新明和工業株式会社 様

立体駐車場の自動作図システムを構築し、生産性と設計品質を向上
~設計業務を効率・標準化し、スムーズな検図やものづくりにも貢献~

航空機メーカーとして創業し2020年に100周年を迎えた新明和工業株式会社(以下、新明和工業)様。経営の柱であるパーキングシステム事業は、安心・安全、便利で快適なモビリティ生活を可能にする機械式立体駐車場の販売、設計、据付施工からメンテナンス、リニューアル、駐車場経営・運営管理まで、トータルソリューションを展開しています。

都市インフラの充実で需要が高まる立体駐車場の設計業務には、2004年から富士通株式会社が提供する三次元(3D)CADソフトウェア FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA 設計製造支援 iCAD SX(以下iCAD SX)を標準の設計ツールとして活用されています。今回、生産体制の増強を目指してマンパワーで時間を要した作図作業を標準化し、新たに自動作図システムを構築されました。大幅な業務効率化と設計品質の向上・均質化、製造委託先のファブリケーターへのスムーズな図面供給などの成果を生み出しています。今後も、検図支援システムの活用検討やものづくりフェーズのトータルなデータ連携など、富士通(株)FJQSユニット(以下FJQSユニット)は確かなサポートで持続的な貢献を果たしていきます。

課題
効果
課題立体駐車場の設計工程で、鉄骨本体部は自動作図システムを採用し短納期と効率化を実現してきたが、受注増に伴う生産体制の増強に向け、まだ自動化していない本体周辺部の作図業務も高効率化を図り生産性を向上したい。
効果ファブレスメーカーとして製造委託先に発注する2次元図面の作図に、長年にわたる標準の設計ツールであるiCAD SXの自動作図システムを構築。Excelを活用した数値データと連携し、ボンベ室・本体胴縁、棚柱など本体周辺部の設計を自動化。設計工程の作図・検図時間の半減に成功した。
課題一品仕様でフルカスタマイズモデルの駐車場の設計は、作図者それぞれに図面の書き方が異なり、微妙な違いが生じていた。また、作図自動システムの構築には、設計業務の作業ルールを統一し標準化を図る必要があった。
効果大量の既存図面をサンプルに、寸法やレイアウト、部品選択などの設計作業ルールを統一。作図フローの個人差をなくし、設計品質を向上し均質化。また、開発チェックを2段階に分ける工夫により、要件定義の期待を上回るシステムを構築し、新たな自動化機能の追加も実現。
課題さらなる生産性向上を実現する運用管理へ近い将来、受注から設計施工まで、ものづくり情報データの管理・活用を一元化する一貫したシステムを構築していきたい。
効果継続して棚柱の設計業務も、iCAD SX自動作図システムの構築に取り組み、設計品質の向上は、ファブリケーターにおけるスムーズな図面利用にもつながっている。検図支援システムの検討にも着手し、自動化フェーズから設計データの活用フェーズへと歩みを進めようとしている。
導入の背景

生産能力を増強する設計効率の向上へ、自動作図の鍵を握る業務フローを標準化

タワー式パーキング『エレパーク』®など先進的な機械式立体駐車場を開発し、国内で業界トップクラスの実績を誇る新明和工業。最適なパーキングソリューションを提供する舞台は、海外にも広がり始めています。

「右肩上がりが続く受注に応える生産能力の増強へ、メイン機種であるタワー式の設計効率の向上が大きなテーマでした」

そう語るのは、設計施工を統括する製品本部長 小森 保彦氏です。年間の生産基数を増やすことを目指して2018年、2次元設計の自動作図システムの導入プロジェクト(以下PJ)が始動しました。

「開発工程は3次元設計ですが、ファブレスのものづくり工程は、製造委託先の町工場の環境に合わせた2次元設計です。3次元と2次元の両用設計のiCAD SXは、当社の運用体制に合致しており、とても利便性が高いです。今後も使い続けていきますので、今回もFJQSユニットに協力をお願いしました」(PJリーダー 設計部長 森田 寛氏)

屋根や壁がある独立型とビル内に納める塔内型、2タイプがあるタワー式で、受注の多い独立型から着手すること。すでに自動化した柱や梁など鉄骨本体部に加え、ボンベ室や胴縁、棚柱などの周辺部にも自動作図を拡大すること。効率効果を高める優先順位と適用範囲で要件定義を進めるなかで、鍵を握ったのが設計業務の標準化です。作図する設計技術者の数だけ異なる描き方やアレンジがあり、部品選択の判断も任せていました。

「構造上や納まりに問題ない図面でも、胴縁の寸法ピッチの割付や端数の処理方法などに違いがあると、検図に手間がかかります。そのムダもなくすように作業ルールの統一と数式化を進めました。もちろん、すべては自動化できません。自動作図後の手修正も含めて、自動化する、しないの選別をFJQSユニットと一緒に決めていきました」と語る、PJメンバーの設計部 樋口 勇人氏。最も合理的な標準パターンを検討するために、FJQSユニットにいくつかのサンプル図面を提供しました。

「作図フローや設計に大事な要素を知ることができました。設計のルール化はお客様、システムで実現するルール化は私たち。そのキャッチボールを、丁寧に繰り返しました」(FJQSユニット 吉本周平)

「どんどん質問が鋭くなり、こちらの意図が伝わるスピードも早くなっていきました。そこまでルール化しないといけないのか、と気づいたことも多々あって、言われた通りにやるだけではない姿勢に、助けられましたよ」(森田氏)

新明和工業株式会社
パーキングシステム事業部
製品本部
設計部 部長
森田 寛 氏
新明和工業株式会社
パーキングシステム事業部
製品本部
設計部
樋口 勇人 氏
導入の効果

開発フェーズで2段階チェックを実施し、要件定義とのズレを防ぎ自動化機能の追加も実現

iCAD SX自動作図システムは、つくりやすさや見やすさにもこだわりました。パラメーターやレイアウトなどをヒアリングし、システムをつくりこむ開発フェーズでも、FJQSユニット 中原 大樹と得丸 隆幸は工夫を凝らしました。

「細かい寸法や位置、文字の表記ずれなど微妙な調整は、開発を進めてみないとお客様も判断できないこと。絶えずメールで問い合わせし、レスポンス良く回答をいただいて、とても開発を進めやすかったです」(FJQSユニット 中原)

「最終チェックの前に、ある程度開発が進んだ段階で業務フローや画面を確認いただき、要件定義とズレが生じないように心がけました」(FJQSユニット 得丸)

森田氏には、嬉しいシーンがありました。2次元図面だけでなく3次元図面も、FJQSユニットが自ら作図してヒアリングを進めたことです。「作図者が何をどう考えてレイアウトするのか、理解を深めようと力を尽くしてくれました。実際に完成した図面も、素晴らしい出来でしたよ」

日常的にやりとりを重ねた樋口氏も、笑顔で振り返ります。「2段階に分けて早めにチェックできたおかげで、作図者からも、この作業も自動化できたら・・・、と提案の声が生まれ、追加機能として組み込むことができました。Excelに入力した数値データとiCAD SXの連携など、システム開発の枠組みを越えた相談にも即座に対応いただけるなど、距離感の近い親身なサポートでしたね」

富士通株式会社 FJQSユニット
エンジニアリングソリューション本部
エンジニアリングDX推進部
吉本 周平
今後の展望

設計工数や検図時間が半減し、棚柱にも適用範囲を拡大。今後は設計データの活用フェーズへ。

ボンベ室と本体胴縁の自動作図システムは2019年2月に本稼働し、狙い通りに大きな成果を上げています。

「設計工数は、1基あたり平均48時間だったのが21時間と半減し、自動作図システムの適用率も全体の案件のうち、44%に自動作図システムを適用できています。検図作業も平均10時間が5時間になり、業務効率化だけでなく、設計品質の向上や均質化にもつながっています。ファブリケーターからも『加工図の作成時に微妙な違いがなくなり、つくりやすくなった』と嬉しい声が届いています」(森田氏)

PJはその後も継続推進し、棚柱の設計にも適用範囲を拡大するiCAD SX自動作図システムが間もなく稼働します。「時間がかかることは、自動化へ。効率アップの余地はまだありますし、組立図と部品図の相違チェック機能や検図支援システムも、FJQSユニットに相談しています」と森田氏。今後は、営業の受注条件や仕様情報を、iCAD SXで設計モデルの構築や必要な部品調達に活用できる仕組みづくりも目指しています。その実現を小森氏は「そう遠くない将来ですよ」と展望します。

「ファブリケーターに渡す2次元図面も紙出力からPDFに移行済です。スペックなど属性情報も一緒に提供できれば、営業からものづくりまで正しい情報データをスムーズに共有でき、一貫した管理が可能になります。

立体駐車場は、ものづくりでも機械ではなく建築です。数千件の実績がある当社も、全く同じものは2つありません。iCAD SXが単なる『お絵かきツール』で終わらないように、自動作図から始まる未来の建築のカタチを、FJQSユニットにも一緒に考えていただければ、と」

期待の声をFJQSユニット 吉池 洋はしっかりと受け止めます。「これまでの設計効率化に加え蓄積した図面やデータのものづくりへの活用が重要です。進みゆく建築にも相応しい提案・サポートをお約束いたします」


左から、FJQSユニット エンジニアリングソリューション本部 エンジニアリングDX推進部 部長 吉池 洋、新明和工業株式会社 樋口 氏、製品本部長 小森 保彦 氏、森田 氏、FJQSユニット 吉本

新明和工業株式会社 様

事業内容輸送用機器製造業(産機システム、流体関連製品、パーキングシステム、航空機コンポーネント、建設・環境・物流用特装車など)
設立1949年11月
所在地兵庫県宝塚市新明和町1-1
代表者取締役社長 五十川 龍之
資本金15,981,967,991円(2021年3月末現在)
社員数5,431名(連結、単体3,122名、2020年9月現在)
ホームページhttps://www.shinmaywa.co.jp新しいウィンドウで表示
概要「Brighten Your Future」をブランドステートメントに、創業100周年を迎えた2020年2月から、持続可能な経営・事業でグローバルに貢献する「価値共創カンパニー」を長期ビジョンに掲げています。航空機、特装車、流体、産機システム、パーキングシステムの5つの事業を柱に、開発・製造・販売・メンテナンスの一貫体制を構築。量産品ではなく、時代や顧客のニーズに耳を傾け的確に応えるオーターメイドの技術・製品・サービスの提供は、世界170ヶ国以上に広がっています。一翼を担うパーキングシステム事業は、エレベーター式をはじめとする機械式駐車設備や航空旅客搭乗機の設計・製造で、快適な都市環境に貢献しています。

[ 2021年2月10日取材・2021年4月23日掲載 ]

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