【データ活用】ドラッグストアの売上アップにつながる業務効率化とは
幅広い商品を扱う小売業にとって、在庫管理などを含めた業務の効率化は解決したい課題のひとつです。一方で、接客業務の効率化は顧客満足度を下げてしまうケースも。売上アップに貢献する効率化とは何か。今、小売業で導入が加速している映像データの利活用方法を、取扱商品がより複雑なドラッグストアの例で紹介します。
- ドラッグストアの運営、接客における3つの理想とは
- 【データで見る】ドラッグストア接客の現状と課題
- 映像データの活用により理想の店舗運営をし、売上アップを図る
- ドラッグストアの運営と接客におけるデータ活用で「業務変革」と「顧客接点変革」を推進
ドラッグストアの運営、接客における3つの理想とは
従業員の業務効率化で接客に使える時間を最大化
ドラッグストアに限らず、店舗運営における顧客満足度の向上には接客力のアップが欠かせません。しかし現状の店舗スタッフは、日々の商品仕入れや在庫確認、売上集計などの店舗運営業務を同時に行っていくことから、本来の業務である顧客対応に時間を割くことが難しくなっています。
店舗スタッフの業務を効率化することは、顧客対応の時間を創出することとなり、顧客満足度の向上に繋がります。
接客力向上による顧客満足度向上
お客さまから高い評価を得るための接客として、多くの企業では親しみやすい接客態度や専門用語を使わない接客対応術、基本的な商品知識の向上などに力を入れています。このような基本的な接客術に加え、お客さまの行動を見極め、それぞれのお客さまにあった対応をすることが求められますが、接客術の多くは、長年の経験や個人の接客スキルに寄るところが大きいとされています。
例えば、お客さまが棚の前でどういう行動をしていると前向きに商品を検討しているのか、誰かに相談したいと思っているのか。また、基本的なところでは売り場ごとにどの時間帯に客数が多いのか。
これら来店客の行動が、スタッフによる経験や勘ではなく、明確なデータとして蓄積され、分析することができれば、混雑しやすい曜日や時間帯に人員を多く配置し、商品の前で迷っている素振りを見せるお客さまに的確に声をかけることができます。
また、混雑する時間帯よりも前に商品出しをしたり、事務処理の時間を調整したりするなど、接客時間を効率的に創出することも可能です。そして、手厚いスタッフの配置と対応は、接客力の向上とスタッフの評価改善を促します。
データを元にした業務最適化
日用品、衣料品を含めて商品の多様化が進み、商品アイテム数は増加傾向にあります。シーズンごとに入れ替わる商品も多く、天候や気候によっても需要は変化。販売機会の最適化や緻密な在庫管理が求められます。
また近年は、スタッフの健康管理や配慮をより詳細に行わなければならず、スタッフのシフト管理も複雑化しています。こういった管理業務を、店長や各店舗のスタッフの経験や勘に頼らず、データをもとに見える化することで、より最適な人員配置や事前の品出し準備ができるなど、店舗運営の効率化を図ることができます。
【データで見る】ドラッグストア接客の現状と課題
では、ドラッグストアにおける接客の現状はどのようなものなのか。マーケティング会社ピアラが実施した「ドラッグストアの接客」に関する意識調査から、実態を紐解いてみます。
30分に1回以上の接客対応で止まる運営業務
調査(※)によると、ドラッグストアの店員が1日のうちに声をかけられる頻度で一番多いのは30分に1回程度(36.9%)。次いで10分に1回程度(19.4%)、1時間に1回程度(16.5%)となっており、かなりの頻度で声をかけられていることがわかります。
相談の内容は、「商品の取り扱い」が65.9%、「医療品/健康食品に関する専門的な知識について」が61.5%、「商品の販促場所について」が48.4%という結果でした。
スタッフにとって接客は大事な業務ですが、同時に品出しや在庫の確認などの運営業務も外すことはできません。質問をされた商品の知識がない場合は、わかる担当者を探すなどさらに手間と時間がかかり、運営業務が滞るという状態を招いてしまう可能性があります。また、回答までに時間がかかることで、顧客満足度が低くなってしまうことも課題です。
- ※参考
品出しなどの業務で接客に手が回らない現場
同調査では、店舗スタッフが少なく顧客対応が大変だと感じるかどうかについても質問。
「非常にある」が43.7%、「少しある」が38.8%と、実に82.5%もの現役スタッフが、顧客対応が大変と答えています。
その背景には、医薬品を扱うドラッグストアならではの専門的な質問や、幅広い商品群という特性も含まれていますが、少ない人数で商品仕入れや在庫確認、品出しなどの店舗運営業務も同時並行で担っていかなければならない現状があります。
店舗運営業務と接客対応の両立が困難な理由
では、なぜ店舗運営業務と接客対応の両立が難しいのでしょうか。
現場では接客業務と店舗業務の両方が随時発生します。しかし、多くの店舗では、人々の生活を365日朝から晩まで支える必要性と人手不足の煽りを受け、スタッフが中々集まらないのが現状です。スタッフ1人ひとりが担う業務は増加するため、店舗運営に必要な業務を優先してしまい、どうしても接客業務に時間と人が割けなくなってしまうのです。
映像データの活用により理想の店舗運営をし、売上アップを図る
店舗運営の効率化や接客時間の創出に期待されているのが、データ解析による業務効率化です。例えば、店舗内の人の動きを捉えた映像データをAIで解析する「Citywide Surveillance」(以下CWS)の活用は注目度が高く、あるドラッグストアではCWSを取り入れた顧客満足度の向上や売上アップといった「顧客接点変革」に取り組んでいます。
顧客の行動分析をすることで機会損失を低減
骨格検出などの技術により、細かな体の動きから顧客が商品を前にしてどのような行動をとっているかが解析できるCWS。例えば一定時間、棚の前を動かずにいたり、商品を手にもって立っていたりする人物を、商品検討している顧客として検知・認識し、通知することが可能です。
商品検討をしている顧客がいることを店舗スタッフがリアルタイムで知ることができるため、タイムリーなタイミングで声掛けをすることができます。スタッフを常時配置するのは難しいものの、商品説明をすることで購買率が上がる商品や、単価・利益率が高い商品に対して効果が期待できます。
実際に導入した店舗では「機会ロスすることなく、タイムリーに接客できる」、「いったんお声がけしておき、しばらくお客様ご自身で検討いただいた後、最後の検討段階でスタッフから声をかける流れができた」という声も上がっています。店舗によっては、導入前に比べて売上が20%アップした実績もあります。
また、売上向上により接客の重要性を改めて周知することができ、「スタッフの考え方が変わった」「スタッフ間のコミュニケーションが活発になった」という実例もあります。
データ活用による業務効率化
映像から検知、収集できるデータは多岐にわたり、エリアを指定した混雑検知などの全体の人の流れのほか、年代や性別、服装、顔認識などがプライバシーに配慮した状態で定量的なデータが入手できます。
加えて、注目度がわかる視認測定や行動認知なども可能なため、お客さまの手伸ばし行動、滞在時間データ、購買前の動線や立寄率、回遊特性などをデジタル化することが可能です。
これにより、商品が購入されたときのデータが収集できるID-POSデータだけではわからなかった、「購入までの経緯」「購入を断念するまでの経緯」などを見える化。購入されない商品のデータも蓄積されるため、商品の配置変更といった棚割り改善や店内POPの検討に活用することもできるなど業務を効率化することができます。
ドラッグストアの運営と接客におけるデータ活用で
「業務変革」と「顧客接点変革」を推進
これまで店長やスタッフの経験や勘に基づいて行われていた在庫管理や声掛けのタイミングは、顧客行動を収集してデータ化・分析することで、より精度の高い改善案へと繋ぎ、実施することができます。
購入した人のデータだけではなく、購入しない人のデータを映像データで検知・解析することで、顧客対応をブラッシュアップさせ、顧客満足度を高めることが売上アップへと導くでしょう。