“FLAGS―ミレニアルズの生き方研究所”同世代が抱える“生きづらさ”解消のために若手デザイナーたちが目指したもの

“FLAGS―ミレニアルズの生き方研究所”
同世代が抱える“生きづらさ”解消のために
若手デザイナーたちが目指したもの

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掲載日 2023年1月11日


富士通デザインセンターが若手デザイナーを対象に実施するクリエイティブ実習は、参加メンバーが自ら選んだテーマに対して、課題設定からアウトプットまで一貫して取り組む教育プログラムです。営利目的ではない分自由度が高く、普段の業務とは違った分野の課題にアプローチができます。2020年度の参加メンバーが取り組んだのは、「ミレニアル世代の生きづらさ」の解消。プロジェクト名は「FLAGS―ミレニアルズの生き方研究所」。彼らがどのように「ミレニアルズの生き方」というテーマにアプローチし、実際にどんな活動を起こしたのか?また、プロジェクトから得た学びについて聞きました。

メンバー全員が共感できた同世代共通のテーマ

富士通デザインセンターのミレニアル世代の若手デザイナー6名で発足した「FLAGS―ミレニアルズの生き方研究所」は、同世代のビジネスパーソンが抱える“生きづらさ”に向き合い、最終的にWEBアプリ「フラッグバーガー!!!」というアウトプットに結び付いたプロジェクト

——— そもそも、“生きづらさ”という重いテーマに取り組む背景にはどのようなものがあったのでしょうか?

飯嶋: クリエイティブ実習で取り上げるテーマは『社会に還元する』ということ以外は自由に決められるのですが、決定までに1、2ヵ月を要しました。議論している時に誰かが『正直、生きづらいですよね』みたいな話をしたら、6人全員が『そうだよね』と。我々全員が共感できるテーマであり、同世代に対して、その生きづらさを少しでも解決するお手伝いができれば社会に還元できるプロジェクトになると思い、今回のテーマに決めました。

ミレニアル世代の生きづらさを解決するサービスに取組む

菅原: プロジェクトのテーマは縛りがなく、一見自由なところが逆に難しかったですね。メンバー間でもなかなかまとまらず、決まるまでに時間がかかった印象です。テーマだけでなく、ユーザー(ターゲット)をどのように絞るのか、さらにアウトプットに至るまでメンバー全員が最後までモチベーションを保てるよう、興味のあるユーザー設定、テーマ選びにこだわりました。

世代間ギャップや、職場で徐々に責任が増していく年齢的な重圧、結婚、人間関係の変化など様々な悩みや問題を抱える20代~30代。「クォーターライフクライシス」と呼ばれる社会課題でもあるこのテーマに対して、同世代であるメンバーが、デザインの力で立ち向かうことを決意したのです。

鈴木: 解決のために自分たちがデザイナーとして何をアウトプットしたいのか議論する中で、一般のユーザーに触ってもらえるサービスを作りたいという思いが表層化していきました。普段の仕事では短期間でのデジタルサービスやアプリの開発、リリースは難しいことですが、なんとか期間内にアウトプットを実現したいと全員で取り組みました。



開発全体の流れを知ることでデザイナーとしても成長する

活動は長期に渡った

ミレニアル世代の悩みの解決のためになにができるのか。サービスのリリースに向けてはデザイナーの領域を超える働きも求められました。特に富士通の社名で発信するうえでの社内の制約、公開に向けてのルールのクリアは、デザイナーである彼らにとっては初めての経験であり、多くの学びにつながりました。

内田: このプロジェクトには二つの大きなハードルがありました。1つは富士通という会社名を冠して世に出すということ。もう1つが生きづらさ解消のためにできるアウトプットを考え出すこと。最終的にWEBアプリに行きつくまで、かなり試行錯誤がありました。プロトタイプを作っては、ヒアリング、アンケートを実施するなどの工程を何度も繰り返しました。トライ&エラーの連続でしたが、怖がらずやってみるという前向きさが身に付きました。

中部: デザイナー自身によるアプリ開発・リリースを行う中で監査等初めての経験を経て、これまで気づけなかった視点を得ることができました。開発・リリースの主体となるSEや開発担当者の理解を持つことにより、今後も円滑なデザイン提案・作成に繋がると考えています。

また本プロジェクトの経験は、従来のデザイナーとしての仕事の本質を問うものでもありました。

南澤: 想定ユーザーが同世代だったため、ユーザーの気持ちをよくわかっているつもりで仮説を立てたのですが、テストやアンケートを行ってみて、一人ひとり考えていることは全然違うことを目の当たりにしました。生の声はやはりもっとリアルで、その声を受けて創作(クリエイション)できたことはとても良い経験になりました。普段の仕事でもこの感覚を忘れずに取り組みたいと思いましたね。

プロトタイプを映像化し、ユーザーの反応を確認


問われた自分達の実力とユーザーの期待に応え続ける未来

WEBアプリ「フラッグバーガー!!!」
従来のデザイナー業務の枠を超えた活動を体験

デザイナーの枠を超えた役割も自分たちで行い、また、関係各部との交渉を経て完成したアプリ「フラッグバーガー!!!」は、目標を超える利用者を獲得。SNS等を通じて多くの好意的なコメントが寄せられました。最後に、このプロジェクトで得たものとプロジェクトを経験したメンバーの思い描く「これから」を伺いました。

中部: プロダクトやUI等多様な役割の同世代デザイナーと活動できる貴重な経験でした。今回作ったアプリは『自分の軸を見つめ直し、明確にすること』を後押しするもので、その軸に基づいた判断と行動は充実した毎日に繋がると考えています。私自身もデザイナーとして、また、1人の人間として、自分の軸を大切に貫いていきたいと思います。

飯嶋: これまでサービスやUXデザインを提案してきましたが、実際に運営する側になってより良いサービスを提供するためには今までの提案では不足している点があることを学びました。また、本心や悩みを社外に発信することは継続したいなと思います。以前はこのような本心や悩みを発信することはあまりなかったので、富士通のデザイナーとしての観点に興味を持ってもらったり共感してもらえたのは大きな発見でした。

内田: 同世代のデザイナー同士で集まって仕事をする機会はほとんどないため、とても良い経験でした。知識や考え方など、互いの強みを生かして本プロジェクトに取り組めたことで、自分に足りない部分などに気付けたり、学びのモチベーションを得られる機会にもなりました。この機会を成長のチャンスとして活かしていきます。

鈴木: 現在CXに関わり、人間の内面の価値観を捉えてサービスに昇華することを目指してデザインしています。このプロジェクトは人間の価値観、内面を探るものだったと思っています。我々世代が抱えている悩みや声をきちんと実感できたことに大きな意義を感じています。

南澤: 特に上司からチェックがあるわけでもなく、『なにをしてもいい』というスタンスのプロジェクトが経験できる教育プログラムは本当にすごいと思います。クライアントもなく、自由にできるというのは、自分達の実力と信念が浮き彫りになると実感しました。一人前の社員として迎えてもらう前の通過儀礼のような、振り返ると、そんな意義があったように思っています。

  • 「フラッグバーガー!!!」アプリは2022年11月28日をもってサービスを終了しました。ご利用ありがとうございました。


プロジェクトメンバー

  • 富士通 デザインセンタ―
    • 飯嶋 亮平
      戦略企画部
    • 南澤 沙良
      エクスペリエンスデザイン部
    • 菅原 由貴
      ビジネスデザイン部
    • 中部 三紗子
      ビジネスデザイン部
  • 富士通
    • 内田 奈月
      Employee Success本部

    Ridgelinez株式会社
    • 鈴木 祐太郎
      Competency Group
    • 部署名・肩書は取材当時のものになります。