国立研究開発法人理化学研究所 様
世界水準のAI研究拠点をめざす理研AIPセンターを、富士通が強力に支援
富士通は国立研究開発法人理化学研究所様(以下、理研)のAI研究拠点、革新知能統合研究センター様(以下、AIPセンター)にAI研究用計算機システム「RAIDEN(Riken AIp Deep learning ENvironment)」を納入いたしました。RAIDENは2017年4月より研究開発にご利用いただいています。RAIDENには富士通のスーパーコンピュータに関するこれまでのノウハウが最大限活用され、同センターの研究開発を支援しています。システムおよび、AIPセンターの現状や今後について、センター長の杉山将氏、ユニットリーダーの美添一樹氏にお話をうかがいました。
導入システム概要
総理論演算性能 | 54PFLOPS(FP16) |
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計算ノード | 「NVIDIA DGX-1」54台
「FUJITSU Server PRIMERGY CX2550 M4」64台 「FUJITSU Server PRIMERGY RX2530 M2」32台 |
ストレージシステム | 「FUJITSU Server PRIMERGY RX2540 M2」6台
「FUJITSU Storage ETERNUS(エターナス) DX200 S3」8台 「FUJITSU Storage ETERNUS DX100 S3」1台 |
ソフトウェア | 「FUJITSU Software FEFS(エフイーエフエス)」
「Univa Grid Engine」 |
本システムは、最新のCPUおよびGPUを用いた2種類の計算サーバとストレージシステムから構成されています。「DGX-1」向けには、ディープラーニング用の標準ソフトウェア環境に加え、オンサイトのセキュアーなネットワーク内で活用できるカスタマイズソフトウェア環境を構築しました。また、簡易で柔軟な利用ができる運用管理機能(計算実行環境の作成・再現)と、個人情報・知財情報などの重要性の高いデータの利用にも対応するセキュリティ・信頼性を実現しています。
国家戦略としてAI研究の研究拠点を設立
AIPセンターは世界の研究者が集う梁山泊をめざす
現在の社会を次の段階へと発展させるうえで、一つのブレークスルーと期待されているのがAI(人工知能)。現在、世界各国で激しい研究開発競争が繰り広げられています。
日本はこの分野で出遅れていましたが、2016年に文部科学省が本格的に動き、AIP(Advanced Integrated Intelligence Platform)プロジェクトを発足しました。そこで、プロジェクトの研究中心拠点として設立されたのがAIPセンターです。センター長を務める杉山将氏は次のように語ります。
「従来は個々の研究者がばらばらに研究を進めていましたが、それでは大きな飛躍はむずかしい。国が十分な予算を付け、多方面から研究者を集結させることで、複数の研究が組み合わされたり、研究者同士が互いに触発されたりするなどの効果を期待しています」
しかし杉山氏は、ここを“日本だけの”センターにする意識はなく、研究者を世界中から集めつつあります。「ここを国際的研究拠点として育てたい。AI研究は日本人研究者だけではまったく足りません。研究者の国際化はセンター成功の必須条件と言っても過言ではありません」
現在AI分野ではディープラーニング(深層学習)が大きな潮流です。特に画像や音声の認識では、ディープラーニングを用いると性能が段違いに向上するため、研究のほとんどはディープラーニングになっているほどです。
AI分野はアメリカが先行してきた分野です。特にディープラーニングの応用研究は、投資金額でも圧倒的な規模を持ち他国を凌駕しています。「一方、理論面は未知の部分も多く、基礎理論の研究はこれから日本が存在感を示せる可能性の高い分野だと思います」
導入の背景
三つの研究グループで多様な研究領域をカバー
AIPセンターは大きく三つの研究グループから構成されています。まず、いわゆる基礎研究を担う汎用基盤技術の研究グループです。「AIPプロジェクトは文科省から10年の研究期間が与えられています。研究期間がこれほど長期なのは世界的でも稀なことで、海外の研究者にも、この点に魅力を感じる人がいると思います」
第二は、目的指向基盤技術の研究グループです。「特定の応用分野に焦点を当てた技術の開発です。この分野ではアメリカのIT企業が何千億円規模の投資をしていて、同じ土俵で勝負するのは困難。そこでここでは、日本の社会課題の解決にAIを役立てようと考えています。医療診断、都市インフラ管理などですね。こうした課題には、日本で公的に蓄積された豊富なデータを利用できるのも強みです」
第三は、社会における人工知能研究グループで、AIの社会的影響について研究しています。「この分野には文系の研究者も数多く参加しています。文化や制度は国によって異なるので、その比較研究などにも携わります」
これらの研究に、富士通が納入したRAIDEN計算機システムが活躍中です。AIPセンターの研究者の一人であり、システム導入を担当してきた美添一樹氏(探索と並列計算ユニット:ユニットリーダー)はこう振り返ります。「ポイントは計算速度と利便性の両立。研究においてはアイデアを形にするまでの間をいかに短くするか、手間取らないかが勝負で、そこを重視しました」
従来、スパコンではソフトがバージョンアップされると、過去の研究成果が使えなくなる、動かせるようにするだけで苦労するといったことがしばしば起こりました。「そこで、過去の研究資産をソフトごと保管するコンテナという技術を採用。スパコンを含め先進的で総合的なIT技術を有する富士通が対応したことで安心して導入ができました。一方、計算速度はGPUを数多く使って確保しました。このようなシステムを現時点で構築しているベンダーは、全世界を見ても数は少なく、富士通はそのうちの一つと言えます」(美添氏)
現在、RAIDENシステムの活用が多い研究としては、医療画像を認識・解析して診断や治療を支援する研究、ドローンで橋梁などのインフラを撮影し、維持管理に役立てる研究があります。例えばドローンによる撮影画像は動画であるため、データ量が膨大で、RAIDENの大容量ストレージも大いに貢献しています。
「研究者の方からは『RAIDENは研究の生命線です』という声も聞きました。今やRAIDENは、センターの研究に不可欠なツールとなっています」(美添氏)
富士通との協力関係
AIの実用化を促進する、企業のノウハウや影響力
「スパコンについて、国内で抜群のノウハウを持つ富士通の協力を得られたことは、結果として良かったと感じています。スパコンは購入したらすぐ利用できるものではなく、周辺システムも含めて面倒を見ていただかなくてはならないからです」(杉山氏)
理研と富士通は「理研AIP-富士通連携センター」を開設してAI分野の共同研究を行うほか、スーパーコンピュータ「京」の後継機であるポスト「京」コンピュータの開発も共同で取り組むなど、多面的な協力関係にあります。また、富士通がAIに関する知見や技術を「Human Centric AI Zinrai」として体系化しAI分野に積極的に取り組んでいることもあり、理研の富士通への期待はRAIDENに止まらず、さらに広がっています。
「私たちが手がけているのは基礎研究ですが、それを実社会で活用したいという思いも強くあります。アルゴリズムが実用化され、世界に普及するところまで持っていきたいわけです。しかしこれは研究機関だけでは不可能。現実にマーケットを持ちそこに関わっている企業の協力を得てこそ実現できることなので、この点への期待も大きいですね」(杉山氏)。
人材面での効果も見逃せません。日本では博士課程に進む学生が少ない状況が続いていますが、杉山氏には、博士レベルの人材が増えないと日本の学術の土台そのものが揺らいでしまうという危機感があります。「私たちは富士通の方々とも一緒に研究をしています。企業に属しつつ、アカデミックな関心の高い人がAIPセンターなどで活動する機会が増えるとよいのではないかと思います」
またAI研究の進歩は非常に早いため、現行のシステムも数年後は刷新の必要があるかもしれません。AIPセンターは、富士通ならそうした変化にも的確に対応できるものと期待しています。
富士通担当のコメント
RAIDENは当社にとっても技術革新的なシステムでしたが、富士通グループや関係会社で協力し、AIPセンター様の「研究者が研究に専念できる計算環境を」というご要求に応えることができました。
今後も先進的なスパコン技術やZinraiをはじめとしたAI研究開発で多角的にAIPセンター様をご支援し、一緒に新しい明日を創造していければ光栄です。
国立研究開発法人理化学研究所 様
創立 | 1917年 |
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理事長 | 松本 紘 |
本社所在地 | 埼玉県和光市広沢2-1 |
ホームページ | 国立研究開発法人理化学研究所様 ホームページ 革新知能統合研究センター (AIP) |
[2017年10月27日掲載]
[2018年4月20日更新]
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