通アクセラレータプログラム事務局として、スタートアップ企業と富士通事業部とのマッチング、および協業推進サポートを担当。
富士通アクセラレーター公式SNSアカウント
本件に関するお問い合わせ
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メール:contact-fap@cs.jp.fujitsu.com
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