協業事例インタビュー

富士通とタッグを組んで生み出す、アダコテックによる異常検知の新たなモデル

“モノづくり大国”として発展を遂げてきた日本。特に品質管理は世界に誇るべき強みを持っており、“日本製=安心・安全”というイメージが定着しています。その一方で、製造業の現場は未だにマンパワーで品質のチェックが行われています。そうした状況を変えよう、とセンサーからデータを取得し、それを分析することで製造現場の効率化を図る取り組みが盛んになってきています。

株式会社アダコテック代表取締役池田満広氏は「センサーも有効な手段ですが、それだけでは検知しきれない部分がある。異常に気づかず製品に組み込んで世に出してしまうとリコールになってしまう。『これくらいでいいかな?』ではダメなんです」と語る。同社は国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)が開発した技術(高次局所自己相関特徴抽出法:HLACを用いた適応学習型認識方式)を使い、効率よく異常検知ができる仕組みを組み込んだソフトウェアを提供しているスタートアップです。

アダコテック社はFUJITSU ACCELERATOR第7期のピッチコンテストで優秀賞に輝き、プログラムに採択されました。同社が提供するソフトウェアは、10〜100枚ほどの画像データを学習するだけで正常のデータから逸脱した“異常”を検出してくれる、というもの。「正常を逸脱したものを検出する」モデルのため、前例がなく判断が難しいようなものも含め、異常をほぼ100%検出できるようになっています。

2012年3月に創業されたアダコテック社。創業から約7年経っている同社がなぜ、FUJITSU ACCELERATORに参加しようと思ったのか。また今回の協業を進めていく過程でどのようなものを得たのか。

株式会社アダコテック代表取締役の池田満広氏と富士通株式会社の高橋文之氏にお話を伺いました。

お互いの強みを活かせば、新たな価値が創出できる

株式会社アダコテック 代表取締役 池田 満広 氏

─なぜ、アダコテックさんはFUJITSU ACCELERATORに応募されたのでしょうか?

アダコテック 池田氏(以下、池田)

正直に申し上げると、今まで富士通さんがFUJITSU ACCELERATORといった取り組みを実施していることは知りませんでした。弊社の株主でもあるDNX Venturesの担当者からFUJITSU ACCELERATORを紹介していただき、「せっかくの機会なので応募してみよう」と思い、応募してみることにしました。そのときは、まさか2日後が締め切りだとは思っていませんでしたが(笑)。

─これまで1回もアクセラレータプログラムに参加されたことがないとのことでしたが、どのようなことに期待して参加したのでしょうか?

池田

我々だけでビジネスをやっていくには、どうしても限界があります。自社のリソースだけで成長していくのではなく、我々の技術を求めている会社と協業することで、よりスケール大きく、さまざまなことに挑戦でき、成長していけるんだろうな、と。そういう期待がありました。とりわけ富士通さんは大きな会社で、顧客もたくさん持っている。それでいて、我々よりも頻度高く顧客とコンタクトされているので、協業することでタイムリーに顧客のニーズが掴め、そして的確な顧客にリーチできそうだと思いました。

─一方、富士通さんはアダコテックさんに対して、どのような印象を抱いていましたか?

富士通 高橋(以下、高橋)

私たちは、電子機器などの生産ラインにおける部品実装や外観の異常を画像から自動検知するソリューションを提供しております。数年にわたって、この分野で事業を展開してきた経験を踏まえてもアダコテックさんの技術は尖っているな、と感じました。

生産ラインで出てくる多種多様な画像に対して対応しきれない部分がどうしてもありました。自社の技術のみで対応することに限界を感じていましたし、何より産業用の異常検知でHLACを用いた適応学習型認識方式をここまで綺麗に使われているのは初めて見たのでアダコテックさんとはぜひ一緒にやれたらいいな、と思っていました。

命題が近く、同じ言語で話せたからこそ協業がうまくいった

富士通株式会社産業ソリューション事業本部 第二ソリューション事業部 第二ソリューション部 高橋 文之

─採択が決まり、その後の協業検討はスムーズに進んでいったのでしょうか?

池田

滞る部分は特になかったですね。ただ、検討を進めたり、今後の展開を考えたりするにあたって、お互いに日々の業務を抱えていて“忙しい”ことが少し足枷になったくらいだと思います。

高橋

最初に話を聞いたときから、「いいな」とは思っていたのですが、実際に協業するとなると、実用化のレベルを把握しなければいけません。そのレベルを把握するための評価が大変でしたね。スケジュール的にも、3カ月くらいしか時間がなかったので……。

まずアダコテックさんからソフトを借りて、その使い方を覚える。その使い方試行錯誤するだけで1カ月も経ってしまったり、良い評価画像を持ってくるのに時間がかかったり。最終的には伊藤 桂一さん(株式会社アダコテック取締役兼システムソリューション部長)に質問しながら進めていきました。

─ちなみに評価というのは具体的にどういったものでしょうか?

高橋

我々が過去に評価の仕方で苦労した案件があり、その案件がアダコテックさんの「AdaInspector(アダインスペクター)を使って、ちゃんと評価できるか。その検証を行いました。この手のソフトはパラメーターの設定が非常に重要で、画像をそのままではなく加工してからソフトに入れることなどが大切なんです。最初、そのノウハウは全然わからず手こずっていたのですが、伊藤さんに対面で時間をとってもらい、画像を見ながら色々と教えていただいたおかげで無事に評価が完了した。すごく感謝しています。

池田

初期段階から率直にご相談いただけたことが良かったんだと思います。過去に我々もいくつかの会社から相談があり、モデルを貸したことがあるのですが、「何かうまくいかなかった」と言われて返される。

よくよく話を聞いてみると、正しい使い方をしていなかったがために変な結果が出ていて。最近はソフトウェアエンジニアのコンサルティング支援もセットにして、弊社のエンジニアが実施した結果とお客様が自前で実施した結果を比較して、価値を認めていただくやり方をしていました。

高橋

評価している最中に少しでも変な結果が出ると、自分のパラメーター調整が悪かったからではないか、とモヤモヤするんですよね。パラメーター調整に失敗して、変な結果が出ると大変なのですごくプレッシャーを感じていました。スケジュールも限られていたので、伊藤さんに助けを求めたのは改めて振り返っても正解でしたね。

自分たちが苦しんでいた案件の評価をやっていることもあり、それが成功したら新たな道が開ける。それがわかっていたからこそ、絶対に確かめたいと思っていました。アダコテックさんと協業することで、新たな可能性を切り開くことができ、よかったです。

池田

我々もそうですし、高橋さんも含め、担当者が自分のこととして捉えていた。そしてお互いが抱える命題がすごく近かった。同じ温度感で進められたからこそ、協業がうまくいったんじゃないかと思います。同じ言語で話せたのは大きかったですね。

「何でもできる」は「何もできない」と同義

[写真右] 富士通株式会社FUJITSU ACCELERATOR事務局 吉崎 裕哉

─アダコテックさんはピッチコンテストで優秀賞にも輝きました。今後の展開をどのように考えているのでしょうか?

池田

良いパッケージソフトを作り、それを売る。今まではそのアプローチで進めてきました。もちろん、それで結果も出始めているので嬉しいのですが、今のままではその嬉しさは点でしかない。

もっと線で、面で継続していき、広がっていくスキームをつくらないといけない。そのために現在、プロダクトのあり方も変えていて、パッケージソフトそのものの仕様も変わってきています。もちろん変えてはいけない部分は変えていませんが、もっと分かりやすいインターフェースに変更したり、属人的にしか分からない部分を減らしたり、もっと多くの顧客が分かりやすく使えるようにしないといけないと思っています。

聞けば分かるけど、聞かないと分からないような仕様になっていてはダメです。ソフトウェアが属人的な仕組みになっているのはとてもリスキーなので、弊社の伊藤が抱えているノウハウをクラウド上にあげ、伊藤の存在が関係なく、どの顧客にも一定の精度を永続して提供できるようにしなければいけません。

また、我々が展開している事業領域はあくまでソフトウェアまわり。今後は富士通さんが持っているソリューションを活用して、生産システムと繋げていくこともやっていけたらいいな、と考えているところです。

高橋

今年度くらいまでには評価した結果をもとに、今回検討してきた協業モデルを実現するところまで進めたいですね。私たちの外観検査ソリューションにアダコテックさんのソフトウェアを組み込ませていただき、新たな価値をお客様に提供する仕組みをつくる。少なくとも、それが実現できるところまではやっていきたい。

さらには、検査だけでなく、製造業における設計から製造および保守までのものづくりソリューションにアダコテックさんのソフトウェアをつなげるといったことまで進められるといいな、と思います。そこまで展開することで、お互いに協業した意義が生まれてくると思います。

池田

我々も富士通さんの資産を使わせていただき、そういった展開をしていければ、と考えています。ここから先、トリッキーなことは発生しないと思うので、セオリー通りに進めていけば、お互いが目指す未来を実現できるのではないか?と思います。

─ありがとうございます。最後にFUJITSU ACCELERATORへの応募を考えているスタートアップに一言あればお願いします。

池田

すでに実績があるもの、まだ実績がないもの、今後高い確度で実績になりそうなもの。この3つをそれぞれ分けて考えることが大事です。「何でもできる」というのは「何もできない」と同じこと。すでにどういった技術を持っていて、今後どんな世界を実現したいのか。そのために富士通さんと組むのはなぜなのか。そこを正直に伝えることで、お互いの協業するメリットが生まれ、より早く、より精度高く実現できていなかったことが実現できるようになるのではないかな、と思います。

(執筆:新國 翔大 撮影:齋藤 顕)

株式会社アダコテック

産総研特許技術をコアに、オリジナル検知ソフトウェアで課題を解決します。

代表取締役 池田 満広 氏

富士通株式会社

産業ソリューション事業本部 第二ソリューション事業部 第二ソリューション部 高橋 文之

FUJITSU ACCELERATOR事務局 吉崎 裕哉

富士通との共創活動にご興味がある方へ

富士通株式会社

〒105-7123 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター
URL:http://www.fujitsu.com
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FUJITSU ACCELERATOR
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株式会社アダコテック

〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-12-10 BEAKER 312
URL:https://adacotech.co.jp/

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