「製・配・販」のデジタル革新を実現する「3つのステップ」とは
現在、物流・サプライチェーンの分野で様々な変革が起きています。EDIの導入や流通BMSなどシステム導入は進んでいるものの、製造・卸・小売を統合したサプライチェーン全体の最適化には、まだ課題が残されています。こうした課題を解決しつつ、「製・配・販」の人・サービス・システムを連携したサプライチェーンの最適化に向けた取り組みについてご紹介します。(Fujitsu Insight 2019セミナーレポート)
Society 5.0時代に求められる「サプライチェーン統合プラットフォーム」
現在、政府ではAIやIoTなどの最新テクノロジーを活用し、より便利で住みやすい社会である「Society 5.0」の実現に向け様々な取り組みを進めています。
経団連は「Society 5.0時代の物流―先端技術による変革とさらなる国際化への挑戦」を提言。サプライチェーン全体を最適化する「つながる物流」、物流リソースを共同利用する「共同する物流」、自動運転技術やロボットなどで省人化を推進する「人手を解放する物流」、顧客の潜在ニーズを発掘し新たな価値を創出する「創造する物流」、次世代自動車等を用いた環境負荷低減やドローン等による災害情報の把握を図る「社会に貢献する物流」の5つを重要なテーマとして掲げました。「Society 5.0時代の物流」の実現には「つながる物流」すなわち、複数のサプライチェーンを結ぶプラットフォームを構築し、プラットフォーム上で情報連携を行う「サプライチェーン統合プラットフォーム」が必要です。
加速するサプライチェーンの最適化と浮き彫りになった課題
現在、商社系列や大手小売を中心に、「製・配・販」のサプライチェーンの連携におけるデジタル革新が進められています。これまでも、EDI(電子データ交換)や流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)が普及・浸透していましたが、さらに各種テクノロジーを活用したサプライチェーンの最適化が加速しているのです。
EDIや流通BMSの普及、サプライチェーンのシステム化が進展してきた中、解決すべき課題が浮き彫りになってきています。
まずは複数企業がつながるサプライチェーン業務によって、物流に関する業務の見える化・自動化が阻害されているという点です。サプライチェーン上には複数のメーカーや卸、小売が存在し、それぞれに受発注や配送といった業務を行っています。これらの業務について、大手企業間ではEDIを使ったシステム連携が可能でも、中小企業や新規参入企業はシステム化が進んでいないため、受発注や配送のやり取りに電話やFAX、Excelシートによるやり取りなど、システムを介しないケースが多くあります。そのため、連携ミスや手作業によるシステムへの再入力の手間がかかっている状況があり、また、バラで入荷したり、返品が発生したり、受発注の形態も多様化して、システムの通常処理では対応できないケースも増え、業務が煩雑化しています。
もう一つが、市場環境の急速な変化や新技術の登場に対し既存の業務が対応できていないという点です。今や物流・流通市場では、製造・卸・販売など複数企業が複雑につながることでサプライチェーンが構成されています。一方で、例えば最新のクラウドサービス(地図機能やBI、SNS)やモバイル、QRコードの読み取り・管理、AIやブロックチェーンなどの新技術も登場しており、こうした新たな技術を業務に活用したいと考えても、既存システムがこれらの新技術に対応していないため、大規模なシステム改修が必要になるケースがあります。改修に必要な工数を考えるとすぐにシステム対応することは困難であり、人手で管理せざるを得ない企業が少なくありません。結果、サプライチェーンの最適化が進まないという結果を生み出しているのです。
サプライチェーン最適化の「3ステップ」を実現するクラウドサービス「RMP」
サプライチェーンを取り巻く課題を解決するためには、阻害要因を段階的に解決していく必要があります。具体的には、3つのステップが考えられます。
- 物流に関する業務の見える化・自動化
- 外部サービスや新技術との連携による業務品質の向上と効率化
- 製造・卸・小売の「製・配・販」横断でサプライチェーン全体の効率化
3ステップでの課題解決を支援するため、富士通では、製・配・販の物流に関する業務を見える化・自動化し、サプライチェーンのシステム改修を容易に実現できるクラウドサービスを提供しています。それが、データ連携・収集プラットフォーム「FUJITSU Cloud Service RunMyProcess」(RMP)です。
RMPは、業種・業務を問わず、パブリッククラウド上でWebベースのアプリケーションを開発・実行するサービスです。手作業の入力を簡単に自動化できるローコードプラットフォームで、ドラッグ&ドロップやテンプレートなどの活用でコーディングを最小限に抑えてシステムを開発・構築できます。
RMPの特長として、「充実したワークフロー開発環境」、「クラウドベースの開発実行環境」、「外部サービスとのAPI接続」の3点が挙げられます。ワークフロー開発環境では、簡単なマウス操作と変数の定義をするだけで業務ワークフローを作成できます。そのため、比較的容易にシステム化を実現でき、例えば例外処理のシステム(EDI)連携を大規模なシステム改修なしで実現することが可能となります。
また、外部サービスとのAPI接続により、外部クラウドサービスやオンプレミスシステムとの連携も可能です。例えばGoogleの地図やカレンダーを連携させる、Salesforceにアクセスするといったことも簡単に実行できます。
システムを大規模改修せずにサプライチェーンを最適化
RMP活用の具体例として、電話やFAXを使った受注から発注までの業務をワークフロー化し、大規模なシステム改修を行わずにEDIに連携した事例があります。ある企業では、小売・卸・メーカーなど全ての得意先からの依頼が、電話やFAX、メールなど様々な手段で伝達されていたため、伝達ミスの防止や作業負荷の増大が課題となっていました。これらの課題解決のため、受発注業務をワークフロー化し、コネクタを使ってEDIへの連携を実施しました。これにより、すべての取引先からの受発注をひとつのシステム上に連携することができ、物流に関する業務の見える化・自動化と作業の軽減に繋がっています。
新技術や外部サービスとの連携で、配送業務状況を見える化した事例もあります。トラックなどでの配送中に事故などのトラブルや渋滞による遅延などが発生した場合には、電話やメールによるやり取りが中心になりますが、連絡業務の煩雑さや連絡ミスなどが課題となっていました。そこで地図サービスとGPSを使ったIoTプラットフォームを連携させ、トラックごとの配送状況を見える化し、さらに遅延が発生した場合はその状況を自動的に一斉通知するワークフローを作りました。これにより、トラックの状況を地図上で確認することができ、トラックの有効活用とトラブルの早期検知が可能になりました。
物流とは違う事例として、スマホとQRコードを利用した落とし物管理の効率化の例があります。従来は台帳やタグでの管理でしたが、スマホの写真やQRコードで管理し、問い合わせにもタイムリーに対応できるようになりました。このように様々な技術に柔軟に対応できることもRMPの特長の一つです。
「製・配・販」を統合し「Society 5.0時代の物流革新」を支援
富士通はRMPの提供だけでなく、Society 5.0時代の「物流革新」の支援にも積極的に取り組んでおり、独自のメソッドとノウハウに裏付けされたワークショップの実施やコンサルティングサービスをご提供しております。
そこでは、「製・配・販」の各事業を手がけるお客様に寄り添い、お客様と一緒に分析・実行・検証の小さなサイクルを継続的に回しながら何度も改善を行います。
検証や改善を繰り返す中で、RMPを使った可視化・ワークフローの実現や、スマホやIoT、AIといった技術との連携など、デジタル革新の技術をどのように使っていくかを検討し、使用するデジタル革新の技術に目処が付いたところで、RMPを使いながらPOCを進めていきます。すぐにある程度の機能を実現することができるローコードの強みを活かし、短期間で効果を検証しながら段階的に課題を解決し、徐々に適用範囲を広げていくことで、スモールスタートで始めながら継続的にエンハンスすることが可能です。
お客様の物流のデジタル化、サプライチェーンの最適化に関連したお悩みの解決をサポートいたします。物流の将来あるべき姿を見据え、そのために今求められていることをお客様と共に実現することを富士通は支援していきます。