「arrows 5G F-51A」は、「世界最薄のミリ波搭載端末」になることは確実でした。そこで、それが広告の1行目にくるようなスマートフォンを想定し、それをどういった形でユーザーに伝えることが正しいかを考え続けました 。
また、世界的なスマートフォンのシェアを見ると、米国Appleや韓国Samsung Electronics、中国のXiaomi、OPPO、Huaweiといった海外メーカーが上位を占めています。そのような現状を踏まえつつ、日本のメーカーならではのこだわりやメッセージといったユーザーへの訴求ポイントを多数盛り込んでいることも「arrows 5G F-51A」のCMFの特長です。
「いわゆるグローバルベンダーが出しているスマートフォンは、世界中のユーザーに向けてリリースしており、日本市場にそぐわない部分もあります。例えば、CMFの観点で言うと、カラー展開やギラギラとしたミラーフィニッシュ、日本人にとって持ちにくい形状などが挙げられます」と益山は説明します。
そして、日本人のユーザーにふさわしいデザインについて、日本人は、強くは主張しないが「きちんとした美しさ」を保っていることがポイントになると益山は考えています。そうした、日本市場の持つ背景を踏まえつつ、高スペックかつ先進的なユーザーにふさわしい高級感のある外観が「arrows 5G F-51A」には求められていました。
「arrows 5G F-51A」のカラー展開にも注目すべき点があります。色については熟考を重ね、洗練された今回の2色に絞り込みました。非常に濃いブルーの「ネイビーブラック」と少し温かみのある色合いの「チタニウムシルバー」です。今回の端末はarrowsの製品シリーズの最上位に位置するフラッグシップモデルということで、5Gのような先端技術に興味を持っている男性をメインターゲットとして考えられています。
「この2色はスーツやジャケットに用いられる色に近く、日本の男性が持っていてかっこいい色、非常に『映える色』です。このようなシックで落ち着いて芯のある色のスマートフォンは、グローバルベンダーではなかなか作れません。日本のメーカーのこだわりとして、日本のユーザーに向けたフィニッシュを徹底的に吟味し、カラー展開を決めました」と益山は説明します。
デザイナーからのさまざまなメッセージが込められた「arrows 5G F-51A」。後編では益山が「arrows 5G F-51A」のデザインで最もこだわった部分や苦労した点、そして、自身がデザイナーとして大切にしていることについて紹介します。