ハイブリッドワーク時代のネットワーク運用自動化
運用負荷が激減!「AI+ITエキスパートの支援」で企業ネットワークが変わる
ハイブリッドワークの普及により、既存ネットワークの課題が表出
コロナ禍を経て、在宅とオフィスを組み合わせたハイブリッドワークを実践する企業が増えている。また、オフィスを社員のコミュニケーション活性化の場ととらえ、レイアウト変更やフリーアドレス化を進める企業も増加し続けている。これからのオフィス拠点の重要な役目の1つは、場所にとらわれない多様な働き方を実現することで、組織のポテンシャルを引き出すことだといえるだろう。
ただ一方で、この状況は既存の企業ネットワークの課題も浮き彫りにした。働く場所の流動化に伴い、既存の企業ネットワーク環境のままでは業務を快適に行えるだけのサービス品質を提供できなくなっているのである。
例えば、通信帯域に気兼ねせずWeb会議のカメラを「ON」にでき、社員同士のエンゲージメントを高められる環境は重要だ。また、オフィス内のどこにいても無線LANで社内外とのコラボレーションが実現できる仕組みも、業務効率化を高めるためには不可欠といえるだろう。
しかし、企業ネットワークの仕組みや運用の見直しは、簡単ではない。なぜなら、企業ネットワークは今後より一層複雑化・高度化していくため、管理者には高いスキルが要求されるからだ。以前は管理対象となるスイッチやルーターなどの機器の配置、ユーザーの働く場所が固定されており、管理者が現場で機器の設定変更やトラブル対応を行うことが容易だった。だが現在は、フリーアドレス化や無線LAN環境の導入、クラウドサービスの利用など、管理対象機器の種類や数量が増え、一元管理が難しくなっている。
さらには、「DXに貢献すべきIT部門が、システムの運用管理に足を取られていてよいのか」という問題もある。つまり今、企業が考えるべきは、複雑化したネットワークの運用をIT部門から解き放ち、標準化・自動化することであり、運用品質の向上や、本来注力すべき生産性の向上、DXの推進をより活性化させていくことにある。誰もが快適に使えるネットワーク環境を、管理者の負担を極力省きながら提供し続ける。そのための機能を備えた、新しい企業ネットワークの形を検討すべきなのだ。
高度な可視化と自動化により、ネットワークの運用負荷を劇的に削減
このようなニーズに応えるため、富士通が提供開始したのが、「FENICS ビジネスSDN ネットワーク運用自動化 powered by Cisco DNA Center」である(図1)。
「これまで富士通が培ってきた、構築や運用のノウハウをパッケージ化し、AIベースの高度なネットワーク可視化機能と併せてクラウド型で提供します。企業・組織のネットワーク運用の標準化・自動化を強力に支援することで、快適なネットワーク環境をユーザーに容易に提供できるようにします」と富士通の後藤 知範氏は述べる。
このサービスでは、様々なIT部門のユーザーの声を反映し、図2にあるような「検討」「導入」「運用」の各フェーズに応じた特徴のあるメニューをラインアップした。
検討フェーズでは、「どれだけ運用負荷を削減できるのか」「費用対効果はどうか」という声に応えるため、トライアルサービスを用意。実環境での利用を通じて導入による効果を判断できるという。
導入フェーズでは設計パラメータなどをテンプレート化し、サービス品質を統一。顧客企業の初期投資抑制、導入期間短縮も実現可能だ。
そして運用フェーズでは、導入した本サービスを、より使いこなすための支援として、顧客担当者のトレーニングを含めた運用自走化支援を行う。これによりネットワーク運用にかかる工数を大幅に削減し、IT部門が組織全体の生産性向上、DX推進などに注力できる環境づくりをサポートする。
「サービスは一朝一夕で生まれたわけではなく、長い時間をかけてシスコシステムズ(以下、シスコ)様と共に構想を練ってきたものです。また、富士通が『FENICS(注)』で培ってきたネットワーク運用支援の実績・ノウハウを注ぎ込んだものでもあり、まさに両社の強みが生きたサービスだと自負しています」と富士通の金田 直樹氏は強調する。
実際、同社のもとには、Cisco DNA Centerの前身製品である「Cisco Prime Infrastructure」の豊富な機能を使いこなせていない、という悩みを持っていたユーザーから「これなら安心だ」という声が複数届いているという。
可視化と分析、自動化までAIがサポート
このサービスでAIベースの可視化機能を担うのが、シスコの統合ネットワークコントローラ「Cisco DNA Center」だ。
「コアテクノロジーである『Cisco DNA(Digital Network Architecture)』は、ポリシーベースの自動化やAI/機械学習、仮想化技術などを駆使することで、ネットワークの俊敏性や確実性、セキュリティを高める技術です。これを搭載したCisco DNA Centerにより、複雑化する企業ネットワークの現状を可視化・分析し、あるべき状態に保つことができます。この可視化こそ、ユーザーの体感品質をはじめとするITインフラ全体の運用品質を高め、快適なハイブリッドワークを実現する第一歩だと我々は考えています」とシスコの眞﨑 浩一氏は紹介する。
企業ネットワークを構成するシスコのルーターやスイッチ、無線アクセスポイントなどの機器をセンサーとして、アプリケーションの通信品質やユーザーの体感品質などの情報を収集、分析し、ネットワークの状況を可視化するという。
また、顧客の利用状況のデータやテクニカルサポートで得たデータは、匿名化されてシスコのクラウド上に蓄積される。これをAIが継続的に学習することで、快適な通信環境の実現に生かしていく。ネットワークの状態を数値化することで、システムにおける“健康状態”を表示。「壊れてから直す」のではなく、「未然に防ぐ」運用を支援する(図3)。
「平日の出社時」「昼休み時間」「休日」などの通信のパターンを学習したAIが、平均値から逸脱する状況を検出して表示する。これにより、ネットワークに不具合が起こる前の対処など、その原因や影響範囲を見つけ出し、事前に対応をするといった運用が実現できる。また、全社的な無線LANに関する様々なKPIを一画面で確認できるため、影響範囲の調査や時系列での変化をすぐに把握することも可能だ。特に複数のツールを使う管理者の負担を、大幅に下げられる。
「管理ダッシュボードを見れば、誰でもユーザーの体感品質低下の原因を推測でき、効果的な対策につなげられます。特定のベテラン運用者のみでなくネットワーク運用に携わる誰もが、シンプルかつ直感的にネットワークを運用管理できる点も大きな特徴です」と同社の生田 和正氏は続ける。
脆弱性チェック自動化、無線LAN/有線LAN機器の一括自動更新も可能
FENICS ビジネスSDN ネットワーク運用自動化 powered by Cisco DNA Centerは2022年秋にリリースされた商品だが、既に導入ユーザーも出始めている。ここではコアテクノロジーとして採用されているCisco DNA Centerの導入効果を紹介しよう。
拠点全体の通信状況を可視化し、快適な体感品質を提供できることは先に紹介した。ほかにも例えば、シスコ製のスイッチや無線LAN機器のバージョンアップが大幅に簡略化できる。管理ダッシュボードで設定したバージョンアップ内容を、すべてのスイッチ、無線LANに一括反映できるためだ。「あるお客様は、約20人のスタッフが数時間かけて実施していた数100台の機器のバージョンアップを、たった1人で、短時間で完了しました」と生田氏は話す。
ネットワーク機器の脆弱性チェックに活用する例もある。クラウド上の脅威情報データベースと照らし合わせることで、組織内の機器の脆弱性を自動で判定。管理者に通知することでプロアクティブな対策実施につなぐ。「ほかにも、AIが無線LANのトラフィックを常時監視し、管理ダッシュボードに表示します。これにより、管理者の負荷削減と無線LANの安定稼働に役立てる例もあります」と生田氏は説明する。
富士通は今後、マネージド型の無線LANサービスとFENICS ビジネスSDN ネットワーク運用自動化 powered by Cisco DNA Centerを組み合わせたフルマネージドサービスも提供予定だ。また、同じく富士通の「位置情報活用支援ソフトウェア EXBOARD」と組み合わせることで、社内で会って話したい人がどこにいるのかを可視化し、社員間のコラボレーションの促進や、オフィスの“密”回避などに役立てるソリューションも検討中だという。
「Cisco DNA Centerで可視化したネットワークの情報は、ほかにも様々な用途に活用できる可能性を秘めています。今後も両社の力を合わせ、あらゆる産業に向けて新たな価値を提供していければと思います」と後藤氏は語る。
ネットワークの運用と、ユーザーの体感品質に変革をもたらすCisco DNA Center、そしてFENICS ビジネスSDN ネットワーク運用自動化 powered by Cisco DNA Center。新たな時代を切り開くネットワーク環境を考えていきたい企業は、一度検討してみてはどうだろうか。
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