23歳インハウスデザイナーが考える
社会課題とデザイン

Designship2022にデザインセンターアドボケート
横田奈々が登壇



掲載日 2022年12月07日

物語の力で「デザイン」の壁を超える。

富士通デザインセンター アドボケートの横田奈々が2022年11月12~13日に開催された「Designship 2022」(主催:一般社団法人デザインシップ)に登壇しました。Designshipは様々な業界における一流デザイナーが集結し、それぞれの叡智や想いを伝えあう日本最大級のデザインカンファレンスです。 5回目となる今回はオフラインとオンラインのハイブリッドで開催を実現し、さらにオンライン視聴チケットを無料にするなど「開かれたデザイン」に向けた取り組みを進めています。

Designship 2022のテーマは「物語の力でデザインの壁を超える」。混沌としたこの時代にデザインができることは何か。横田は富士通株式会社のスポンサーセッションに登壇し、自身の想いとインハウスデザイナーとして社会課題に向き合う姿について語りました。



登壇者

学生時代にデザイン会社での長期インターンや海外でのデザインワークショップに参加。その経験から「日本でデザインを良くしたい」との思いを強くし、富士通デザインセンターに新卒で入社した。入社2年目の2022年9月、社内公募によるポスティングで「デザインアドボケート」職(新設)に就任。様々な人にデザインへの関心を呼び起こし、デザインやデザイン組織のファンづくりを担う。

部署名・肩書はイベント時のものになります。



23歳 インハウスデザイナーが考える社会課題とデザイン

日常生活の中で気がかりなこと、それは「目をそらしてしまっている社会課題」です。社会人となって2年経ち、ビジネスとしてデザインに携わる中で、デザインは社会を良くしているのだろうか?と不安に感じることがあります。

社会人になって、社会課題の解決の難しさを感じるようになりました。私は学生の頃に海外のデザインワークショップに参加し、デザインで社会課題の解決(プラカップのポイ捨て問題)に取り組んだこともありました。同じような経験をされた社会人デザイナーの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

なぜ解決が難しいのか。私は行政/企業/市民の意識のズレがあると思います。
昨今のSDGsへの関心の高まりもあり、弊社富士通を始め社会課題に取り組む企業は増え、成功事例も出ています。 しかし、それ以外の企業では、スピード感の欠如や内容のまずさなど消費者が失望するケースがあるのも事実です。

こういった気がかりや不安の解消のためには、ただ待つだけではなく自分が動くことも必要です。デザイナーである自分ができることは何でしょうか。 例えば、紙コップのポイ捨て問題を考えてみます。紙コップには生産、使用、ごみの処分と様々なフェーズがあり、各フェーズで多様なステークホルダーが関わっています。それぞれのフェーズでデザイナーができることはありますが、そもそも、根本から解決するための課題はどこにあるのでしょうか。社会課題解決の難しさは「根本から解決するための真の課題設定の難しさ」にあり、「多様なステークホルダーを巻き込む必要性」にあります。

その「難しさ」を乗り越えるためには「様々な視点を持つ人と共に」「人起点で課題の仮説を立て」「解決策のプロトタイプを検証して、仮説をアップデートし続ける」ことが必要です。

当たり前だと思われるかもしれませんが、デザインのイベントでこのお話をする意図は、これらがデザイナーの得意とする領域だから。様々な分野のデザイナーが集まり取り組むことで社会課題が解決できると、私や富士通デザインセンターはいま考えています。

数多く存在する社会課題をデザインアプローチにより解きほぐし本質的な課題を特定する。価値検証されたそれらの課題は世の中に公開され、産学官の様々な組織が取り組み社会実装する。私たち富士通デザインセンターはこういった仕組み(=エコシステム)づくりを始めました。 ここで、その取り組みのひとつをご紹介します。JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)に所属する国内23社のインハウスデザイン組織のデザイナーたちと協働する「JEITAエコシステム」の構想があります。この夏にワークショップを行い、活動の方向性も明らかになってきました。来年からは実際にこの仕組みを使った社会課題解決に取り組みます。

社会課題を解決するため、また解決策を社会実装するためのエコシステムを構築し、皆さんと私自身の幸せなくらしにつなげたい。私はデザイナーとして、そして富士通のデザインアドボケートとして、この活動に参加し、発信し、仲間を集めています。今後の活動は私のTwitterJEITAのnoteで発信していくので、ぜひフォローしてください。

  • 横田奈々 Twitter
  • JEITAのnote


登壇を終えて

Designshipは私にとって思い入れのあるイベントです。3年前、まだ学生の頃に現地参加をしました。その時はFACEが出展していて、就職先としての富士通デザインセンターに魅力を感じた、といういきさつがあります。

今回、富士通はスポンサーとしてDesignshipに参加しましたが、これも私から宇田デザインセンター長へのアピールがきっかけです。3年前の私のように、若い方々にデザインセンターを知っていただきたい、という想いからです。

ただ、実際の登壇はセンター長だと思っていたので、私がアドボケートとしてスピーチが決まったときには、まさか!本当に?とびっくりしましたね。
とはいえ、そういった縁あるイベントへの登壇は嬉しかったです。ものすごく緊張しましたが、会社の宣伝ではなく、等身大の自分の本音をちゃんとお伝えできたと思います。

今回印象深かったのは、登壇後のみなさんとのコミュニケーションです。イベント後の懇親会で、いろいろな感想をいただきました。インフルエンサーではない、ただの会社員のスピーチだからこそ伝わったという感想や、ベンチャー企業が富士通の動きに注目しているというコメントもいただきました。

実はDesignshipの10日前に別のイベントに登壇していて(Figma Schema)、その両方ご覧いただいた学生の方ともお話しできました。それぞれのイベントはテーマが違いますが、私の軸である「デザインアプローチを用いて社会課題を解決するエコシステムの構築」はきちんと伝わっていて、ぶれない姿勢に共感していただきました。発信し続けることの大切さに気付きましたし、発信するモチベーションにもなります。

登壇でも触れたように、デザインセンターでは「デザイン効果の定量化PJ」に取り組んでいます。社会課題に取り組むにあたり、デザインの効果を定量的にノンデザイナーに提示できること、経営層から投資を引き出すことは、エコシステム構築においても重要なファクターになります。われわれデザイナーにとって、社会課題をくくりだすための仕組みがエコシステムなら、その効果をいかに見せていくのか、そのひとつの方法がデザイン効果の定量化PJです。
実は今回発表した以外にも計画していることはたくさんあって、まもなく皆さんにお伝えできそうです。ぜひ楽しみにしてください!

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