工場などの生産性向上に貢献する
「エッジ動画分析モデル」とは

-現場データをデジタル化し新たなビジネス変革へ-

IoTやセンシング、ネットワーク技術の進歩によって、これまでになかったアプローチによる課題解決ができるようになった。富士通では、最新技術と培ってきた知見を活かしたインテグレーションサービス「Fujitsu ネットワークサービス エッジ&クラウドビジネスサポート」(以下、エッジ&クラウドビジネスサポート)を展開している。本稿では映像分析によってリアルタイムかつ高精度の位置測位を提供する「エッジ動画分析モデル」に焦点をあて、その仕組みやユースケース例を紹介する。

人やモノの動きの分析や無人搬送車の制御にも使える「エッジ動画分析モデル」

エッジ&クラウドビジネスサポートでは、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)実現のため、エッジ&クラウドシステムのコンサルティングや設計・構築、運用を支援するインテグレーション型サービスを展開している。エッジ側は、事業の現場でデータを集めるためのデバイス、ネットワーク、アプリケーションの展開を、クラウド側ではデータ収集・分析、API実行、上位システムの連携などを支援する。顧客の需要に迅速に応えるため、過去の実績をもとにパターン化した提供モデルをいくつか用意しているが、その中でもニーズの多い機能セットのひとつが「エッジ動画分析モデル」である。

エッジ動画分析モデルは、現場のカメラで撮影した映像によって人やモノの動きを分析・把握し、業務の効率化に役立てたいという需要の増加から生まれた機能セットだ。映像を撮影するカメラやネットワーク環境、エッジサーバ、解析のためのAIモデル、アプリケーションなどの推奨モデルをあらかじめ富士通で用意し、現場の動画・画像の分析システムを素早く構築できる。エッジ側で得た分析結果をクラウド側に送信する通信やストレージの機能セット「データコレクションモデル」と連携し、各種分析サービスやダッシュボードなど上位アプリケーションともシームレスに連携可能だ。

エッジ動画分析モデルの特長について富士通担当者は「必要な機能群をコンテナ化しており、お客様の業務の現場に迅速に配備できます。現場のネットワーク状況や分析要件にあわせて最適なAIモデル、ネットワーク、ハードウエア、クラウドの構成を提案できるのもメリットです」と語る。

富士通の「エッジ動画分析モデル」

現在、エッジ動画分析モデルで想定しているユースケースは大きく2つある。1つはカメラで撮影できる範囲内の人やモノの検知だ。対象範囲内の人数や物体のカウント、動きの軌跡(座標データ)を出力できる。たとえば、工場などで作業者の動線を分析し作業を効率化するなどの利用が想定されている。もう1つは、ARマーカーを利用した高精度の位置測位だ。AGV(無人搬送車)にARマーカーを付け、カメラで位置を認識することで、精密な遠隔制御を実現する。

導入にあたっては、まず顧客の課題をヒアリングし、エッジ動画分析モデルで解決できるかどうかを判断する。要件が整理できれば、設計・構築段階に移り、AIモデルの選定やエッジサーバ、カメラの準備、サンプル動画による検出試験を行う。その後は現地にてサーバやカメラを設置し、データ保存などの動作や検出精度を確認する。設置作業後もAIモデルの追加学習や各種チューニングを行っていく。

映像を解析し高精度な判定ができる「高精度位置測位ソリューション」

エッジ動画分析モデルの標準のAIモデルは、「高精度位置測位ソリューション」だ。このAIモデルの特長について担当者は「カメラ内の分析対象の平面位置座標をミリメートルレベルで取得できる高精度なモデルです。人やモノの動線追跡だけではなく、デジタルツインなど仮想の3D空間で利用できる位置座標も取得できます」と述べた。なお、AIモデルは要望に応じて富士通の行動分析技術「Actlyzer(アクトライザー)」や他社製品についても搭載可能としている。

これまで、屋内での位置測位方法にはBluetoothを使ったビーコンや、位置情報タグとセンサーを組み合わせる方法などがあったが、ミリメートル単位の高精度な測位は困難であった。高精度位置測位ソリューションは、天井に設置したカメラの映像によって人・モノ・ARマーカーをとらえるため、データを取得しやすく、人がビーコンを身に着ける手間もない。また、位置測位の際に近隣金属の影響を受けることもない。さらにローカル5Gなど高速なネットワークを組み合わせて活用すれば、リアルタイム処理も可能になる。なお条件が合致すれば、顧客が所有しているカメラでも対応可能となっている。測位対象のトラッキング(追尾)ができるため、広範囲に複数のカメラが設置された現場で、カメラAからカメラBに対象が移動した場合でも同一の対象としてトラッキング処理ができる。

天井に設置したカメラで高精度な位置測位を実現

工場作業員の動線可視化により生産効率アップを目指す

エッジ動画分析モデルのユースケース例の1つに、工場内の作業員の動線可視化がある。これは、作業者の生産効率を高め、人が主役のスマート工場の構築を目指すものだ。従来はビーコンを利用した動線可視化を行っていたが、ビーコンでは動線と滞留時間は分かるものの、なぜ滞留が発生したかを分析できず、ビーコン貸与の手間も作業員の負担になっていたため、エッジ動画分析モデルに切り替えた。

人物特定のためのカメラを天井に設置し、映像を録画。作業員に負担をかけずに作業員ごとの動線や滞留時間をダッシュボードに表示するアプリケーションも作り、各工程の実績収集・分析ができる環境を実現した。次のステップではダッシュボード上から作業員の映像を再生できる仕組みを用意することで、滞留原因の調査に役立てる予定となっている。

作業者ごとの動線・滞在時間を分析しダッシュボードに表示して業務改善を図る

ビーコン以上の精度を求める背景には、業務効率化の狙いがある。担当者は「この作業現場ではチームを組んで物品を組み上げています。人の動きを高い精度でとらえることによって、チームの生産効率を高めることができます。効率が高まった要因を分析して、他のチームにも適用するなど改善活動に役立てたいというのがお客様の希望です。お客様からも『滞留状況が可視化できるだけではなく、疑問に思った滞留や特定の動作を即座に映像で確認できるのはいいですね』と評価いただいています」と説明した。

生産手順と連動する動画記録がトレーサビリティに貢献

また作業員の動線可視化だけではなく、トレーサビリティの高度化にエッジ動画分析モデルを活用することも可能だ。たとえば精密機器であれば、法令に従った生産過程の資料保存や提出が求められるものも多い。そのため、製品生産時の手順に紐づけて動画も証跡として残していれば、万一不具合が生じた際も原因究明が容易になる。

さらに、作業員育成に活用することもできる。熟練作業員の作業を分析し、新人の作業と比較することで、現場での教育に役立てることが可能だ。これには、手元をとらえるPC接続のカメラや人の骨格や動作を検知できるAIモデルとしてActlyzerを利用するなど、顧客が実現したいことにあわせて最適なソリューションを組み合わせてシステムを構築する。富士通担当者は「人やモノの検知でなく、工具を持つ手の動きや作業手順を解析する仕組みを使います。これにより、これまで分析に3週間かかっていたものを1週間ほどに短縮できる可能性もあります」と説明した。

DX支援のためのトータルな最適化を提案する富士通

富士通の強みは、顧客の課題解決のために導入するシステムをトータルに最適化できることだ。小規模な実証から始めたとしても、将来的に組織全体に展開する場合など、大規模に拡張できる技術やノウハウを持っている。今回紹介したエッジ動画分析モデルや高精度位置測位ソリューションは、ユースケース例にもあった工場など製造業のほかにも、倉庫などを持つ流通業の業務効率化、店舗運営やオフィスビル管理での人流分析・省人化など、さまざまな業界の課題解決に貢献できる。

店舗での人流分析にも活用できるエッジ動画分析モデル

エッジ&クラウドビジネスサポートの今後の展望について担当者は「富士通では、解析の仕組みだけではなく、ローカル5Gのネットワークやデバイス、クラウドなどのインフラ、上位のアプリケーション群も提供しています。AIモデルも日々進化していますので、幅広い業種のお客様に活用いただきたいですね。将来的にはパートナーと連携しながら、多様なメーカーの機器やAIモデルを組み合わせてソリューションを提供できるエコシステムを構築していきたいと思います」とコメントした。

エッジ動画分析モデルや高精度位置測位ソリューションにご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせいただきたい。

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