デザインで導く、行政サービスの望ましい形
国民ニーズに応えるAIチャットボット

デザインで導く、行政サービスの望ましい形
国民ニーズに応えるAIチャットボット



掲載日 2021年6月10日

保険料の徴収や、年金給付等の年金事業運営を行う日本年金機構様。各種の申請時期には国民からの問い合わせが集中して寄せられるため、いかに業務の逼迫を回避しながら、国民に寄り添った対応を実現していくべきか、という課題を抱えていた。これを解消する手立てとして、機構のHPに、富士通のAI技術を活用したチャットボットサービス(CHORDSHIP)を搭載。富士通デザインセンターのデザイナーらが、利用者の視点に立ったデザインを施した。



目指したのは「ユーザーフレンドリー」なサービス

チャットボットの画面

2019年12月に政府が閣議決定した「デジタルガバメント実行計画」や、2020年7月の「骨太の方針2020」では、データ活用を通じた行政サービスの質の向上が謳われている。そこで重視されているのは、利用者(=国民)のニーズにいかに応えるかという点。
日本年金機構様がチャットボットに求めていたのも、国民のニーズを十分に満たす、新たな「国民接点」としての役割だった。そこで、画面のレイアウトから表示する文言に至るまで、すべてをサービスデザインの手法で検討。ユーザーフレンドリーなチャットボットを追求した。



数値化できないニーズや課題を掘り当てある

プロジェクトは、国民接点の拡充に向けて、ユーザーへのヒアリングやユーザビリティテストといったサービスデザインのプロセスを用いて、潜在的なニーズや課題を明らかにするところから始動した。



通常、5件のユーザビリティテストにより、テストした範囲の課題の約85%を洗い出すことができるとされているが、複数のユーザーグループを設定し、全体で20件ほどのテストを実施。その結果をもとに、操作ボタンや入力フォームの配置、一度に表示する選択肢の数、一文の長さといった操作性・視認性に関する点はもとより、使用する語句の分かりやすさといった利用者の認識に関わる点まで、総合的にデザインを行った。

ユーザーヒアリングやユーザビリティテストの実施風景

  • (注)
    BP :ビジネスプロデューサー


その他の「接点」も含めたトータルでの使い勝手を意識

チャットボットそのものの機能の磨き上げに加えて、コールセンターや年金事務所といった、他の「国民接点」も含めた全体最適の視点も大切にした。プロジェクトの真のゴールは、「行政サービスの質の向上」。仮にチャットボットの情報だけで疑問が解消しなかった利用者が、容易に他の解決手段にアクセスできるような動線を整えた。人間中心設計/人間工学を専門領域とするデザイナーの境は「ユーザーにとっては『今、目の前にある困りごとを解決したい』が一番。ユーザーの視点に立って、チャットボットがどうあるべきかを検討しました」と振り返る。

コールセンター等への誘導画面


段階的なリリース・運用を通してクイックに機能改善

2021年2月現在、日本年金機構様のHPに設けられているチャットボットのメニューは、期間限定公開のものも含め全6種。2020年9月以降、数回に分けてリリースを行い、運用後の検証結果をふまえ速やかに改善を実施、また後続メニューの機能に反映させてきた。
デザイナーの小黒は「もともとCHORDSHIPはアップデートが容易にできるように作られています。そのため、運用過程でのクイックな改善がしやすいサービスと言えます。今回もその強みが活かされているのを感じます」と話す。

導入後、チャットボットの利用が初めてという76歳のユーザーからも、「使いやすい」との声が届いた。要件定義の段階からプロジェクトに携わってきたデザイナーの森下は、「望ましい『国民接点』としてどうあるべきかを、デザイナーの目線で検討し、シナリオ作成からその後の検証・改善に至るまで一気通貫で関わることができました。サービスデザインの真価を発揮できたプロジェクトであると思います」と胸を張る。「行政サービスの質の向上」に寄与する運用改善が、現在も続けられている。



デザインセンター森下 晶代
 境 薫
 小黒 興太郎
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