プロダクトの先にいるユーザー起点で「新たな体験価値」をデザインする(後編)~ ESPRIMO FH Series

プロダクトの先にいるユーザー起点で
「新たな体験価値」をデザインする(後編)
~ ESPRIMO FH Series



掲載日 2021年9月21日

「デスクトップパソコンのある、スマートで新しい暮らし」をコンセプトに開発された「FMV ESPRIMO FHシリーズ」(以下、ESPRIMO FHシリーズ)。シンプルなデザインに搭載された新機能は、どのようなユーザー体験をもたらし、「スマートで新しい暮らし」を実現しているのでしょうか。プロダクトデザインを担当した岩田 永太郎に聞きました。

後編のポイント

  • 据え置き機だからこそ「離れている時」にもユーザーにどのような価値を提供できるかを考える。
  • 人とパソコンの関係性を再考し、「暮らしに調和するパソコン」を実現。
  • ペルソナを設定し、ペルソナが求めるものをユーザー起点で考える。

パソコンから離れていても、ユーザーに価値提供できるデスクトップパソコン

「デスクトップパソコンのある、スマートで新しい暮らし」を目指したESPRIMO FHシリーズのデザインで最も大切にしたこと。それは、「パソコンの正面に座っている時だけでなく、パソコンから離れている時(使われていない時)でもいかにしてユーザーに体験価値を提供することができるか」ということでした。デスクトップパソコンは、リビングの同じ場所に置かれたままで、使われない状態の時間が多くなってしまいがちですが、置かれている状態つまりパソコンの前に座っていない時間でもユーザーを喜ばせたいという考えを大切にデザインしています。

ESPRIMO FH Series

その思いを「暮らしと調和するシンプルなデザイン」「センシング機能やAI音声認識機能による新しいUI」「業界最小クラスの省スペースデザイン」というESPRIMO FHシリーズの3つのポイントに込めました。

これらのポイントを実現するにあたって、まず「人とパソコンとの関係性」を再考しました。通常のパソコンであれば、人が電源ボタンを押して起動し、マウスやキーボードでパスワードを入力して使いますが、ESPRIMO FHシリーズはその必要がありません。電源ボタンやマウスで操作をしなくても、人の存在をセンサーが感じて賢く画面をオン・オフする「瞬感起動」と名付けた機能を盛り込み、パソコンの前に座るだけで、パソコンに触れることなく瞬時に顔認証でログインできるようにしました。

「電源ボタンを押して、パスワードを入力してから使う」という従来の「人とパソコンの関係性」を見直したことで生まれたこの機能は、実は、ESPRIMO FHシリーズの外観を見ただけでは「ユーザーが気づきにくい」仕立てとなっています。「機能を使うことを意識することなく使うことのできる心地良い体験が、デスクトップパソコンを通してテクノロジーをもっと人の暮らしに溶け込むものへと変えてくれるだろうと考えています」

瞬感起動のイメージ

さらに、AI音声認識機能によって、「パソコンとの距離感や付き合い方を変えることができた」と岩田は強調します。パソコンは通常、正面に座って操作を行いますが、ESPRIMO FHシリーズでは、離れた場所からでも話しかけるだけでAIアシスタント「ふくまろ」が今日の予定や天気を教えてくれたり、YouTubeに繋いでくれたりと、様々なコミュニケーションを行うことができます。「AI音声認識機能により、キーボードやマウスでの操作ができない子どもや高齢の方でも音声だけで簡単に操作することができます。パソコンがまるでもう1人の家族そのような存在となることで、暮らしにおける新しいユーザー体験が生まれることを目指しました」



「ESPRIMO FHシリーズ」が デスクトップ市場に明るい未来を

これらの機能を実現するには小型カメラや人感センサーをつける必要がありますが、カメラやセンサーはデザインにおける制約にもなりえます。「センサーなどの機能部品の数や配置を決める場合、デザインの視点ではできるだけ少なく目立ちにくい場所が好ましいのですが、それでは感知精度(機能性)が落ちてしまいます。エンジニアと協力し合い、部品の位置をコンマ数ミリ単位で微調整し、製品を作り込んでいきました。その結果、業界最小クラスの省スペースかつすっきりしたデザインに最新テクノロジーを融合させることで、快適な暮らしのためのパソコンが誕生しました」

こうして誕生したESPRIMO FHシリーズは、新規性やデザイン性が評価され2020年度グッドデザイン賞を受賞しました。世間的には「目新しいものが生まれにくい」レガシーなプロダクトと思われがちなデスクトップパソコンですが、ESPRIMO FHシリーズの前機種は、リリースした2017年から4年連続デスクトップパソコン部門で日本一の実売実績があります。(注)

「デザイン性、機能性、ユーザー体験といったあらゆる面で前機種を超えなくてはならないというプレッシャーはありましたが、今回のアワード受賞がこれからのデスクトップパソコン市場に更なる明るい未来をもたらすターニングポイントになってほしいと願っています」と、岩田は受賞の感想を述べています。

  • (注)BCN AWARD2021 :
    全国家電量販店・パソコン専門店・ネットショップ2,717店のPOS実売を統計するBCNより受賞 。デスクトップ部門(4年連続) 最優秀賞受賞


DXへとつながる プロダクトデザインの可能性

岩田は、プロダクトデザインをする際に、まずは「人のことを考える」と言います。ターゲットとなるユーザーは「どのような生活をしているのか」「普段の暮らしでは、どこでどう使うのか」など具体的なペルソナや利用シーンを細かく考えることもあれば、もっとシンプルに年齢、性別、家族構成などから考えることもあります。

そして、ユーザーは自宅や職場などで「対象となる製品をどう使うのか」といった仮説を立て、検証しながらイメージを具体化していきます。「その人(ペルソナ)が求めるもの、ニーズに対して、どのような新しい体験や価値で応えていけるのか、『ユーザー起点』で考えていくことを大切にしています」と岩田は語ります。


こうしたデザイン思考は、ものづくりにおいて重要性が高まっていると同時に、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる原動力になります。「プロダクトデザインとは、デザインする製品やサービスの先にあるユーザー起点でニーズや課題を捉え、仮説立案と検証を繰り返す作業です。プロダクトのデザインを通じて新たな体験価値を提供することが、DXの推進へと繋がっていくと考えています」

最後に岩田は、「常に初心を忘れずにいたい」と語ります。「この仕事を志した時に抱いていた想いは『今、どう実現できているのか』自分自身、壁にぶつかった時はそこに立ち返っています。今後もその自分自身の原点に加え、“新しさ”と“物事の本質”を追求し、デザインを続けていきたいと考えています」視線の先には、プロダクトデザインの可能性が大きく広がっています。

デザインセンター 岩田 永太郎


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