会社員がNPO活動をするということ 「ハナラボ」メンバーインタビュー

会社員がNPO活動をするということ
「ハナラボ」メンバーインタビュー



掲載日 2023年6月14日

「私たちのパーパスはイノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことです」
富士通が2020年に宣言したこのパーパスは、サステイナブルな社会の実現、テクノロジーで幸せを紡ぐことを目指しています。このパーパス発表以降、富士通では様々な社会課題への取り組みが始まり、従業員ひとりひとりが社会問題を「自分ごと」として考える文化が根付いてきました。
そのような状況の中、富士通はパーパス実現に資する社会課題解決を図るNGO、NPOを支援する目的で「戦略的コミュニティ投資」を立ち上げ、2022年度は19件が選ばれました。

2022年度の投資対象のひとつとして選ばれた「ハナラボ」は、デザイナーの森下が代表の一人を務めるNPO法人です。
女子学生を中心に女性たちの創造力やリーダーシップを育み、未来の社会変革の担い手を生み出すことが活動の目的です。社会課題の解決をテーマにした「新しいモノ、サービス、価値観」を生みだすことを通して、女子学生自身に自分たちで社会変革ができることを理解してもらい、キャリア形成の可能性や選択肢を広げることをミッションとしています。

NPOやNGOという言葉は知っていても「NPO活動をしている富士通の社員」を知る方は少ないのではないでしょうか?
今回は森下と、同じく富士通グループ会社の社員でありハナラボメンバーである淺尾の二人から「会社員がNPO活動を行うこと」について話を聞きました。

インタビュイープロフィール

  • 森下 晶代
    富士通 戦略アライアンス本部 Strategy&Co-Creation
  • 淺尾 理沙子
    富士通Japan株式会社 パブリック&ヘルスケア事業本部 クロスインダストリー事業部

部署名・肩書は取材当時のものになります。

左:淺尾、右:森下(インタビューはオンラインで実施しました)

会社員のスキルアップとNPO活動との意外な関係

森下はデザイナーとして社内外のパートナー企業との共創やコンサルティングを手掛けており、同時にNPO団体「ハナラボ」の代表理事の一人でもあります。「ハナラボ」では、理事としての運営業務のほか、デザイナーのスキルを使ってワークショップや制作業務など、さまざまな業務に携わっています。会社の中でのデザイン活動と、NPO活動でのデザイン活動とは、どのような点が異なるのでしょうか。

森下: NPOの活動では、現場の課題や当事者に向き合えるチャンスがあります。そしてNPOで出会う社会課題や当事者達は、企業の中から見えるものとは全く違います。
課題に優劣はなく、富士通のような大企業と、小さなNPOであるハナラボでは、解くべき社会課題のサイズが違いだなと実感しています。
私のデザインスキルは、当然、仕事上では会社の物差しで評価されます。でもNPOで同じスキルを活用したら、相手からは全く違うフィードバックがあるんです。そして、そのフィードバックで得た気づきは、社内の業務でも生かせることがあり、そうするとまた仕事の面でも新しい展開がある。小さな手ごたえかもしれませんが、そういった『スキルの価値循環』が生まれます。
NPO活動で出会う人と仕事上のお客様はもちろん違いますが、状況としては通じるところもあります。
だから、NPOの気づきを仕事で生かし、仕事での気づきをNPO活動に生かす、その交換作業の繰り返しで、実は私自身が一番成長させてもらっています。この『交換作業』を、私は『価値の交換』だと思っていて、いろいろな人にこれを経験してほしいと思っています。NPOのような活動をすることで、仕事に対しても問いの立て方が変わり仕事の質が変わる経験は誰にでも起きうるのではないでしょうか。
スキルを活用するなら副業して稼げばいいという気持ちも分かるし、NPO活動をすることで『会社員がほかの団体の経営もやるのか』と思われたりもするけれど、私自身のNPO活動には、こうしたかけがえのないものがあります。
ハナラボではジェンダーの問題に取り組んでいますが、みなさんにはジェンダーの問題に限らず社会課題や他の団体など気になるものでよいので、何か社会とつながる活動をすることをお勧めしたいです。

森下の中には、ハナラボの活動を通して自身が成長して変わっていくこと、そのことでジェンダーの問題が良くなるという仮説があります。
同時に多くの人々が何らかの社会課題に触れ、自身や企業の中で何ができるかを体感してほしい、そのために自分の経験を伝えたいという強い思いも持っています。

入社4年目の淺尾は大学生の時にハナラボのメンバーに応募しました。彼女は大企業の社会貢献活動とNPO活動の違いを次のように感じています。

淺尾: 大企業のダイバーシティの取り組みや制度の改革も意味があることですが、現場まで下りてきていない現実もあります。NPOは草の根、現場での活動で、大企業の活動とは少し質が違うことを知っていただきたいです。


ハナラボと富士通の緩やかな結びつき

DXカンパニーとして変化し続ける富士通と、ジェンダーのあり方を変えようとするハナラボは親和性がある、と森下は感じています。

森下: 今回の戦略的コミュニティ投資に選ばれる前から、ハナラボのサイトに富士通のロゴがあったり、デザインセンターの施設でハナラボのワークショップを行ったり、富士通の人材開発の部署の方にいろいろとご相談したりと、ハナラボと富士通は良いパートナーシップ関係が続いていました。ハナラボと富士通の持つメソッドのやり取りなど、できることはまだまだあると思っています。また、学生メンバーによる富士通へのOG訪問や、実際に富士通に入社する方も毎年出ています。

淺尾はそのような「ハナラボから富士通に入社した学生」のひとりです。大学2年生の時にインターネットでハナラボを知り、2年間学生記者として活動しました。

淺尾: 当時、なにか学外での活動、特に学生記者をやりたくてハナラボにジョインしました。
ハナラボのジェンダー問題への取り組みも、私の考えとマッチしたというのもあります。
学生記者の活動では、ハナラボの社会人メンバーやインタビューでお会いする社会人など、ここでしか知り合えない人との関係性が出来たり、同じ学生メンバーとの学びあいやポジティブな気持ちのやりとりができたりなど、とてもいい時間を過ごしました。

淺尾は学生記者として、インタビューや執筆を担当

キャリア形成の面では、社会人メンバーの方に就活の相談をしたり、みなさんの働く姿を見て、働くことに対するイメージが持てたことで、入社後のギャップが少なかったように思います。
新入社員は自分が今いる職場が全てと思いがちですが、ハナラボの活動を通してロールモデルが出来ましたし、女性でも、もっと言うと性別は関係なく、仕事もプライベートも充実できることが入社前に分かっていたのは良かったと思います。
また、私は入社後に社内ポスティング制度でキャリアチェンジをしています。ポスティング応募の時もハナラボで学生時代からお世話になっている森下さんに相談出来たのは心強かったです。
ハナラボの活動は、基本的に仕事に無理のない範囲にしています。以前は学生と1on1やメンターとして接する機会もありました。学生メンバーの考え方や持っている情報は年齢がさほど変わらない私にとっても新鮮で、逆に得ることが多いという実感がありました。


それぞれの立場で見える「社会課題」を、立場を超えて理解し共有すること

富士通社員でもありNPO団体のメンバーでもある二人にとって、社会課題を解決してよりよい社会を作る、という昨今の社会の風潮はどのように見えるでしょうか。
森下は、大企業とNPOでは社会課題に対する役割がそもそも違うと言います。

森下: ハナラボは現場に入って活動していますが、富士通が同じように現場に入ることが良いとは思っていません。
富士通ができること、ハナラボが得意なことが異なるのは当然だからです。
それよりも大事なのは、それぞれの違いを知り、お互いに想像すること。理解と共有です。もう一つ重要なことがあります。それは、社会課題は簡単には解けないと知ることです。
その二つを知ると、実際に社会課題に向き合ったときに働く想像力が格段に違ってきます。

ハナラボ webサイト

最後に、この記事を読んで何らかの NPO活動に興味を持った方へのアドバイスを聞きました。

淺尾: NPOにもよると思いますが、ハナラボの場合は気になるときに活動して、忙しいときにはお休みすることができます。そういう緩やかな活動もあるので、少しでも気になるなら一度門戸をたたいてみてください。ご興味ある方はぜひハナラボにご参加ください。

森下: 一年に1日、半日でもいいので、興味を持ったNPO活動に参加してほしいです。気づいたらやってみることで、何かかけがえのないものを得ることができる気がしています

ハナラボをはじめそれぞれのNPO団体は、取り組んでいる社会課題は違えど、それぞれ応援したくなるような素晴らしい活動です。

今回は、富士通社員がNPO活動を通して本業との価値の交換作業を行っていることをご紹介しました。この記事を通して、社会活動に興味を持っているみなさんの背中を押し、新たな価値交換が生まれることを願っています。



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