スマホレジで顧客接点強化
DXがもたらす顧客体験・従業員体験の向上
レジを通さずに買い物できる「スマホレジ」は、顧客が所有するスマートフォンを使って購買体験を提供します。レジ待ち解消などの利便性を向上させるだけでなく、お客様の趣味嗜好に沿ったレコメンドやリアルタイムなクーポン配信による顧客接点の強化が期待されています。お客様との洗練されたコミュニケーションが顧客と店舗にどんなメリットをもたらすのか見ていきましょう。
- スマホレジとは
- 顧客にとってのスマホレジのメリット
- 店舗にとってのスマホレジのメリット
- スマホレジ導入における今後の課題
- スマホレジを導入している事例
- スマホレジを実現するために必要な技術
- 富士通「Flexible Commerce (Brainforce) ウォークスルーチェックアウト」
スマホレジとは
「スマホレジ」とは、買い物においてレジを介さずに顧客のスマートフォンで商品のスキャンから決済までが完結できるサービスのこと。スマホレジ決済を体験するには、まずスマートフォンに専用のアプリをインストール。次に本人確認やクレジットカード情報の登録等を行なえば事前準備は終了です。
店舗に着いたらアプリを起動して選んだ商品についているバーコードをスマートフォンでスキャンし、任意の決済方法を選択してスマホレジ決済を行い、最後に専用スキャナにスマートフォンをかざせば買い物が完了する流れです。専用端末を使って顧客が自分でレジ決済を行う「セルフレジ」と異なり、顧客が所有するスマートフォンを使う「スマホレジ」は、普段から利用しているスマートフォンをそのまま活用するところに特徴があります。
一般的なセルフレジの場合、使い方が分からずストレスに感じることが少なくありません。しかしスマホレジであれば、普段から使っているスマートフォンを利用するため、慣れたUIである程度直感的に操作が可能で、自分のペースでお買い物をすることができます。レジにおける利便性向上の他、スマートフォンを活用することでお客様の趣味嗜好に沿ったレコメンドやリアルタイムなクーポンの案内など店舗においてお客様とのコミュニケーションを強化することもできます。
スマホレジが可能にする顧客接点の強化と洗練されたコミュニケーションは、顧客と店舗の双方に数多くのメリットをもたらすのです。
顧客にとってのスマホレジのメリット
スマホレジ体験の始め方は簡単です。スマートフォンに専用アプリをインストールし、本人確認やクレジットカード登録など事前準備を済ませたら、後は利用可能店舗に出かけるのみ。これを具体的に利用する顧客側にはどのようなメリットがあるのか、見ていきましょう。
買い物をしている内容を把握しやすい
スマートフォンで商品のバーコードをスキャンしてからカゴに入れれば、カゴの中身がスマートフォンの画面上で一覧できます。これから買うことになるものを把握しやすいだけでなく、各商品の価格や合計金額も表示されるため便利に買い物を進められるでしょう。買い忘れを防ぐことにもつながります。
レジ待ちが不要
バーコードのスキャンが済み、買うべきものが全てそろったら、後はそのままアプリ上で決済を完了させることができます。レジの順番を待つ必要がなくなるため、スムーズに買い物を終えられるのです。
財布を持ち歩く必要がない
自身のスマートフォンを使って決済する場合、事前に登録したクレジットカードで決済を完了させられます。そのため、財布を持ち歩く必要はありません。紛失や盗難に遭遇するリスクも小さくできるでしょう。
リアルタイムなレコメンド
商品をスキャンしたタイミングで、関連した情報が表示されることがあります。一緒によく買われている商品やタイムセールのお知らせなど役に立つ情報やお得なクーポンのレコメンドを受け取ることができるのです。
店舗にとってのスマホレジのメリット
スマホレジはセルフレジの進んだ形態であるため、店舗側にもさまざまなメリットがあります。どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
顧客のデータを収集しやすい
アプリに登録されている顧客データと、買い物をしたデータを一元管理できるため、顧客情報を効率良く収集できます。顧客がカゴに入れたものや棚に戻したものの傾向を把握することで、棚作りやプロモーション活動、PB商品の開発などにも生かせるでしょう。
コストの削減
スマホレジはセルフレジと異なり専用端末を必要としません。また、キャッシュレス決済を基本とするため、現金管理のコストを削減することにもつながります。レジに人手を取られない分、人件費の削減にもつながります。
LTV(顧客生涯価値)の向上
単純にレジでの待ち時間が短縮されるだけで、顧客の回転率は高まります。また、上述のメリットにより顧客理解が進み、今までレジ業務に担当していた人員を顧客のサポートに回すことができるようになれば、顧客満足度の向上が期待できます。それにより来店機会が増え、客単価が上がれば結果的にはLTV(顧客生涯価値)が高まり、店舗の収益を増やすことにもなるでしょう。
スマホレジ導入における今後の課題
顧客・店舗にとって多くのメリットが期待できる一方、普及されたばかりのスマホレジを利用するにはいくつかの課題も見えてきます。ここでは顧客と店舗の双方向から具体的な内容をみてみましょう。
顧客側からみた課題
スマホレジが使える店舗が限られる
手軽に使えて利便性のよいスマホレジですが、実際のところ、まだスーパーやコンビニなどでも導入している店舗はごく一部に限られます。そのため現段階ではスマートフォン以外での決済方法を備えておく必要があります。
購入できない商品がある
お酒やタバコなどの年齢確認が必要な商品、切手などの公共商品やチケットなどの購入では、スマホレジが対応しておらず、使用できない場合もあります。
店舗側からみた課題
導入にコストがかかる
コスト削減やレジ待ちの解消、データ収集といったメリットはあるものの、専用端末の導入や専用アプリの開発など、スマホレジを導入するための初期費用がかかります。
予期せぬスキャン忘れによるリスクの可能性
レジを介さず、顧客自身のスマホで選んだ商品のスキャン・決済を行うため、スマホレジに慣れていない場合、つい決済を忘れて商品を持ったまま退店してしまったという事態が想定されます。万引きの様な事象が起きてしまうと、これまで築いてきた信頼関係が損なわれるため、カメラの設置による確認や顔認証による自動決済の検討も必要となります。
スマホレジを導入している事例
日本においてスマホレジは、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)やイオンが展開するスーパーマーケットで導入が進んでいます。
Scan&Go Ignica
「マルエツ」や「カスミ」「マックスバリュ関東」などの事業会社を傘下に持つU.S.M.Hが提供するアプリです。もともと店内用のスマホ決済機能とオンラインデリバリー機能を別アプリとして提供していましたが、現在は一つのアプリに統合されています。これにより、買い忘れた商品を自宅からオンラインで注文したり、従来店内だけで受け付けていたギフトや季節商品の予約がオンラインでも利用可能になったりするなど、オンラインとオフラインの買い物をシームレスに融合させたサービスがより充実していきそうです。
レジゴー
イオンはスマホレジシステムである「レジゴー」を提供しています。顧客自身のスマートフォンに専用アプリをインストールして使える他、店舗側が用意している貸出用のスマートフォンを利用することもできます。貸出用のスマートフォンを使えば事前の準備が必要ないため、さらに気軽に利用できます。
スマホレジを実現するために必要な技術
スマホレジを実現するためには、専用アプリの開発以外にも顧客情報を一元管理し活用できる基盤が必要です。また、スマホレジのメリットを最大限活用するためには、在庫情報などの店舗業務に関するさまざまなデータとの連携が必要になります。もちろん、セキュリティ対策も重要です。例えば前出のU.S.M.Hやイオンの場合、来店客は決済後にスマートフォンに表示されるQRコードをサービスカウンターに設置されたQRコードリーダーにかざすことで次回の買い物が可能となるといった工夫を施しています。
富士通「Flexible Commerce (Brainforce) ウォークスルーチェックアウト」
富士通が提供する「Flexible Commerce (Brainforce) ウォークスルーチェックアウト」は、小売業者のデジタルシフトを支援するソリューション「Flexible Commerce (Brainforce)」における主要サービスの一つです。スマホ決済のアプリケーションをテンプレートで提供しており、導入機能の要件に応じて対応していくことが可能です。テンプレートにはクラウドの各種APIを組み込んでいるため社内外のシステムとの連携がしやすくなっているのも特徴です。
店舗のデジタル化が必須、スマホレジで進化に拍車
2020年初頭に世界中を襲った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行は、買い物の常識を大きく変えました。感染拡大防止のために外出自粛を求められた人々は、必要なものをオンラインで購入する機会を増やしました。一方、店舗は人の流れが少なくなる中で売り上げの維持に苦しみました。そればかりか感染拡大防止の観点から営業活動の停止を余儀なくされたことさえあります。コロナ禍の終息までには、残念ながらもう少し時間がかかる模様です。先行き不透明な状況でまず店舗がやらなければならないのは、既存顧客のつなぎ止め。安全で快適な買い物環境の整備とそのためのオペレーション最適化に、デジタルの活用は不可避となるでしょう。買い物体験を向上させ、個々の顧客とつながり続けるため、今回ご紹介した「スマホレジ」などの新しい技術を導入し、スマホを起点に店舗はより一層進化していくことになりそうです。