データを活用して「何ができるか」ではない
企業に求められる「目的志向型」への変革

データが生み出す新たな価値によって社会全体が変革される「データドリブン社会」において、企業が生き残るためには何をすればいいのか。最新動向と具体的な実践事例から、そのヒントを探る。

データが新たな価値を生み社会が変革されていく「データドリブン社会」

「データは21世紀の石油である」ーー。世界経済フォーラムが2011年に公表した報告「パーソナルデータ:新たな資産カテゴリーの出現」におけるこの言葉を一度は耳にしたことがあるだろう。

この言葉が示す通り、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表されるデジタルプラットフォーマーが台頭し、UberやAirbnb、Alipayなど、デジタルサービスが発展してきた。これらを支えたのは、データの取得および活用手段の急速な発達である。

データの取得と活用手段が急速に発達した理由は、2つあると考えられる。1つが「データの爆発的な増加」だ。2025年に世界で生成されるデジタルデータは、2016年の10倍の163ゼタバイトになると予測されている。

もうひとつが「テクノロジーの高度化」だ。データ収集手段であるスマホなどのデジタルデバイスやIoTが登場し、データ分析手段としてのAI(人工知能)が進化した。これらがかみ合わさったことで、デジタルデータが新たな資源として社会のあらゆる領域に浸透してきたと言える。

これからの時代には、デジタルデータが私たちの行動を決める「データドリブン社会」が到来する。データドリブン社会とは、データが新たな価値を生み、それによって社会が変革されていく社会のことだ。

富士通のエバンジェリストである築山は「例えば、個人のデジタルデータを源泉として、それを分析して価値を生み出すデジタルサービスが生まれる。それがまたデータを生み出し、新しいサービスを生み出していく。この循環が多層的かつ連関しながら進むことで様々なサービスがデータを媒介にして生まれていく。これが、データドリブン社会だ」と説明する。

富士通株式会社
エバンジェリスト
築山

データの取得と利活用をめぐる世界の潮流

デジタルデータの活用をめぐっては、世界には大きく3つの潮流がある。

1つ目が中国の「国家主導型」である。中国では、いわゆるBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)というプラットフォーマーが急速に成長している。その対象市場については当面は中国国内であり、政府主導でデータドリブン社会を形成している。データの越境禁止などの制度が存在する。

2つ目が米国の「自由主義型」である。GAFAを擁する同国では、個人の責任と企業活動は自由に行うという考え方を基本としており、データを国で資源として有効活用する政策や、規制はあまりない。他国との関係においては、データの越境の自由化など、中国とは異なる。

3つ目が欧州や日本が取る「連合モデル」だ。巨大なプラットフォーマーが存在しない地域であり、企業が連合してデータを共有する“エコシステム”を形成することでデジタルサービスを生み出すという戦略を取る。

日本は2019年の世界経済フォーラムにおいて、「Data Free Flow with Trust(DFFT)」というメッセージを打ち出し、データの独占を防ぎ、安心・安全で自由で開かれたデータ流通市場を目指している。これは「連合モデルの推進、デジタル貿易協定で有利に進め、世界のデータの覇権争いで存在感を示したいという強い意志の表れ」と考えられる。

2019年9月には内閣官房デジタル市場競争本部を設置し、デジタルプラットフォーマー取引透明化法と独占禁止法によってデジタル世界におけるルール整備を目指している。また、データ流通施策としては、パーソナルデータを預かって、流通させる「情報銀行」の仕組みの整備も進めている。

[図]

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データを活用して「何ができるか」ではない
企業に求められる「目的志向型」への変革

概要

  • データが新たな価値を生み社会が変革されていく「データドリブン社会」
  • データの取得と利活用をめぐる世界の潮流
  • 「ゲームチェンジ」はもう始まっている
  • 目的志向型ビジネスへのチェンジが求められている
  • 既存領域でのデータ利活用が成功のカギ
  • データドリブン社会におけるビジネス創出とデータ利活用

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