アイデアの“純度”が高いまま
製品を開発、ユーザーに届けるために(後編)

掲載日 2021年1月26日

富士通株式会社(以下、富士通)が経営方針として掲げるDXビジネスの推進。そこで求められる「デザイン思考」は、富士通の持続的成長を支える軸の一つとなるものです。そのため、デザインセンターが企画・製品開発・営業・プロモーションといった製品の開発から提供に至る工程に関わる機会が増えることは論を俟たず、デザイナーはもちろん、非デザイナーも仕事にデザイン思考を取り入れることが求められるでしょう。

デザインセンターでプロダクトデザイナーとして活躍する森口健二氏は、もともと出向で富士通に勤務し、携帯電話やパソコンのデザインに携わってきました。そこで、富士通が掲げる「Human Centric Experience Design」のもと、泥臭くとも真っ直ぐな姿勢で仕事を進めるカルチャーにはまって転職。富士通の社員となり現在に至ります。森口氏も、デザイナーが関わる機会が増えることで製品の価値を高めること、また、DXビジネスにより広がる領域に期待を寄せています。

後編のポイント

  • デザイナーには、創出したアイデアや価値を純度が高い状態のままユーザーに届けたいという思いがある。
  • そのために、デザイナーが製品開発からプロモーョンまで関わることが大切である。
  • 富士通では、互いに協力しながら泥臭く製品を開発していくカルチャーを背景に、そのような環境が整いつつある。


全段階でデザイナーが関わることで好循環が生まれる

——— 製品の企画段階から参加することについて、プロダクトデザイナーがデザイン設計以外の工程に携わる効果をどう考えていますか。

森口: 前提として、デザイナーには、ユーザーに新しい体験を得てもらうために創出したアイデアを、純度が高い状態のままでお届けしたいという思いがあると思います。

製品の開発には多くの部署や多くの人が関わり、効率やコストを鑑みると分業的になります。たとえば、技術担当が前機種のスペックをベースに新しい液晶を考え、並行してデザイナーが外枠を作る、そしてそれを組み合わせて世に出す、といった感じですね。するとどうしても、当初実現したかったことが、開発の過程で少しずつ薄れていってしまう。結局、製品としての最終形態は前機種からちょっとスペックが進化しただけ、となりがちなんです。

デザイナーが製品開発の企画段階から全行程に携わることで、当該製品の価値を正確に伝えるための役割が期待でき、最初のアイデアをユーザーまできちんと届けることができると思っています。さらに、そのアイデアがそのままユーザーに届けられるようになると、アイデアの良し悪しがストレートにフィードバックされるようになります。これを次の製品の開発に生かす好循環にも期待していますね。

——— その工程では、さまざまな部署と仕事をすることになると思います。その点についてはいかがでしょうか。

森口: プロモーションの部署と近い関係になったと思います。これまで、製品開発・プロモーション・営業が分断しがちだと感じていましたが、今は、その方々とも繋がりを持って、当初のアイデアから重要なポイントを共有・協業し、「こういうところをユーザーに伝えていきましょう」という話ができるようになりました。

さらに、協業で良い効果が確認できたことで、プロモーションや営業などの部署も製品企画の上流段階から参加してもらっています。中核部分の意識共有ができ、それがベースになることで最初から最後まで一貫して進めやすくなったと思います。



富士通の魅力は「泥臭さ」と「事業領域の広がり」

——— 出向を経て富士通に転職されたとのことですが、富士通のどこに惹かれたのでしょうか。

森口: 惹かれたのは、仕事の進め方における「泥臭さ」でしょうか(笑)。富士通のカルチャーが自分に見事にはまりました。

富士通は「Human Centric Experience Design」を掲げ、人を中心にした製品作りを大事にしています。ユーザーに対して真っ直ぐな姿勢で、効率ばかり求めるのではなく、目的に対して泥臭く仕事を進めていく。スマートな仕事とは言い難いかもしれませんが、とても大切なことだと思いますし、デザイナーとしてそこに共感したんです。

たとえば、高齢者向けの「らくらくホン」があります。キー(ボタン)の形状は徹底した調査の結果から導き出されたサイズです。ターゲットを絞ってユーザビリティを突き詰める、その地道なこだわりが製品の価値を高めたと思います。

もう一つ、富士通には新しいことにチャレンジができるカルチャーが育まれていることも大きな魅力でした。自分が担当している業務以外でも、「こんな製品を作ってみたい」というチャレンジを表現できる機会があるんです。

さらに、アイデアはあるものの自分のスキルだけで進めるのが困難な時は、他の社員の協力を仰ぐこともできます。私はプロダクトデザイナーですが、空間デザインを専門とするデザイナー、UI/UXに強いデザイナーなど、さまざまな分野に渡って能力や知識を持った人たちが沢山いて、協力し合える環境です。

——— その環境の中で、デザイナーとしての展望をお聞かせください。

森口: 今、富士通はDXビジネスを推進しています。その事業展開において、関わる領域は広がり、当然、デザイナーが関わることができる領域も広がります。そこに期待を感じています。とはいえ、変化の激しい市場では、ユーザーの触手が動くような興味のタッチポイントがないと、新しいサービスや製品をいくら考えても実ることはありません。そのタッチポイントを、より一層、的確にスピード感を持って作りあげられるデザイナーになりたいと思っています。

富士通が生み出す“もの”は、ユーザーが見て触れて使うものです。プロダクトデザイナーの一番強みは、そこに対して、どういうデザインがいいのか、どういう形状がいいのかといった知見や探究心を持っていること。それを生かしながら、広がっていく新しい領域にチャレンジしていきたいですね。

——— 最後に、デザイナーとして富士通に入社したい学生やキャリアの方々、富士通のデザイナーと仕事する方々に向けて一言お願いします。

森口: 富士通はやりたいことにチャレンジできる環境があります。自分が持っていない能力を持っている人がいて、さらにはDXビジネスの推進により事業分野も拡大しています。ぜひ一緒にチャレンジしていきましょう。

社員の方には、私たちデザイナーをもっと活用してくださいとお伝えしたいです。先述しましたが、デザイナーは、製品開発の企画段階から見ることで当該製品の価値を明確に理解して、その価値を伝えるためのツールやスキルを持っています。

たとえば、新製品紹介の資料は、スペックや仕様を並べるだけより「家の中でこんな使い方ができます」といったユーザー体験の訴求を軸とした製品紹介の方が響くはずです。私自身も、ユーザーに響くポイントを浮き彫りにすることは得意で、常に探究心を持って取り組んでいます。資料だけでなく、営業活動などにおいても私たちがご一緒するメリットはあると思います。さまざまな場面で、是非、一緒に動いていきたいですね。

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