素材技術の未来をフレキシブルにデザイン!古河電工×富士通デザインセンター共創プロジェクト

素材技術の未来をフレキシブルにデザイン!
古河電工×富士通デザインセンター共創プロジェクト



掲載日 2023年2月22日

富士通デザインセンターが、これまでの製品開発で培った経験とデザイン思考を活かして提供するUX起点の総合デザインサービスは、ついに化学技術開発の分野にまで広がってきました。2021年7月、古河電気工業株式会社様の研究開発本部とエクスペリエンスデザイン部による、先端技術開発の共創プロジェクトが始動。
このプロジェクトのミッションは、新たに取り組んでいるポリマー材料に関する新技術の利用シーンをデザイン思考のアプローチで見出すこと。今後数年をかけて市場リリースを目指し、事業化へ向けた開発を加速させるための本プロジェクトは、全員参加でのビジョン形成やアイディエーションが奏功し、古河電気工業株式会社様への効果的な訴求を果たしました。今回はその軌跡をたどります。(キービジュアルはプロジェクトで生まれた事業仮説の一つ Rain marker)

左より富士通デザインセンタ― 小池・村島、古河電気工業株式会社 山崎様、桜井様

インタビュイープロフィール

  • 桜井 貴裕 様 :
    古河電気工業株式会社 研究開発本部
    情報通信・エネルギー研究所 ポリマー材料開発部部長
  • 山崎 崇範 様 :
    古河電気工業株式会社 研究開発本部
    情報通信・エネルギー研究所 ポリマー材料開発部 電子機能材料開発課
  • 小池 峻 :
    デザインセンター エクスペリエンスデザイン部 デザイナー
  • 村島 琴美 :
    デザインセンター エクスペリエンスデザイン部 デザイナー

部署名・肩書は取材当時のものになります。

研究所だけでは生まれない技術の行き先を求めて

今回、古河電気工業株式会社様(以下、古河電工様)が新技術の事業化の共創をデザインセンターに求めたのは、従来とは違った新しいアプローチで技術開発を進めたいという想いからでした。
「私たちが扱う商材(材料)の多くはBtoBですが、この新技術をより生活者に身近なところで活用できないかと考えていました。そのためには、これまでのような研究所に閉じた開発の延長で“できそうな製品”を検討するのではなく、『この用途のためにはどういう開発が必要か』という逆算的な発想を取り入れたいと考えていました」(桜井さん)。

古河電気工業株式会社 桜井様

そんな時、紹介を受けたのが富士通デザインセンターでした。当初は、デザインを依頼しようにも技術が未確立で目に見えるモノもなく、「どうなるのか想像がつかない」という懸念からタッグを組むことに迷いがあったそうです。しかし、ファーストコンタクトでその印象は一変。
「こちらの相談をすごく前向きに受け取ってもらえたことが大きかったです。元々デザインセンター様の活動に魅力を感じていたので、組んだら面白いことができるかもしれないという期待が膨らみ、『チャレンジしたい!』と強く思いました」(山崎さん)。

他方、デザインセンター側も古河電工様と同じように不安と期待の両方を抱いていました。
「テーマとしていただいた技術の内容は専門的すぎて、まずは関連ワードを調べるところからスタートしました。また、研究部門発のプロジェクトということもあり、デザイナー自らが立ち位置を定めることが肝心で、そこに少し不安もありました。しかし、『この技術を使ってどういう課題を解決するか』を考えるプロセスに興味があり、上市までの期間が長く可能性の幅を広げられそうな点にもチャレンジのしがいを感じました」(小池)。

デザインセンター 小池


壁を作らないチーミングと斬新なアイデアがプロジェクトの推進力に

活動期間を2022年7月までの1年間としてプロジェクトは走り出しました。隔週で定例会を開催し、古河電工様からはチームリーダーの山崎さんを筆頭に若手メンバーが多く参加。まず取り組んだのが、プロジェクトの目指すべき姿を定めるためのプロジェクトビジョン作りです。

新技術に対する想いやプロジェクトのゴールを、一人ひとりがビジュアルとキャッチコピーを用いて表現し発表。本来デザイナーが得意とするこうしたアウトプットも、古河電工様も含めてあえて全員で取り組むことで、チームの一体感醸成や互いの考えを知る契機としました。
「初めての取り組みで難しかったですが、全員がオープンマインドで発言し、プロジェクトに懸ける想いを多種多様に表現していました。『普段一緒に仕事をしているけど、こんなことを考えていたんだ』という驚きと発見がありましたね」(山崎さん)。

古河電気工業株式会社 山崎様


変革のパートナーとして強みを掛け合わせて活動を広げる

「技術者とデザイナーで表現の違いがあり面白かったです。想いを表現するという主旨のため、あえてデザイナーからディレクションをしなかったのですが、古河電工の皆さんの案はどれも完成度が高く感動しました」(村島)。
持ち寄られた25以上の案から、討議の末「LIFE with Flexibility」がプロジェクトビジョンに決定しました。

次に、プロジェクトビジョンを指針として新技術で実現したいテーマや活用方法を全員でアイディエーション。その際に前提としたのは、社内外や上司部下など立場に関係なく全員が同じテーブル上でアイデアを出すこと。その方針によって意見を出しやすい雰囲気が作られ、技術特性にとらわれない突飛な発想が数々と飛び出しました。 「初めに新技術について説明していただいたものの、普段手がけているデザインと違ってイメージできるものが全くの未知数…。そのため、高温環境が相応しいと聞けば温泉やスパでの使用を提案してみるなど、パッと浮かんだ発想をまず古河電工様にぶつけることで、新技術の特性や実現可能な範囲をつかんでいきました。走りながら考えるといった感覚でしたね」(村島)。

デザインセンター 村島

「ある意味、子どものような発想の仕方でしたね。そんな突飛なアイデアも古河電工様が“可能性の一つ”として受け止め、やってみようと言ってくださったのがありがたかったです」(小池)。



手探りの技術プロトタイピング

そして、3カ月間のアイディエーションで発掘した20の事業仮説(利用シーン)を「お客様価値」や「技術の実現性」を基準に絞り、3つの実験プロセスごとのチームに分かれて技術プロトタイピングを行いました。そのフェーズにおいて、各チームの中で新しい実験方法の検討を行いましたが、技術的にはタブー視されてきた手法やアイデアが続出。しかし、実験で思いもよらない形状になっても「使えるかも!」と前向きに捉え、別の方向性で活用方法を探っていくなど柔軟に発想を広げていきました。普段とは違った実験方法に驚きつつ、古河電工様も多くの気づきを得たと言います。

成果物・サマリ

ポリマー材料を用いた技術プロトタイプ

「成果物を並べると自分たちでは絶対に出ないアイデアばかりですし、偶発的に生まれたものを“正解”にしてしまうやり方も初めて。技術面を意識するあまり、いかに発想が狭まっていたかを思い知り、技術者としてプライドを持ちつつも謙虚でいなければと襟を正しました」(山崎さん)。

さらにはプロジェクト全体を通して、チーミングでも大きな収穫が。
「アイデア出しの視点が、できる・できないから“面白そう”に徐々に変化したのが印象的でした。良いものを作りたいという想いがメンバーで合致していったのを感じます」(村島)。
「全員が楽しみながら積極的に取り組んでおり、その空気感がまた斬新なアイデアを喚起したのかもしれません。当初はデザインセンター様に“デザインしていただく”という感覚でいましたが、いつの間にか共に開発を進める間柄になっていました」(桜井さん)。
「技術者とデザイナーで理想の事業仮説を探ったことも、このプロジェクトの大きな特徴の一つ。技術者とデザイナーという、ある種真逆の思考を持つ者同士だけれど、モノに真摯に向き合う姿勢が共通していることを強く実感しました」(小池)。



成果物をお披露目!そして事業化検討フェーズへ

1年におよぶ試行錯誤を経て、本プロジェクトのゴールに置いていた古河電工様内の技術発表会で、3つの実験プロセスから生まれた9つの事業仮説とプロトタイプを発表。反応は上々で、参加者からは多くの質問が挙がりました。
「富士通デザインセンター様と関わる前の私たちのように、質問する方もまず技術的な話題を投げかけてくるのですが、話すうちにデザインの面白さに気づく様子が伺えました」(山崎さん)。

現在はプロジェクトで立てた事業仮説について、古河電工様内の複数の事業部が興味を示し活動をスタートしている。さらにデザインの価値が認められ、次のフェーズや新たな場でのコラボレートも期待されています。
「開発が進んで技術がより確立されれば、今度は製品化の段階でデザインの力をお借りしたいです」(桜井さん)。

「当社にはまだまだ魅力的な技術がたくさんあるので、ぜひ今回の成功体験を他の技術分野にも拡大できればと思っています」(山崎さん)。
「ビジョンに掲げた『LIFE with Flexibility』の通り、ユーザーに届けるところまでご一緒できたら嬉しいですし、今回得られた“走りながら”プロジェクトを進める力を別の案件でもかしていきたいですね」(村島)。
「事業化に入る前の技術をここまで突き詰め、 “始めの一歩”をプロトタイピングできたのは大きな経験になりました。実際に世に出た際はすごく感慨深いだろうと想像しています。このプロジェクトの雰囲気を古河電工様の研究開発本部全体に波及させたり、社外に発信したりすることもできたらいいですね」(小池)。

未知なる新技術に対してもデザインの価値を発揮した今回の共創プロジェクト。この先、どのような形で新技術が上市されるのか―今後の開発に期待が高まります。



プロジェクトメンバー
デザインセンタ―
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