協業事例インタビュー

Workato株式会社

富士通アクセラレータプログラムでの共創の取り組みを、座談会形式でご紹介しています。今回登場するのは、第9期に採択され、業務自動化のためのiPaaS「Workato」を開発・運営するWorkato株式会社です。

現場がシステムの連携を司る時代に富士通が実現したシステム間連携による業務効率化

富士通アクセラレーター第9期に採択されたWorkato株式会社(以下「Workato」)。クラウド/オンプレミスを問わず、データベース、アプリケーション、各種サービス間をAPIで連携させてインテグレートするiPaaS「Workato」を使うことで、企業はビジネスの効率化を実現します。富士通グループのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する新会社として設立されたRidgelinez株式会社(以下「リッジラインズ」)はWorkatoとAIを組み合わせることで、効率的な経費申請・承認システムを構築しました。

富士通アクセラレーターに参加した経緯や、Workatoを使って得られるもの、そしてリッジラインズ社の事例について、Workato代表の鈴木氏、リッジラインズの林・大久保、富士通の新出が座談しました。

インタビューダイジェスト動画(前編)

インタビューダイジェスト動画(後編)

複数のSaaSを連携できるiPaaS「Workato」

皆さんの所属と業務内容を教えて下さい。

鈴木(Workato)

Workatoは、エンタープライズオートメーションプラットフォームです。APIをベースにSaaSやオンプレミス上のソフトウェア等を連携させることで、業務プロセスやワークフローを自動化します。この仕組みはiPaaS (Integration Platform as a Service ) と呼ばれ、特にWorkatoは、エンジニアでなくても容易に自動化の設定ができて、大手企業でも安心して使えるガバナンスやセキュリティが特徴です。

例えば、入社時の一連の手続きを自動化できます。例えば、社員が入社する際には、契約書類にサインしてもらった後、入社日に合わせメールアドレスを発行したり、各種アプリケーションのアカウントを作成するといった業務を自動的に行います。更に、Workatoで連携されているアプリケーションがあれば、採用時前の採用面談時のデータを連携させるので、データの重複入力はなく、データの変更に合わせ後続の業務ワークフローが自動的に実行されるのです。

私は2018年にWorkatoに参画し、iPaaSという言葉が認知されていない日本市場において、顧客とパートナーの開拓を行い、2021年の日本法人設立後はオートメーションエバンジェリスト兼日本創業者として日本のお客様のビジネス変革をサポートしています。

(写真左から2番目) Workato株式会社 日本創業者/オートメーションエバンジェリスト 鈴木 浩之 氏

林(リッジラインズ)

リッジラインズは2020年に設立された富士通株式会社の子会社で、DXに関するコンサルティングサービスを担っています。ストラテジー、デザイン、テクノロジーそれぞれのプロフェッショナルが連携し、上流工程の業種ごとの戦略コンサルティングから、ビジネスサイエンス、カスタマーエクスペリエンス等の業種横断のサービス、およびそれらをテクノロジーで実現するプロフェッショナルとして顧客企業にコンサルティングサービスを提供しています。

ただ、私自身は顧客企業ではなく、リッジラインズ社内のDXを進める役割を担当。社内で先進的な取り組みを実施し知見を貯め、社内外に実践知として提供しています。

大久保(リッジラインズ)

私は林と所属が異なり、主にテクノロジーをベースとしたコンサルティングサービスを提供する部署で、顧客企業向けの全体アーキテクチャ構想支援などのDXコンサルティングを担当しています。今回、後述するConcurとWorkatoを組み合わせた業務を構築するということで、社内の案件を担当しました。

新出(富士通)

私が所属するフィールド・イノベーション本部も、コンサルティングを担当する部門です。ただリッジラインズと異なるのは、我々はボトムアップ型、つまり現場から改革を試みます。例えば小売業の物流センターの業務を可視化して問題点を把握し、その問題点をICTを活用し、同時に業務プロセスを見直しすることで、改革・改善を図ります。

Workatoの特徴は「使いやすさ」

Workatoが富士通アクセラレーターに申し込んだきっかけを教えて下さい。

鈴木(Workato)

今こうやって3社でインタビューを受けていますが、実は最初はそれぞれが別々のプロジェクトだったんです。弊社インベスターの紹介でアクセラレーターに申し込み、弊社のご担当を引き受けて頂けるフィールド・イノベーション本部とコミュニケーションをとっていました。また、並行して弊社SDRからのリッジラインズさんにコンタクトさせて頂き、Workatoに興味を持ってもらったことがきっかけで、社内活用までに至ったんです。

大久保(リッジラインズ)

最初、私のLinkedInに、Workatoシンガポール支社の方からメッセージが来たんですよね(笑)。富士通とWorkatoで連携できないかと。Workatoのことはそのときに知ったのですが、ちょっと調べただけでいいサービスだなと直感しました。

鈴木(Workato)

LinkedInで連絡をとるのは、海外では王道のアプローチなんで(笑)。

林(リッジラインズ)

WorkatoはSlackと連携させることが多いですよね。私もSlack社ともよくコミュニケーションをとっているので「Workatoがいいよ!」という話を噂で聞いていました。

鈴木(Workato)

さらに富士通本社にも別口で営業していたのですが、あるときWorkatoの投資家(Geodesic社)から、富士通のアクセラレーターがあるよと教えてもらったんです。別ルートでも話はしていたのですが、富士通はやはり巨大な企業なので、話が簡単に進展していなかったですし、アクセラレータープログラムなら役員に直接プレゼンする機会もあるし、話が早く進みそうな雰囲気でした。それで申し込むことにしたんです。思惑通り、パートナーシップ実現へのショートカットになったと実感しています。

林(リッジラインズ)

アクセラレータープログラムに申し込んでいただいたということもあって、Workatoを使ってみました。実はそれまで他社のiPaaSを利用していたのですが、それに比べてWorkatoは使いやすさが段違いで良かった。マニュアルを見ながら作業していたのですが、ほんの1時間程で簡単にインテグレーションできてしまったんです。

鈴木(Workato)

Workatoの使いやすさと生産性には定評があるんです。なので林さんみたいに気軽に触っていただけると、サービスの良さがわかっていただけるので嬉しいですね。

(写真左) 富士通株式会社 フィールド・イノベーション本部 フィールド改革事業部 シニアFIer 新出 光一 氏

新出(富士通)

私はちょうどWorkatoの研修を受け終えたところですが、早速、卸業での自動発注に使えそうだなと思って、今Workatoを触っているところなのですが、確かに使いやすいですよね。

林(リッジラインズ)

Workatoを使って構築してみたいアイディアは山ほどあるんです。とりあえず他のシステムとSlackを中心に連携させていましたが、今後はデータ基盤への連携にも活用し、貯めたデータをビジネスインテリジェンスツールで可視化する、といったこともやってみたいですね。

大久保(リッジラインズ)

システムベンダーが色々な機能を開発するけど、結局使われるのはその一部だけで、でもユーザーは高いお金を払わなくてはならないというのは、システム業界でよく起こる現象で、私はそれに前から問題意識を抱いていました。でもWorkatoを使って「その機能はうちにはないので、外部のSaaSと連携して下さい」となれば、余計な開発もコストもかからないので、みんな幸せだと思うんですよね。Workatoにはそんな可能性があると思っています。

鈴木(Workato)

ベスト・オブ・ブリードの考え方ですね。米国では一般化しているので、日本企業でも参考にして頂きたい、アプローチです。

Workatoを使って富士通が実現した経費承認プロセスの効率化

Workatoではグローバルで「Unstoppableアワード」を毎年開催しています。その中でリッジラインズ社が「イノベーション部門」で受賞新しいウィンドウで表示を果たしたと伺いました。

鈴木(Workato)

Unstoppableアワードは、Workatoを活用して先進的な自動化の取り組みを行った企業をグローバル・レベルで表彰するものです。これにリッジラインズ社が選出されたのですが、これには正直驚きました。正直に言って、日本企業のユースケースは、海外のものを真似るものが多く、先進的なテクノロジー活用は欧米企業に比べ見劣りします。そのような中で、このプロジェクトが選ばれるとは、さすがリッジラインズだなと感心しました。

大久保(リッジラインズ)

受賞したプロジェクトを簡単に説明すると、SAPの経費精算クラウドサービス「Concur」にWorkatoやAIを組み合わせ効果的・効率的な経費精算・承認システムを構築しました。

以前の経費精算は、申請→現場での承認→人事総務の承認というフローだったのですが、量が多くて非常に大変でした。そこで申請内容をAIが解析して、リスクの高い取引(通常より申請金額が大きい、高額な支出等)について自動で申請者に間違っていないかを確認してから、人事総務で念入りに確認。リスクの低い取引については現場承認は自動にして、人事総務の承認のみのフローに変更しました。これにより経費申請の間違いを防ぎつつ、経費申請・承認に係る業務時間の大幅な削減に成功しましたね。

鈴木(Workato)

私も日本で数々の事例を見ていますが、日本でここまでやっている会社は非常に少ない印象です。というのも、折角Workatoを使って頂いても、現状のプロセスを単純に自動化しているだけのケースが非常に多いです。それがリッジラインズは承認フローにAIを組み合わせることで、判断や意思決定をも自動化し、経営資源の節約に繋げたビジネス・インパクトの大きなユースケースに挑戦されたんです。ITを理解しているからこそできたんだと思います。他社にもこの動きは是非参考にしていただきたいですね。

大久保(リッジラインズ)

承認フローを変えたので、当然ITだけじゃなくて、内部統制にも影響しました。そこは社内にいるガバナンスの専門家と議論して、プロセスを変更しても問題ないことまで確認しています。また、今回AIを活用したリアルタイムチェックやBIツールでの包括的チェックを実施した結果、最終的に全件現場承認レスまで踏み込みましたが、合わせて申請者が正しく申請しなくてはならないマインドを持つきっかけにもなりましたね。これぞまさしくDXって感じでした。

林(リッジラインズ)

プロセスやルールを変えるのは大変だったのですが、Workatoを使えばITシステムの構築自体は大したことないとわかっていました。だからどんどん色んなことを提案できました。

大久保(リッジラインズ)

このプロジェクト自体はトータルで6か月くらいかかりましたが、他の業務もやりながらの対応でしたから、実質的にはもっと短い時間しか使っていません。その中でWorkatoを使っていたのは……

Ridgelinez株式会社 Senior Manager 大久保 知洋 氏

林(リッジラインズ)

Workatoのレシピ実装には1か月くらいしか使っていないですね。

大久保(リッジラインズ)

それだけWorkatoのユーザビリティやUIが優れているということですね。

現場がシステムの使い方を提案する時代に

鈴木(Workato)

富士通アクセラレーター第9期でWorkatoは、ベストパートナー賞を受賞させて頂きました。また、2022年から富士通がWorkatoの代理店となり販売・サポートしていただくことになっています。

新出(富士通)

Workatoが使いやすいことは確かなのですが、そもそも我々がSlackやSalesforceといったSaaSを知り尽くしていないと、顧客企業に詳しい提案ができません。「Slackと連携させる」といっても、そもそもSlackにどんな機能が備わっているかわかっていないと、連携させようという発想になりませんからね。なので担当者は、今改めてSlackやSalesforceといったSaaSを勉強し直しているところです。

鈴木(Workato)

これは本質的で重要な指摘です。一昔前は、情シスが会社のシステムの全てを司っていました。しかしこれだけSaaSが普及してくると、情シスが全てのSaaSの全ての機能や仕様、更には業務フローまで理解するのは不可能です。一方、詳しく知っているのは、システムを毎日使っている現場の方々です。エンドユーザーコンピューティングという言葉は今では死後かもしれませんが、非IT部門の方々が現場主導でスピーディに、ビジネス環境に合わせITを使いことなす時代となるでしょう。勿論、IT部門はセキュリティとガバナンスを効かせる役割は担うので、野良の自動化が拡散することはありません。

林(リッジラインズ)

まさしく。ビジネスパーソンがPowerPointやExcelを当たり前に使えるのと同様、Workatoのようなノーコード・ローコードプラットフォームも使いこなさなくてはならない時代になったと感じます。

鈴木(Workato)

今は皆さんが各SaaS連携のためにWorkatoを活用してくれていますが、今後は各SaaSやアプリケーションにWorkatoがビルトインされ、もっとWorkatoを手軽に利用できる環境になればいいいなと思っています。そうすれば利便性はさらに上がります。

また2022年中には、日本市場の拡大を図るため、国内にデータセンターを設置するだけでなく、製品の日本語化やドキュメントの日本語化も進んでいます。富士通とも協力しながら、国内にWorkatoの利用企業を増やし、ひいては日本の生産性向上と自動化の民主化を拡大していきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

(写真右) Ridgelinez株式会社 Senior Manager 林 航 氏

新出・大久保・林

こちらこそ、よろしくお願いします。

(インタビュー・執筆pilot boat 納富 隼平)

Workato株式会社

Workatoは、エンタープライズオートメーションプラットフォームのリーダーです。クラウド/オンプレミスを問わず、データベース、アプリケーション、各種サービスをAPIをベースに連携(インテグレーション)させ、社内外の組織を横断した業務プロセスやワークフローの自動化を、容易かつ素早く、アジャイルで行うことで、従来比10倍の生産性を実現しています。また、100%クラウドネイティブなプラットフォームで、ノーコード化やマシンラーニングを適用した特許取得済みの自動化インプリ手法により、非エンジニアでも容易に自動化が行え、ガバナンスとセキュリティの機能も標準装備されているため、大規模エンタープライズに適した自動化を、従来比1/3のTCOで実現可能です。Gartner社のEnterprise iPaaS市場におけるMagic Quadrantでは、初登場以来4年連続リーダーに選出されています。

東京都港区西新橋1-1-1日比谷FortTower 10F
URL:https://workato.jp/ 新しいウィンドウで表示

Workato株式会社 日本創業者/オートメーションエバンジェリスト 鈴木 浩之 氏

日本DECにて金融機関向けのトレーディングシステム開発に従事。その後、現TIBICO Softwareで、現WorkatoCEOのVijayと出会う。現SONY Net-Commerce Company President、アーケイディア・コンサルティング株式会社設立を経て、’18年にWorkatoカントリーマネージャに就任し日本事業を創業。’21年にオートメーションエバンジェリストとして活動開始。

Ridgelinez株式会社

Ridgelinezは、変革への志を持つ「チェンジリーダー」と共に、未来を変え、変革を創る変革創出企業です。「人」を起点にすべての変革を発想し、ストラテジー、デザイン、テクノロジーを組み合わせ、単なる最先端な未来ではない、人や社会の持続的な幸福が実現する未来を描き、新たな価値を創出し変革を実現します。戦略策定からビジネスモデル・ソリューション設計、業務プロセス・アーキテクチャー設計、オペレーションシステム開発、戦略実行、エコシステム構築・運用など、変革プロセスの最初から最後までを支援するコンサルティングサービスを展開しています。

東京都千代田区丸の内二丁目6番1号 丸の内パークビルディング
URL: https://www.Ridgelinez.com/ 新しいウィンドウで表示
email:info@ridgelinez.com

Ridgelinez株式会社 Senior Manager 林 航 氏

富士通にて新卒入社後、エンジニアとして金融機関を中心にシステム企画/開発、EA戦略策定などに従事。2020年よりRidgelinezに参画し、社内のDX戦略/企画/ デリバリーを統括する一方で、その実践知をお客様や富士通グループに還元するミッションも担う。

Ridgelinez株式会社 Senior Manager 大久保 知洋 氏

ソフトウェア開発会社、SIer、コンサルファーム、外資ベンダー等幅広く経験後、2020年より現職。最新テクノロジーをベースとした業務改革提案(既存組織や業務の壁を乗り越えた全体最適の実現)や、プロセス・オーケストレーション構想・設計、プロジェクト管理を主に担当。

富士通株式会社 フィールド・イノベーション本部 フィールド改革事業部

業務改革のプロフェッショナルである富士通フィールド・イノベータ(FIer)は、お客様の業務を可視化し、課題を解決するための様々な提案を行っています。フィールド改革サービスに加え、ICTをフルに活用することにより様々な業務シーンにおいて、効率的で効果的な改革を実現します。

〒212-0014 川崎市幸区大宮町1-5 川崎JRタワー
URL: https://www.fujitsu.com/jp/services/business/fieldinnovation/services/digital-process-automation/ 新しいウィンドウで表示

富士通株式会社 フィールド・イノベーション本部 フィールド改革事業部 シニアFIer 新出 光一 氏

1987年入社  金融・流通端末、パソコン製品の生産計画・生産管理の実務と改革・改善業務を担当、2008年から物流システム再構築プロジェクトに参画、2014年にFI本部へ異動後、FIerの資格を取得し、お客様の業務改革・改善を担当

本件に関するお問い合わせ

富士通アクセラレーター事務局

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