反響続々!note主催イベントでの登壇が実現 「デザイン思考テキストブック」に富士通デザインセンターが託したもの

反響続々!note主催イベントでの登壇が実現
「デザイン思考テキストブック」に
富士通デザインセンターが託したもの



掲載日 2022年1月11日

2021年10月、富士通デザインセンターは、ミラノ工科大学デザインスクール(POLI.Design)と共同で制作したノンデザイナー向けのデザイン思考テキストブック『Transformation by Design デジタルトランスフォーメーションに挑戦するデザイン戦略とサービスプランニング』(以下、『デザイン思考テキストブック』)の日/英版PDFを無償で公開。以来、様々な外部メディアで反響を呼び、大きな注目を集めています。
こうした中、12月3日にはnote主催のトークイベントに、宇田哲也センター長と高嶋大介が登壇。モデレーターを務めたnoteの深津貴之CXOによる「デザイン思考とは何か」という投げかけへの回答に始まり、『デザイン思考テキストブック』の制作背景や見どころについて両名が思いの丈を語りました。
当日は、「#教えてデザイン」のハッシュタグで、視聴者からの感想や質問を受け付けながら進行。ラストのQAタイムも含め、大変刺激的な90分間となりました。



イベントレポート

トークセッションは、QAタイムを除いても約70分と充実の内容!そのため、これから『デザイン思考テキストブック』を手に取る方にお伝えしたいポイントにフォーカスして、その一部をご紹介します。前後が気になる方は、以下に掲載されておりますアーカイブ動画よりぜひ全編をご視聴ください!

FUJITSU×note 世界に学ぶ、デザインとデザイン思考の伝え方 なにを決めて、どう作り、どのように伝えていくのか 富士通株式会社 デザインセンター長 宇田 哲也、富士通株式会社 コミュニティディレクター 高嶋 大介、note株式会社 CXO 深津 貴之 12月3日(金)19:00-20:30 #教えてデザイン

下記のリンク先からアーカイブ動画をご覧いただけます。
詳しくはこちら(外部サイト) >



——— なぜテキストを制作することになったのか?

プロジェクトを担当した高嶋

当初は、富士通グループの国内・海外11拠点で「共創ファシリテーター」を育成するための教育プログラムで使用するテキストとして想定していた。ノンデザイナーにデザイン思考をレクチャーする術を検討するべく、2017年にはシリコンバレー、翌2018年はヨーロッパへの調査も実施。その後2020年10月からプログラムを実施するにあたり、コロナの影響で当初予定していたリアルでの開催ができなくなったため、オンラインでの実施を念頭にテキストブックの形式で仕上げることに。
パートナーとしてミラノ工科大に加わってもらったのは、アカデミックな知見に基づく体系的な情報を盛り込みたかったからという理由に加え、ヨーロッパにおける長期的なビジョンに基づくデザイン思考のアプローチが、富士通のデザイン思考の特徴と合致すると考えたから。また、ミラノ工科大のカリキュラムは、デザインの視点だけでなくビジネスの視点もカバーされている。富士通が得意とするテクノロジーの領域と掛け合わせることで、ビジネス・テクノロジー・クリエイティブの3つの要素を兼ね備えたテキストブックに仕上がった。(高嶋)


——— 外部への公開を行った理由は?

デザインセンタ―長 宇田

近年、「デザイン」や「デザイン思考」というキーワードが様々な場面で用いられるようになっている。その一方で、「デザイン」という概念の解釈は無数に存在しており、人によりまちまち。「デザインとはこういうもの」という共通認識となり得る体系的な情報を、富士通から発信したいと考えた。さらに言えば、シリコンバレーなどでは、企業を跨って社会の共通課題解決に向けての知の対流が発生しているのが通例だが、日本では各社が個別に解こうとする風潮が根強く、知識の共有が十分になされてこなかった。これでは、日本が世界のスピードに太刀打ちすることはできない。こうした問題意識もあり、無償での公開に至った。(宇田)


——— お二人が考えるこのテキストブックの見どころは?

個人的に好きなのは、第3章。デザイン思考について書かれた本ではあるが、『Transformation by Design』というタイトルにあるように、目指すところはトランスフォーメーション。また、究極の目的は、トランスフォーメーションの実現により日本を強くすることにある。つまり、デザインは“How”。第1章、第2章の後に、「デザインとAI:デジタルトランスフォーメーションの時代に」と銘打たれた第3章が続くのも、そうした意図によるもの。(宇田)

第4章、第5章は手段の話なので、やはりデザインの考え方や歴史を語っている第1~3章を重点的に読んでほしい。特におすすめなのは第2章。実際にミラノ工科大の講義を受けて初めて体系的に知ることができたデザイン思考の変遷が端的にまとまっている。さらに第2章には、富士通のHXD(ヒューマンセントリック・エクスペリエンスデザイン)への想いも詰まっている。デザイナーの方なら、第1章は読み飛ばしてしまっても良いかもしれない。(高嶋)


宇田センター長が選ぶ、セッションのハイライトBest3

セッションの様子(左:noteの深津貴之CXO)
1:「富士通のデザイン思考は長期的ビジョンに基づく」との高嶋さんの発言を、すかさず「ビジョンドリブン。まず北極星を置きに行く」という表現で受けた深津さんの切り返し。
デザインセンターにとっての北極星は、「デザインで日本を強くする」こと。当然、富士通単独で実現できることではないので、多くのデザイナーや企業に、北極星を目指して一緒に走ってほしい。また、北極星への到達のため、社内外に対してデザインやデザイナーの価値をこれまで以上に浸透させるのは私自身のミッションだと考えています。(宇田)

2:QAタイムに「クラシカルデザイナー」に関する問いが出た際の、深津さんによる「クラシカルデザイン」のについての補足。
「クラシカルデザイン」は、ともすると「見た目のデザイン=古臭い」という図式で受け取られてしまいがちな言葉。しかし、ジョン・マエダが2019年に発表したレポート(第1章で解説)で記したように、「デザインシンキング」に対比される概念であって本来はネガティブな言葉ではないし、現在においても大切に扱うべき領域。トークの中でこの点をフォローすることができて良かったです。(宇田)

3:QAタイムのラストで、「デザイン思考」獲得のためのアドバイスを求められた際、BTC(ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ)の各チャネルに通じるための多様な「プロトコル」を持っておくことの必要性について言及したくだり。
デザインセンター自身が、まさに重要視しているところ。「異なるバックグラウンドを持つ人の視点や言葉をどれだけ知っているかが大切」という深津さんの言葉が呼び水となり、「プロトコル」という表現が出てきました。(宇田)

登壇を終えて二人のコメント

『デザイン思考テキストブック』の公開以来、デザインを生業とする外部の方々から、非常に多くの共感の声をいただきました。また内容についてだけでなく、無償での提供を行っていることについて、好意的な言葉も多く寄せられています。
今回の登壇にあたっては、テキストに込められた想いを余すところ無く発信できるよう、約1ヶ月の間にテキストを何度も読み返し、制作に関わってきたデザイナーの皆さんとのディスカッションを重ねた上で臨みました。あまりのプレッシャーに、前日はほとんど眠れませんでした(笑)。当日は、深津さんの巧みなアシストもあり、制作ディレクターを務められた宇多村志伸さんを始め、デザイナーの皆さんの想いに報いることのできるトークになったと感じています。
本書の持ち味は、デザイナーかノンデザイナーかを問わず、一人ひとりの「クリエイティブ・コンフィデンス(創造性への自信)」〈第2章で詳述〉に強く訴えかける内容に仕上がっている点にあります。ぜひ、自分自身のアップデートに活用していただきたいと思っています。社内利用に留めずに、社外に公開したことによるムーブメントはすでに起き始めています。ぜひ、テキストブックを起点とした体験そのものに加わっていただければ嬉しいです。ともに、北極星を目指しましょう。(宇田)


もともとノンデザイナー向けを想定して制作したものだったので、10月以降、社外を中心にデザイナーの方々から多くの反響が寄せられたことに驚いています。また、数年前の構想時点では、テキストブックの広がりとして、①富士通社内→②パートナー→③社外という少なくとも3ステップを思い描いていたので、外部への公開によって「共通言語」としての一歩を踏み出せたことを本当に嬉しく思っています。
今回のイベントは、深津さんや視聴者の方々の興味・関心が、テキストブックのどこに向いているのかがよく分かる貴重な機会になったと感じています。とりわけ、ミラノ工科大現地での受講で感銘を受けた内容が詰まった第2章や、富士通がこうしてテキストブックを制作する意味を込めた第3章にクローズアップしていただけたのは、ありがたいことでした。
社内には、「デザイン思考」という言葉をついつい敬遠してしまう、という方もいらっしゃるかと思います。けれども、何か新しいことを発想しようとする時、人は無意識のうちにデザイン思考的なアプローチをしているはずです。経営戦略上、あるいはお客様のDX実現のためにデザイン思考が求められている今こそ、このテキストブックを活用して、これまで無意識に行っていたことを、実践的なスキルとして自覚的に使いこなせるようになっていただけるといいなと思っています。(高嶋)


デザインセンター長宇田 哲也
ジャパンマーケティング統括部高嶋 大介

デザイン思考テキストブック「Transformation by Design デジタルトランスフォーメーションに挑戦するデザイン戦略とサービスプランニング」(日本語版・英語版)

  • 注:
    日本語版(23.8 MB/134 pages)、
    英語版(26.2 MB/132 pages)、
    上記のファイルはPDF形式で作成されており、ダウンロードで見開きで、ご覧いただけます。Adobe Acrobat Readerが必要です。
    2021年10月28日誤記を修正しました。

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