ユーザー・開発者に寄り添う製品づくり
会議支援システム「GiziNote」

掲載日 2020年12月10日



会議の際に時間を取られるのが議事録の作成。発言内容を急いでメモしたり、終了後に改めて内容を確認したりと、完成までに手間がかかる。こうした作業をAIのサポートで大幅に効率化しようと開発されたのが会議支援システム「GiziNote」だ。会話内容の自動要約など最新技術の活用とともに、ユーザーにとっての使いやすさを強く意識して開発された。最新システムに込めた、きめ細かいデザインのこだわりなどについてデザイナーに聞いた。


議事録を素早く快適に作成

2019年12月に発表された「GiziNote」は、音声の自動テキスト化に加え、他社との差別化を図るため、富士通のAI技術「Zinrai(ジンライ)」を活用した最新の機能が搭載された。とりわけ議事録の要約については、ボタン操作1つで圧縮レベルを調整し、長時間の会議を50%や30%など希望の長さに要約できるのをはじめ、誰が発言したかを判別して表示し、重要箇所にマーキングすることもできる。さらに、あらかじめ議題ごとに時間を設定しておけば、会議の進行を管理するファシリテーター役を果たすことも可能だ。会議終了時にはすでに議事録としてまとまっており、複数の参加者による同時編集もできるので、スピーディーかつ快適に議事録を仕上げることができる。


シンプルな使いやすさとやさしい色を意識

「GiziNote」の開発でデザインを担当したのは、富士通デザインセンターの宮武志保ら。もともと議事録の作成を「同じ作業を複数のメンバーが行う煩雑な作業」と感じていた宮武は、魅力的なサービスでやりがいのある仕事と受け止めたと言う。2019年6月ごろ話を持ち掛けられ、約2か月間にわたってシステムに直接触れながらデザインした。
特に意識したのは、ユーザー目線に立ったシンプルな使いやすさだった。「会議の参加者が表示される文字に集中できるように、余分な装飾をつけず、ノートに書くようなフラットな感覚で使える画面にしたいと考えました」

「GiziNote」画面のイメージ

そうしたシンプルで明快な画面デザインを構築するため、宮武はユーザーの操作手順を考えながら重要なボタンの配置や色にこだわった。編集内容をいったん保存するロックボタンは、画面右上の目につきやすい位置に。会議の開始や要約を実行する大事なボタンは緑色にした。「業務用システムのボタンは青系が多いのですが、青色はやや冷たい印象を与えてしまうため、ユーザー心理に配慮して会議の雰囲気を温かくできる緑色を採用しました」 さらに参加者の発言などを表示するポップ画面のサイズを統一することで、ユーザーの使いやすさとともに開発者の負担も減らす、バランスに配慮したデザインとなった。

テレワークが進む中でより注目されるサービスに

「GiziNote」による効率化が進むことで、会議の参加者が本質的な業務に専念できれば、働き方改革にもつながる。また、現状のシステムは出席者のアカウントで発言者を識別・記録しているが、宮武は「将来的に発言者の音声で識別できるようになればさらに使いやすくなりますし、お互いの顔が見えないテレワークが一般的になる中で、発言者が自動的に識別されて記録される機能はより注目されると思います」とユーザー視点でのアイデアを語る。

【AI】「SYNCDOT GiziNote」議事録を起点とした業務サイクルの変革の紹介

開発者らがデザイナーの視点を持てるようサポートを

「GiziNote」の開発について宮武は「開発者にユーザー視点についてアドバイスしたり、逆に思いを聞いたりと、納得しながら作業を進めることができました」と振り返る一方で、改めてサポートの必要性を感じたという。
「すべての製品づくりにデザイナーが関わるわけではないので、どんな人がどんな思いでこの製品を使用するのか、ユーザーに寄り添い、人を中心に考え抜くデザイナーの視点をもっていただくことが大切だと思います。今後も開発者の方と直接やり取りをしながらサポートに努めたいと思います」
富士通がIT企業からDX企業へと変革する中、社内では現在、デザイン思考を実践しようと意欲的に取り組む社員を集めたプロジェクトが進み、宮武はアドバイザーを務めている。「デザイナーの支援が必要なくなるくらいに富士通の全社員がデザイン思考を身に付けDXビジネスに生かせるよう、活動していきたいと思っています」

デザインセンター 宮武 志保
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