介護現場の働き方改革。職員の生産性向上を実現するべき3つのポイント

work style reform column

迫る高齢化社会のピークに対応できる職場づくりとは

長時間労働の是正、均等待遇などを目的とした働き方改革の諸施策は、介護業界にも例外なく適用されます。数ある業界のなかでも、労働環境の改善が急務であると指摘されることの多い介護現場で、働き方改革に対応するためには生産性向上の実現が不可欠です。今回は介護現場における働き方改革の必要性と具体的な内容、改善事例を紹介します。

増える介護需要。働き方改革が必要な背景

厚生労働省老健局が制作した「より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き)」によると、2040年にかけて生産年齢人口の減少と高齢化がピークを迎え、2025年には介護ニーズの高まりによって約245万人の介護人材が必要になるとされています。

このような背景から、2019年3月に作成された「介護現場革新会議 基本方針」では、「人手不足の中でも介護サービスの質を維持・向上できるマネジメントモデルの構築」と「介護業界のイメージ改善と人材確保」、「介護用ロボット・ICTの活用」に取り組まなければならないと提言されています。

働き方改革では、月40時間、年360時間の長時間労働の上限規制に加え、年間5日以上の有給休暇を取得させる義務が事業者に課せられています。3Kと称されることもある介護のイメージを改善し、人材を確保するためには、働き方改革に関連する義務を果たすことが重要です。そのために、既存業務の生産性向上を図り、短い時間で作業を終わらせるための体制・組織づくりが必要といえます。

介護現場の生産性を向上させるポイント

介護サービス施設における業務改善には3つの意義があり、それに則り日常業務の「ムリ」、「ムダ」、「ムラ」を発見して取り除く7つの取り組みが必要とされています。改善活動の手順も含めて以下で確認しましょう。

■業務改善の意義

・人材育成
・チームケアの質の向上
・情報共有の効率化

■業務改善の取り組み

1.職場環境の整備
2.業務の明確化と役割分担
3.手順書の作成
4.記録・報告様式の工夫
5.情報共有の工夫
6.OJTの仕組みづくり
7.理念・行動指針の徹底

■改善活動の手順とポイント

手順 取り組み例
改善活動の準備 プロジェクトチームを立ち上げ、経営者が直接キックオフ宣言する
現場の課題の見える化 「課題把握シート」を管理者・従業員に記入させ、分析して課題を構造化する
実行計画の立案 考えられる取り組みを出し合い、課題解決までの道筋を描いて成果を測定する指標を定める
改善活動の実施 失敗を恐れず、試行錯誤を繰り返しながら取り組み続けて、小さな改善事例を積み重ねる
振り返り 「進捗管理シート」より3で定めた成果指標や観察のポイントを確認し、上手くいった点・いかなった点を整理する
改善点を練り直し 5について分析し、実行計画に修正を加えたうえで再び取り組む

取り組みの具体的な内容は施設ごとに異なりますが、改善すべき介護業務は「ケアに直結する業務」と「間接的な業務」の2種類に分け、それぞれの「質の向上」と「量的な効率化」を成果として判断することが推奨されています。

介護業務の質が向上することで、ケアに割ける時間の増加、内容の充実、ケアそのものの効率性・安全性が向上するといった効果が得られるでしょう。量的な効率化が実現できれば、業務負担が少ない環境づくりにつながります。

介護現場の生産性向上を実現した事例

最後に、「介護設備・道具の改善」と「業務の見える化」、「ICTの活用」によって生産性の向上に成功した事例を紹介します。

道具を工夫して安全確保

千葉県佐倉市にある入居者83人、訪問介護者数42人のサービス付き高齢者住宅では、利用者が服薬する薬の取り違いが課題でした。そこで、薬を保管するケースを利用者ごとに分け、ケースに顔写真を提示することで処方薬確認の円滑化を実現しました。これにより、誤薬の減少だけでなく、ダブルチェックにかかっていた時間や人的コストの40%削減に成功しています。

役割・手順を「見える化」

東京都世田谷区の通所介護事業所(定員数55人)は、業務を可視化するために「全職員に10分ごとの業務調査」を実施した結果、介護職員が送迎や清掃などの専門業務以外に大きな時間を割いていることが明らかになります。 現状を改善するため、介護職は専門業務に集中し、送迎や配膳などの間接的な業務を運転手やケアアシスタント職に重点配分するように職員の業務分担を見直しました。その結果、1日の職員の労働時間を8.9時間から6.7時間に削減することができ、全事業所全体の労働生産性が33%改善しました。

ICTの活用で残業時間を削減

通所介護事業所E法人では、ICTによる情報処理事務作業の生産性向上が課題とされていました。そこで、各種サービスの提供記録と介護報酬請求が連動するタブレットを導入。同時に職員への操作方法に関する研修を手厚く実施しました。その結果、「報酬請求業務の記録時間」を中心に業務時間が大幅に削減され、1事業所・1か月あたりの残業時間も10時間の削減に成功しています。

改善事例を参照にして、生産性の向上の実現を

労働環境が厳しいとされる介護の現場でも、いち早く働き方改革に対応して取り組んでいる施設はたくさんあります。すでに長時間労働の是正や有給休暇に関わる施策は、中小規模の介護事業者にも適用されています。富士通エフサスが提供するFUJITSU Software TIME CREATORの導入により、ICTを活用した労働時間管理が可能です。各介護施設の管理責任者や、本社で業務を行う事務職の長時間労働対策に効果があります。

迫る高齢化社会のピークに対応できる職場環境を実現するため、介護事業者は生産性の向上に積極的に取り組みましょう。

お問い合わせ

ページの先頭へ