デザインコンセプトは「導入しやすさ」と「先進性」(後編)~ エッジAIコンピューター

デザインコンセプトは「導入しやすさ」と
「先進性」(後編)~ エッジAIコンピューター



掲載日 2021年11月22日

大量のデータをローカル環境でリアルタイムにAI処理が可能なエッジAIコンピューター。新しいテクノロジーの搭載という新規性や先進性をどのようにデザインで表現したのか、プロダクトデザインを担当した森口 健二と朝本 翔太に聞きました。

後編のポイント

  • 「価値」や「意図」がストレートに伝わる「純度の高い」デザインを目指した。
  • 「柔軟な設置性」「堅牢性」「先進性」をデザインで実現。
  • プロダクトデザインでもDXでも「使う人」を中心に考えることが大切。


「純度の高いデザイン」を実現した3つのポイント

エッジAIコンピューターのデザインで、森口と朝本が最も大切にしたこと。それは「一目見てその価値や意図がしっかり伝わるような『純度の高い』デザインにすること」でした。多様な環境で、さまざまな人が使う製品になるという考えから、創出した「価値」をストレートに伝えられるデザインにすることで、利用者にとっての「分かりやすさ」や「使いやすさ」に繋がると考えたのです。

価値や意図がしっかり伝わるような『純度の高い』デザインを実現したエッジAIコンピューター

朝本は、こうした分かりやすさや使いやすさを実現しているのが、「縦置きや横置きが可能な『柔軟な設置性』、さまざまな設置環境でも安心して使える『堅牢性と安全性を兼ねたフォルム』、そして、『一目で状態が分かるステータスイルミネーション』という3つのポイントです」と説明します。

デザインセンタ― 朝本 翔太

まずは、縦置きも横置きも可能な柔軟な設置性についてです。店舗のバックヤードや工場など、エッジAIコンピューターが置かれるさまざまな環境を想定すると、置かれるスペースをしっかり確保できないケースがあります。そこで、朝本は、「導入のしやすさを実現するためには、まずは設置の柔軟性が大事と考え、縦置きでも横置きでも設置できるデザインを一番に取り入れ、どの置き方でも機能が発揮できるデザインにしました」と説明します。

「柔軟な設置性」で工場の狭い場所でも「横置き」できる(写真左下)

さらに、重要視したのは堅牢性と安全性です。エッジAIコンピューターは丸みを帯びた4つの角が特徴的ですが、これは狭いバックヤードでぶつかったとしても、衝撃を逃しやすくするためのデザインです。朝本は「加工の難しさから、パソコンではこうした丸みを帯びたフォルムはあまり取り入られることはありません。今回は常時稼働し業務を止めないことが大前提なので、衝撃を受けても故障せず、また人がぶつかっても怪我をしにくいデザインにしました」と語ります。

3つめのポイントはステータスイルミネーションです。何か異常が発生した時に、ITやパソコンに詳しくない人でも一瞬で異常を察知できることが求められていました。そこでリング状のイルミネーションを採用。通常はブルーの光ですが、異常が起きるとオレンジの光に変わります。朝本は、「リングを綺麗に光らせることが難しく、試行錯誤を繰り返しました。LEDの数を増やすと電力を使うので、LEDの数は左右に4つと最小限に抑え、それが全周を均等に回るように工夫しました」と説明します。

ステータスイルミネーションで稼働状況がすぐに分かる


AI処理で発生する「高熱」をメッシュ状の側板で逃がす工夫も

ステータスイルミネーションでフロント面の全周を「光のリング」で縁取ったことで、縦置きでも横置きでも、棚の上に置いても足元に置いても光が見えるようになりました。朝本は、「装置の前に何か物が置かれたとしても、イルミネーションの一部分さえ見えれば今、どんな状態かが分かります。柔軟な設置性にも繋がるデザインを実現できました」と話します。

このイルミネーションが担っているのは、異常を知らせるという機能だけではなく、新規性を象徴するというデザイン面での役割もあります。「エッジAIコンピューターは新しいテクノロジーを用いた特別な製品なので、導入のしやすさや操作性はパソコン的であっても、いわゆる業務用パソコンとは違う先進性や新規性をデザインで表現してほしいというオファーがありました。それをイルミネーションで表現できたと思っています」と森口は強調します。

デザインセンタ― 森口 健二

もうひとつ、デザインで工夫したのは通気孔だといいます。エッジAIコンピューターはAI処理をする基盤を6枚も積んでいて、それらが常時稼働しているので、熱を発しています。その熱を逃がす排熱処理のため多くの通気孔が必要ですが、隙間があると埃が入ってきてしまうという問題があります。「最初は通気孔を隠してふたをしたデザインにしました。しかし、それでは排熱が足りない。そこで、通気孔がたくさん必要ならそれを最大限デザインに生かしてメッシュにしようと提案しました。メッシュには微細なフィルターを挟むことで、埃の問題も解決しました」(朝本)。



「使う人」のことをどれだけ考えられるかがデザインにもDX推進にも重要

森口は、プロダクトをデザインする上で重要なのは「使う人のことをどれだけ考えられるか」だといいます。そして、「まず人を見る。そしてその人がどういうものを求めて、どう使うかを考えることによって、作るべきものが見えてきます」と説明します。それは、プロダクトに限らず、サービスやDX(デジタルトランスフォーメーション)であっても同じだといいます。「人が何を求めているか調べて、そこから気づきを得て作業することがデザイン思考であって、それはプロダクトデザインにしてもDXの推進にしても重要です」と、森口は考えています。

一方、朝本も「デザイナーがユーザー視点で考えることが大切」と語ります。今回のエッジAIコンピューターでは、「企画段階からユーザー視点でプロジェクトに取り組めたので、その視点で得た気づきをプロダクトデザインに反映できました」とプロジェクトを振り返ります。

さらに、今後デザイン思考が浸透していくことで、朝本は「ユーザーに向けた製品作りを最後まで貫き通せるようになり、製品開発やものづくりも変わっていくと思います」といいます。森口も「デザイン思考がますます浸透していくことで、ユーザー視点でコンセプトを固め、しっかりと『芯の通った製品づくり』ができるようになるでしょう」と語ります。ユーザー視点での新たなものづくりへのチャレンジで、デザイン思考とDXをさらに推進していく、二人が目指している方向です。

デザインセンター森口 健二
 朝本 翔太


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