「現場」を持つ企業のDXを支援するエッジ&クラウドビジネスサポート

-「データコレクションモデル」と「リモートアクセスモデル」解説-

現在、多くの業界で生産性の向上、働き方改革、コスト削減、人手不足への対策が求められています。これらの課題に対処するためには、現場データのデジタル化とリモートでのセキュアなコミュニケーションが可能な環境構築が欠かせません。富士通の提供する「Fujitsu ネットワークサービス エッジ&クラウドビジネスサポート」(以下、エッジ&クラウドビジネスサポート)では、このような現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を具体化し、エッジとクラウドの組み合わせを利用したIoT化の総合的なシステムエンジニアリング支援を行っています。本稿ではそのサービスを構成する「データコレクションモデル」と「リモートアクセスモデル」の特徴と事例について紹介します。

現場業務の改善・効率化を支援する「エッジ&クラウドビジネスサポート」

DXが進む中で、現場のセンサーやカメラなどのデバイスをネットワークに接続し活用するニーズは増加していますが、情報をクラウドに集約するための伝送路やクラウドストレージの確保、ノンインテリジェントなセンサーのネットワーク接続、セキュリティの確保など、多くの課題が存在します。これらの課題を解決する手段として、クラウドとデバイスの間にエッジサーバーを配置し、エッジコンピューティングによるクラウドとの連携が注目されています。

その場合、現場のデバイスとエッジサーバー間のデータ収集方法、エッジサーバーとクラウド間のデータ同期方法、クラウド内でのデータ処理方法など広範な検討が必要となります。例えばデータ収集の場合、現在ネットワークに繋がっていない機器のデータをどうやってエッジサーバーに送るのか、という問題があります。データを収集できたとして、どれくらいの頻度でクラウド側にその情報を渡すのか、そして、クラウド内ではどのような処理をするのか、既存の管理システムとのデータ連携はどうするのか、といった検討も必要です。これらを支援するのが、IoT関連のサービスを提供してきた富士通の技術力やノウハウといった強みを活かしたソリューションである「エッジ&クラウドビジネスサポート」です。

「人手不足や現地へのアクセスの難しさから、現場の見える化を通じてデータ収集やリモートでの現場状況把握による最適化が求められています。それを解決するのがエッジ&クラウドビジネスサポートです。現場の最適化にあたっては、システム構築や収集したデータのクラウド上での管理など、お客様自身が全体のシステム設計・構築を行うには高いハードルがあるため、富士通のメンバーがサポートします」と語るのは、エッジ&クラウドビジネスサポートチームの責任者である富士通株式会社の赤木 竜三です。

提供されるサービスには、富士通の実践知に基づいたベストプラクティスから導き出された標準構成と提供機能を定義した「データコレクションモデル」「リモートアクセスモデル」「エッジ動画分析モデル」があり、顧客はこれらを要望に応じて利用できます。エッジ動画分析モデルについては別記事で紹介していますので、そちらをご参照ください。本稿では他の2つのモデルに焦点を当てていきます。  

「エッジ&クラウドビジネスサポート」は現場運営の最適化や業務システムへの架け橋となる基盤です。

人手不足を解消しながら、運用・メンテナンスサービスの質を高める

データコレクションモデルは、現場のデバイスや顧客が持つ設備機器から収集したデータを上位のアプリケーションに連携するためのインフラの構築と運用を行います。BIツールやCRMなどの上位アプリケーションと連携するためにはエッジにおいてデータ収集及び一次加工をした上でクラウドにアップロードすることが必要です。エッジ&クラウドエッジビジネスサポートでは、現場に設置するエッジサーバーとクラウドがデータを送受信するための標準的なインターフェースを提供しており、それを通じてシームレスなデータ連携が可能となります。

データコレクションモデルは、現場で生じる膨大なデータをエッジで高速に処理し、必要なデータをクラウドに連携する分散型アーキテクチャです。

エッジ&クラウドビジネスサポートの商品企画や顧客対応を行う、富士通の安藤亜弓は「工場を例にすると、各種機器の稼働状況、生産量、消費電力量などのデータを収集します。工場といっても、企業の自社工場だけでなく、エンドユーザーの拠点に機器やシステムを提供する企業も対象顧客となります。自社工場だと数拠点かもしれませんが、設備を販売するビジネスの場合は、導入場所が数百、数千にも及ぶ可能性があります。データコレクションモデルによって、インターネット経由で広域にわたる多拠点からの様々なデータ収集に対応することが可能です」と説明します。

現場の機器などからデジタルデータを集めるには、センサーなどで計測できる仕組みが必要です。計測の設備が整っていないアナログ機器についても、必要なデータを取るための各種センサー選定と役務作業に対応したセンサーエンジニアリングなどのソリューションを提供することができます。例えば、設備の稼働状況ごとに電力消費量を収集するケースでの活用が可能です。

一方、リモートアクセスモデルは、離れた場所からインターネットを経由して現場の機器にアクセスし、機器を直接制御したり、機器側の画面を共有したりすることが可能です。Secomea(セコメア)社が提供するリモートアクセスソリューションを活用することで、個別閉域網の用意がない自端末から、現場の機器に対してセキュリティを保ちつつ、容易にアクセスできるようになっています。インターネット環境だけあれば3つの専用のアプリケーションを使用してセキュアな通信による遠隔支援を実現します。

リモートアクセスモデルは、保守拠点とエッジとのセキュアな通信をクラウド上で中継、遠隔地のデバイスに対し指示や制御を実施できます。

「お客様が工場や社内のネットワーク設定を変更することなく実現できる点が大きなメリットです。従来、VPNを利用したリモートアクセスサービスが一般的でしたが、IPアドレスの管理やポートの開放などの課題がありました。しかし、リモートアクセスモデルのシステムではそのような設定の必要がなく、アウトバウンドの通信のみを許可するだけで利用できます。なおかつ、インターネット経由でアクセスできますのでグローバルに利用できるのも特徴です」(安藤)

両モデルとも、対象となるのは現場向けの機器やシステムを提供し、メンテナンスなども含む大規模なオペレーションを運営している企業です。例えば、産業装置メーカー、物流関連設備メーカーなどが対象となります。それらの企業がエンドユーザーに対してサービスを提供する際に、メンテナンスやオペレーションの最適化を通じてサービス品質とコスト効率を向上できます。

全国各地の顧客に工作機械を提供するメーカーの導入事例

エッジ&クラウドビジネスサポートのサービス企画、導入、アフター対応を担当している富士通の木村香菜は、自身が担当するデータコレクションモデルとリモートアクセスモデルの導入事例を紹介しました。

導入したのは、エンドユーザーである事業者に対して工作機械を提供しているメーカーです。従来のリモート保守の仕組みに様々な課題があり、エッジ&クラウドビジネスサポートを導入しました。

エンドユーザーが全国各地に設置している工作機械の稼働状況や、部品・素材の不足による警告など、機器の動作情報をデータコレクションモデルで収集します。データ収集によって問題が現場から報告された際には、サポート要員が現地へ赴かずとも、リモートアクセスモデルを使用して迅速に不具合を解消する取り組みを行っています。

拠点ごとに複数の工作機械と接続するサーバーが1台設置され、これにエッジコンピューティング機能が組み込まれています。このサーバーは、データの収集とクラウドへの送信を行うとともに、遠隔からのアプリケーションインストールや設定変更が可能になるなど、メーカーが求める運用・メンテナンスの多様な機能を備えています。

ある工作機メーカーが構築した次世代型アフターサービス基盤。グローバル1,000拠点以上のエンドユーザー工場に対し、機器のデータ収集とリモート保守を円滑に行えるようになりました。

「以前の運用・メンテナンスの仕組みでは専用のハードウェアを利用していましたが、ソフトウェアに置き換えることで、設置のための納期の問題、故障修理のコストなど、エンドユーザーの問題を解決できました。また、ネットワークも閉域網を使わずインターネット経由になったことでレスポンスもよくなり、回線費用も削減できました」(木村)

データコレクションモデルは、他社のシステムで取得したデータも収集対象にすることが可能です。この工作機械メーカーでは、さらなる価値提供のために現場の機器の映像を取得するエッジ動画分析モデルの活用や他社システムとの連携といった拡張を予定しています。木村は「動画の分析によって、運用・保守以外にも、新たなビジネス機会を広げていきたいという要望に応えていくものです」と説明を加えました。

エッジクラウドビジネスサポートの利用モデルと最新技術活用の展望

データコレクションモデル、リモートアクセスモデルは、遠隔地にある機器を現場に赴かずに監視・管理できるもので、製造業に限らず、業務用設備、医療機器、複合機、自動販売機、コンビニのコーヒーメーカー、自治体向けの公共システムなど、非常に幅広い分野での利用が見込まれています。今後富士通としては、エッジ動画分析モデルもあわせて提案することで、さらなる価値を提供できると考えています。

安藤は「エッジ動画分析モデルなら、現場の人や物の動き、位置、挙動などを分析できます。ローカル5Gも導入すれば、精細なデータを大量にすばやく取得・解析できるでしょう。そこで得られたデータをデータコレクションモデルに統合することで、クラウド上でさらに分析・共有するなどの活用が可能です」と語りました。

今後の展望について赤木は「コスト削減はもちろんのこと、AIなどの最新技術を取り入れてサービスの質を向上させることに多くの期待が集まっています。特に、今後5年以内にはメンテナンス要員の多くが退職する可能性があり、限られた人員で作業を行う必要性が高まっています。この問題は様々な業界で共通しており、エッジ&クラウドビジネスサポートによって、この課題を解消していきたいと考えています」とコメントしました。

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