プロダクトの先にいるユーザー起点で「新たな体験価値」をデザインする(前編)~ ESPRIMO FH Series

プロダクトの先にいるユーザー起点で
「新たな体験価値」をデザインする(前編)
~ ESPRIMO FH Series



掲載日 2021年9月13日

暮らしに溶け込むシンプルなデザインと、センシング機能やAI音声認識機能による新しいユーザー体験が融合したデスクトップパソコン「FMV ESPRIMO FHシリーズ」(以下、ESPRIMO FHシリーズ)が、2020年度のグッドデザイン賞を受賞しました。プロダクトデザインを担当した岩田 永太郎に、デザインのコンセプトやデザインをする上で大切にしたことなどを聞きました。

前編のポイント

  • 製品が使われることで「暮らしがどう豊かになるか」を考える。
  • 形だけでなく「どのような体験を提供していくか」という製品自体のコンセプトをつくることもプロダクトデザインの役割のひとつ。
  • 議論と検証を繰り返し「機能」と「デザイン」のバランスを図り、各々を掛け合わせることで価値を生み出す。

製品が「使われるシーン」を徹底的に考え、コンセプトをつくりあげていく

ESPRIMO FH シリーズは、日々の暮らしに溶け込むシンプルなデザインの一体型デスクトップパソコンです。デスクトップパソコンの一番の魅力とされるのがノートパソコンやタブレットにはない見やすく、美しい大きな画面です。
奥行きわずか174ミリという業界最小クラスの省スペース設計の筐体に、様々な新機能を搭載しつつも、すっきりとしたデザインにまとめ上げられています。

ESPRIMO FH Series

このESPRIMO FH シリーズのデザインを担当したのが、デザインセンター プロダクトデザイン部のチーフデザイナーである岩田 永太郎です。パソコンのデザインと聞くと、外観のデザインをイメージされる方が多いかもしれませんが、色や形をデザインするだけではありません。「製品が実際に使われることで、人々の暮しがどのように豊かになるのかを考えながら、製品コンセプトをつくり上げていきます」

これからのデスクトップパソコンが人々の暮らしにどのような価値を提供できるのかを考え、在るべき姿として「デスクトップパソコンのある、スマートで新しい暮らし」をイメージし、コンセプトを策定しました。「その製品が実際に使われることで“どんな魅力的な価値が生まれるのか”を明確にしないままデザインに着手しても、“色がキレイ”“形がかっこいい”といった表層的なデザインになってしまいますので、まずはコンセプトをしっかりと固め、プロジェクトメンバーと目指すべきゴールを共有することから取り組みました」と岩田は話します。

それでは、ESPRIMO FH シリーズのデザインの過程では、具体的にどのような手法でコンセプトやデザインを固めていったのでしょうか。
「まずは、どんな人が使い・どこで使われ・どんな機能があると嬉しいのかなどを柔軟かつ多角的にアイデアを考え、製品がどうあるべきかを固めていきました」と振り返ります。「デザインのみのコンセプトというよりも、人・モノ・空間の関係性や使い方、機能・スペック等を複合的に考え、『製品自体のコンセプト』を構築していくイメージです。それがこのプロジェクトにおける最初の仕事でした」

デザインセンター 岩田 永太郎


デザイナーとエンジニアがそれぞれの理想を追求しながら高めあい、ひとつの製品をつくり上げる

どんなプロダクトでも、“機能”が存在し、開発に携わるエンジニアには「エンジニアとして実現したいこと」があるものです。そうした、いわば「エンジニアのこだわり」をもとにスペックや機能が決まってくると、デザインとの「せめぎあい」が生じることがあります。機能やデザインはユーザーにとっての価値となるものであり、どちらかを捨てても良いというものではありません。

特にパソコンのデザインでは、スペックをどれだけ他社に負けない高性能なものにするかなど「機能やスペックありき」で製品開発が先行してしまうことも多々あります。それらの搭載だけを優先してしまった場合、例えば、ある機能を使うために「この場所にボタンを配置しなければならない」というようにユーザー視点ではない制約が出てしまうことがあります。大切なのは製品を通して提供する「体験」であり、それを一番に考え開発を進めていく必要があります。

業界最小クラスの設置スペース

ESPRIMO FH シリーズには、このパソコンがあることで生み出される「スマートで新しい暮らし」を実現するための様々な新機能が搭載されています。それらの新機能を搭載しつつも、「暮らしと調和するシンプルなデザイン」を目指し、「画面以外の要素はできる限り少なくしし、よりピュアに体験を提供できるものにしていきたいと考えました」

開発の現場では、「機能やスペック」と「デザイン」をどう共存させるかの議論と検証が繰り返されました。実際に設計図面やプロトタイプを用いながら、ミリ単位の微調整を繰り返し行い、機能性の担保と理想的なデザインのつくり込みを行っていきました。

デザイナーとエンジニアがひとつのチームとして地道な検証を繰り返すことで、「互いに『譲れないところ・大切にしたいところ』を議論し、それぞれが、それぞれの理想を追求しながら高め合うことで、ひとつの製品をつくり上げました。それが『ESPRIMO FH シリーズ』として形に表すことができたと考えています」

ESPRIMO FH Series


それでは、ESPRIMO FH シリーズでは、シンプルさを極限まで追求したデザインに、どのような新機能を搭載し、どのようなユーザー体験を実現したのでしょうか。後編では、岩田がESPRIMO FH シリーズのデザインにおいて最も大切に考えたことに触れながら、新機能によって実現した新たなユーザー体験とその意味合いについて紹介します。

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